第195話 我が家
翌日の昼、エクランド領に帰ってきた。領主館には顔だけ出して、夜、晩飯の頃に改めて来る旨を執事に伝えた。で、明日、領主館に集まることも伝えた。他のメンバーにも、昨日ヒースにも同じことを伝えてある。
「昼から領主館で会議を行う」
と…。メンツはワシとヒルデさん、今一緒にいる6名とヒース。それにワシのヨメたち8名とハンスさんの、総勢18名。会議の内容は、
・エストラル討伐隊の編成
・国王陛下救出部隊の編成
・領地守護隊の編成
についてだ。
ワシとヒルデさんは、そのままマリアの家に向かった。久しぶりの我が家といった感がある。
「「ただいま」」
「あっ、おかえり〜!マリア、マモルとヒルデが帰ってきたよ〜!」
とルナが母屋に声をかけた。
「おかえりなさい、2人とも…。割と長かったわね」
「いろいろ問題が発生してね…。みんなの力も借りなきゃならん…。玲ちゃんが帰って来たら、詳しい話をするよ」
「お風呂、沸いてるわよ。入れば?」
「ん〜、ワシはまた領主館に戻らんとならんから…。風呂は向こうで入るよ」
「じゃあ、お昼にしましょう。ルナとタマモが用意してくれたのよ」
久しぶりの『我が家の味』だな…。などと感慨深げになっていた時、
「ただいま〜!」
玲ちゃんが帰って来た。
「「レイ!」」
とマリアとルナが抱き付いていた。ワシにはハグはなかったな…。なんだ、この差は…。
「マルタはお店?」
とヒルデさんがマリアに聞いた。
「そうだけど、何か急ぎの用でもあるの?」
「ううん、夜、彼女が帰ってからでも大丈夫よ。イリス、ちょっといいかしら?」
とイリスと2人で外に出て行った。多分、『リミッター解除』の件だろう。2人に任せればいい。で、話を終えて母屋に戻ったのはイリスだけだった。
「あれっ?イリス、ヒルデさんは?」
「彼女なら一旦、天界に戻りました。マリアやレイたちに渡す物を取って来ると…」
「何だ?渡すものって…」
「ワルキューレの武器と甲冑だそうです。向こうには用意するよう伝えてあるそうですから、すぐ戻るといってましたよ」
甲冑ねぇ…。想像したのはマリアたちによる、『集団コスプレ』だった…。似合いそうで、かえって怖い…。
「もう、早く食べようよ!コーヒーも冷めちゃう〜!」
ルナの一声でみんなが席に着いて、食事となった。久しぶりに『家族』に囲まれて…。嬉しいのと照れくさいのと、入り交じった思いがあった。
◇◇◇◇◇
昼食が終わる頃、ヒルデさんが戻った。
「ここに持ってきて。足下、気を付けなさい」
と言いつつ、荷物を運び入れた。かなりの量である。それもそのはずで、マリアや玲ちゃんのような戦闘要員と、マルタやタマモなどの魔法使いとで、装備が異なり、また個々人用にも分けてあった。
「それぞれ自分の名前が付いたモノを取りなさい。サイズの関係もあるから、個々人で分けてあります。またワルキューレとはいえ、能力・
特性毎に装備も違いますからね」
マリアと玲ちゃんが部屋に入って、早速着替えを始めた。
「「どう⁉︎」」
なんとまぁ、やっぱりコスプレ…。身体にフィットしているせいか、見た目、かなり『エロい』…。また、よく見ると、マリアと玲ちゃんの装備が、若干異なる…。
「戦闘用とは言っても、使う武器によって多少違うわよ。レイの装備は体術も考えての装備になってるし、マリアは近接戦に特化してある」
よくまぁそこまで考えたな…。
「以前、私がマリアやマルタに贈ったモノとは格段に性能が違いますよ」
そりゃね、戦乙女を束ねる戦の女神と、「疾きこと風の如く」と言われる風・天候の女神とではね…。言わずとも読んでるんだろうけど…。
「えぇえぇ、違いますよ〜だ…」
「イリスがくれたものは『防御』に特化したヤツでしょ?違うのは当然だと思うけど?」
と、一応フォローはしておく…。
「あとは…。ヒルデさんから聞いたと思うけど…。マリアたちの『リミッター解除』、頼むね…」
「…さらっと言うけど…」
「…大変なのは分かってる…。ワシは既に解除されてる…。あの時は本気で死ぬかと思った…」
思い出すだけで脂汗が流れる…。アレをヨメさんにもと思うと、ちょっと居た堪れない気持ちはある…。




