第12話 異変のはじまり
家路についてしばらくすると、陽が傾き始め、綺麗な夕焼けが広がっていた。家に到着、というときに
「キャー‼︎」
と歩いてきた道から子どもの悲鳴が聞こえた。荷物を置いて道に戻ると、熊のような生き物が見えた。体長は3メートルほどだろうか。マリアが家の中に入り、何か持ってきた。
「アンタは家に入ってて!」
持ってきたものは、剣のようだった。この世界の両刃の剣。マリアが走り出そうとしたものを
「貸してくれ。ワシが行く」
と半ば奪うように取った。なかなか重量があるが、振れない代物ではない。熊のような生き物の前まで走り、子どもを背後にかばいながら対峙する。
「マモル、バカ!何やってんの!早く構えなさい!」
剣を体の脇に引き、"脇構え"。相手が腕振り下ろすところで、一歩踏み込んで、上から剣を叩き込んだ。剣は相手の振り下ろした腕を、肩から切り落とした。そのまま間髪入れずに、剣を相手の心臓があるであろう位置に突き込み、捻る。突いた際の手応えはしっかりある。剣を抜いて下がると、絶命した熊のような生き物が倒れてきた。
何とかなったようだ。マリアが走ってくる音が聞こえるが、町の方角から馬のヒヅメの音が聞こえてきた。どうやら領主配下の騎士団のようだ。
マリアと並び、馬上の人物を見上げる。
「△△領の騎士団である。魔物が出たとの連絡を受けて来たが、鍛冶屋のマリア、其方が魔物を退治したのか?」
「いえ、隣にいるマモル、私の用心棒かこれを倒しました」
「そうか、見かけん顔だが、其方が倒したのか?」
「はい」
「魔物退治の褒美の沙汰がある。待っているように」
と言い残し、熊の魔物の死骸を運んで行った。金がもらえんのか、魔物を退治すると…?でも、これって普通に熊じゃね?




