第116話 鎮守様
魔物を退治して、ギルドスタッフによる解体も済んだ。町に戻り、騎士団長に状況を報告した。エクランドに戻り次第、領主様に報告し、改めて森、特に領地外の魔物の生態調査が必要であろう旨を伝えた。かなりの面積だ。鎮守の森、結界に護られた領域の3倍近い。森を区分けして、いくつかの班を編成する必要があるだろう。
朝からメシも食わずに働いたため、ものすごく腹が減っていた。宿に戻り、食堂に行ってみた。宿の主人が、朝食を2人分、確保してあるという。スープを温め直し、ベーコンなどを新たに用意してくれ、パンも追加分を焼いてくれていた。感謝しかない。
コーヒーをもらい、飲んでいると、朝食が改めて出された。労働の後のため、美味く感じる。いや、実際美味い。パンとスープのおかわりと、コーヒーのおかわりをもらい、腹一杯食った。
出発は昼。それまで少し時間がある。部屋で荷物をまとめる前に、マルタとベッドに横になった。少し微睡んで、荷物をまとめた。
町の広場に皆か集まっている。ランチボックスも配られ、それを受け取り馬車に乗り込む。竹製の水筒も付いていて、中には水が入れられている。コーヒーが飲めない人への配慮だろう。
改めて馬車に揺られ、ウトウトしていた。どのくらい来たのか、ランチのための小休止で停車した。馬車から降り、身体を伸ばして、タバコを加えた。騎士団の副長とタバコを吸いながら、魔物の上位種のことについて聞いてみた。
「あの森に、常に大型の上位種がいるのか?」
「いや、今まであれほどの大型の上位種は見たことないですよ。突然変異なのか、他から移動してきたのかは定かではないですね。マモルさんが言う通り、今回の遠征後に、調査するのが妥当でしょう。先日、鎮守の森でも、普段見かけないのが出たんですよね?」
「あぁ、通常のトールとシルバーグリズリーだけどな。あと、奥からグレーハウンドが出てきたっけ」
「その後は見かけないと報告とかでは聞いてますよ。マモルさん、何かしました?」
「森に祠があっただろう?マリアの家から3〜40分ほど入ったところ。あの祠が壊れててね。新しいモノに交換した。マリアの爺さまが作っておいてね。そしてその祠を中心に、星型になるように新たな祠を配置したんだ」
「『護りの星』ですね?魔除けや結界になると言われていますからね」
やはり『五芒星』は、以前から知られていたようだ。
「そうだな。祠を配置した場所を円弧で結ぶと、大きな円になる。少なくともその円内は結界で護られる。だから村や町の人たちが入っても大丈夫だったんだろう」
「もしかして、街道筋の2つの祠も、ですか?」
「そう、それも含めて星型になる」
「ウチのばあちゃんが、祠が新しくなったって、喜んでましたよ。あそこにお供えするのが、ばあちゃんの日課なんです。マモルさんだったんですね。ばあちゃんに伝えますよ。ナイトの方がしてくれたんだってね」
「昔から、その『護りの星』は、村や町を護っていたんだ。ワシが森で配置した祠の近くには、周りと違う、太くて大きな木があったよ。その木々と、街道筋の2つの祠で結界を作っていたんだ」
「そうだったんですか?いや〜、恥ずかしながら、知りませんでした。帰ったらばあちゃんに聞いてみます」
以外にも、副長が『おばあちゃん子』だったとは…。ちょっとびっくりした。
「そういえば、名前聞いてなかったな。あとさ、森の鎮守様のお祭りとかって、ないのか?」
「あ、ロアンと言います。祭りですか?自分が子どもの頃は、あった覚えがありますが、もう10年以上、やってないんじゃないてすかねぇ…」
ふむ、ここも前世と同じか…。村や小さな町は過疎化が進み、若衆がいなくなり、高齢化で地元の人たちでは祭りなどを仕切ることが難しくなったのだろう。日本も同じ…。ねぶたや竿頭祭り、祇園祭りや阿波踊りなどの有名な祭りは、行政がともに行うが、地場の小さな祭りは、そこの人たちの手で行われる。若衆がいなくなるということは、歴史の担い手がいなくなるということ…。廃れてしまうのも仕方ないことなのかもしれん…。寂しい気もするが…。
「復活させられないかな?」
と小さく呟いたら、副長が反応した。
「帰ったらやりましょう!ばあちゃんと、その友達のお年寄りに話しを聞いてみますよ!」
以外や以外、新たな歴史の担い手となる者がここにいた。
「いろいろ考えてみよう。鎮守様は神様だからな」
タバコを吸い殻入れに入れ、副長と本隊の方に向かって、ランチを摂った。
移動を進めて、この日の宿営地は、エイサム領の手前の町になった。明日朝にエイサム領に入ることになる。この行軍では、先に早馬を行かせ、宿や食堂の確保を騎士団が行なっていた。
今回も3話の更新です…。本業が忙しく、なかなか進められず…。申し訳ないです…。
無理しない程度に頑張ります。




