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第122話 停戦合議・開催

 各部族の首長が集まり始めたようだ。館内の護衛がバタバタしている。合議の部屋には首長たちと両騎士団の団長、副長とワシだけ。首長お付きの者たちは別室で待機となる。


 合議の進行役は、『王国のナイト』として、ワシが担当する。『中立である』という点で、引き受けることにした。まぁ、騎士団のメンバーよりは、人生経験もある、ということなんだが…。


 最後の1人が到着して、席に着いた。ほぼ、時間通りに集まったといえる。


「これより、エイサム領内の各部族による紛争について、停戦に向けた合議、話し合いを開催します。進行役を担当します『王国のナイト』である、私マモルと申します。議題については、招集時の案内状に記載した内容となります。既に目は通されたと思いますが、大きく3点。


・王国仲介による停戦調停を受け入れるか否か

・否である場合、その理由は何か

・受け入れる場合、求めるモノがあるのか、等


になります。何か異議、異存はありますか?」


「何故今さら王国がしゃしゃり出るんだ⁉︎ 今まで何もせんかったクセに…」


「これは異なことを…。エイサム領始め、各領地については、全て王国の領地であり、そのために爵位を戴く領主を配置して管理・運営がされている。ご存知ないわけではありますまい」


「何を言うか!エイサム領はその昔、各部族のものであったわ!」


「「そうだ!」」


「それは、いつのお話ですかね?」


「王国なんぞ何もしてくれん。帰れ!」


やいのやいの五月蝿えなぁ、年寄りどもが…。イラッとして、ワシは目の前のテーブルを蹴り倒した。


「喧しいぞ‼︎ クソじじいどもがぁ‼︎ いつの話しをしてるんだ?そりゃ?答えろ!いつのことなんだ⁉あぁん⁉︎」


「……、数十年、いや100年近く前だ……」


「……一応聞いておこうか。その頃のこと、知ってる者、生きてた者はいるか?」


誰も、何も答える者はいない。


「おい!王国がしゃしゃり出てどうのといったヤツ!テメェだよ‼︎ 知らねえのか!」


答えない…。それどころか、震えている。怒りなのか、ビビったのかはわからん。この場は掌握できたと考えていいか?


 騎士団がテーブルを直し、ワシも席につき直した。


「では、議事を進める。王国による停戦調停を受けるか否か。受け入れる部族の首長は挙手を」


全員挙がった。よし、完全掌握。エイサムの団長は思惑が外れたか、狼狽気味だ。


「よろしい。全部族が受け入れると…。ロアン、議事の記録を頼む」


ロアンが頷く。


「さて、この合意に反する行為、要するにいずれかの部族、あるいは我々に危害を加える、もしくは戦火の口火を切った者の部族には、領地のみならず、王国からの永久追放とする。肝に命じるように。これは、エイサム領内の居住者全てに当て嵌まる。騎士団も例外ではない。ただ騎士団の場合は、謀反を起こした者とその家族、連帯責任で団長、副長の解任と追放だ。わかっているな?」


ワシは部屋の中全体を見回した。完全に詰んだようだ。エイサム騎士団の団長の顔が歪む。脂汗が噴き出している。


「さて、停戦に対して合意は得られた。これに何らかの条件を求める者はいるか?」


「あんたのいう条件とは、具体的にどんなものだ?」


「そうだな、例えば、納税の負担軽減であるとかが代表的なモノだな。あとは、前領主は意見を述べても聞く耳を持たなかったようだが、次期領主には意見を直接伝える権利や、このような合議の場を作るとか…。まぁ、多くは各部族の生活水準の向上や、公正な領地運営などが挙げられる。そういうことを考える時期なのかも知れんぞ?」


「税が軽減されるのはありがたい」


「合議の場があり、各部族の意見まとめて、不公平のない領地運営がされるのなら…」


「他には?アンタらの生活を中心に考えろ。王国について文句は言いつつも、何もできず、王国に任せっきり、頼りっきりだった今までの生活から脱却するチャンスだぞ?」


「1ついいか?」


王国がどうのと言ったヤツだ。


「何だ?」


「今まで各部族が個々に意見を伝えていた。次期領主に意見を伝えるために、領主の下に、各部族からの代表者を置き、その者たちが意見をまとめて優先順位を付けて、上位を領主に伝えると言うのはどうだろうか?」


「ほぅ。議会制に近いか…。悪くない。というか、むしろここにとっては革新的だな」


「議会制とは何じゃ?」


「今、彼が言った通り、各部族の意見を代表者が持ち寄り、代表者による話し合いを経て優先順位を付ける。その優先度の高いものを領主に伝えて、認めてもらう。この制度で作るルールが『法律』などになるな。農地面積に応じた、部族ごとの納税の比率や、法を犯した者への罰則など、いろいろ決めていくんだ。領主がいても、領地運営は各部族が協力して行うのと変わらない。各領地の領主、王国上層部による王国議会の、縮小版とも言えるな」


首長たちの顔が明らかに変わった。『自分たちによる領地運営』が琴線に触れたか?いろいろ意見が交わされ、徐々にまとまっていく。しばらくしたところで、昼食の時間となった。


「隣の部屋に食事を用意した。従者と合流して、昼食を摂って下さい。くれぐれも皆さんの部族の血気盛んな者たちが暴走しないよう、伝えて頂けるとありがたいですな」


合議護衛の騎士団が案内に動く中、エイサム騎士団の団長だけが動かなかった。


「何をしている?アンタの仕事は突っ立ってるだけか?」


「あ?あぁ…。すまない、考え事をしてた」


と、心ここにあらずといった感じで部屋から出た。ロアンが


「後をつけますか?」


「そうしてくれ。ただし、お前以外で頼む。面が割れてない者を複数つけた方がいい」


「承知しました」


いくつもの歯車が動き出した。あの男、どう出るかな?


◇◇◇◇◇


 昼食の最中も、各首長は従者そっちのけで、様々な意見交換をしたようだった。こちらはいい傾向だ。従者には、ワシが言ったことを部族内に伝えるよう指示したようだった。問題は、エイサムの騎士団長だ。ヤツの動きをウォッチしていないと拙いことになりかねない。とはいえ、四六時中尾行を付けることもできないからな…。


 昼食後のお話し合いも順調に進み、以下のことが決められた。


・各部族から代表者を選出し、議会制とする

・議会で決めた事案は、領主の了承を得る

・いらぬ諍いを起こさぬよう、罰則を決める

・諍いがあった場合、議会にて審議し、領主に報告、その上で処分を下知する


これらを書面にし、最後に以下を追加した。


『エイサム領の各部族は、新たな領主の下、領主を通じて王国に対して忠誠を誓う』


この書面に各首長が署名、見届け人として、王国ナイトであるワシの署名を入れた。新たな領主に渡すもの、王国に送付するものの2通が作成された。これでエイサム領内の『新たな一歩』が記された。これが、


『エイサムの内乱、無血の停戦』


として、後の世に語り継がれることになる。

このところ、書くスピードが格段に遅くなってきました…。ネタ切れ…?考えがなかなかまとまらず、気分転換にと、番外編を書いています。

まだいずれ、アップしますね。

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