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第115話 旅の途中

 朝起き抜けに、窓辺でタバコを吸った。まだ明け切っていない、白んだ空を見上げながら。


 昨夜はマルタと2人、濃密な時間が過ごせた。前世から考えても久しぶりだったためか、思い出してニヤけてしまう。そのマルタはまだ寝息をたてている。


 部屋にコーヒーなどないので、用意されていたグラスに水を注ぎいで飲んだ。別にここでは、前世で言われた『発展途上国に行ったら生水飲むな』的なことはなく、普通に飲める。基本は井戸水だが、土壌汚染もなく、クリーンそのもの。


 2本目のタバコに火を着け、窓の外に改めて目を向けた。ワシらから西の方角、『鎮守の森』の北の外れで、何かが動いている。土埃も舞っている。距離的には、おそらく500m近く離れているだろう。しかし、ここから見えると言うことは、それだけ大型だと言える。


 マルタを起こさないように気を付けながらも急いで着替え、騎士団の詰所に向かった。


「おはよう。地響きは…らここでも聞こえるな?ここから西側500mほど先の森の外れで、大型の何かが蠢いてる、というか、暴れている。おそらくは魔物だろう。どうする?万一こちらに来ると、町に被害が出る可能性もあるぞ?」


「マモルさん、騎士団から数名率いて、確認、場合によっては対処をお願いできますか?こちらは、いつでも動けるよう、待機します」


「なんか様子を伺いに来て、貧乏くじ引いた感が否めないが…。わかった。準備して、また戻る。手ぶらで来たからな」


と宿に武器を取りに戻った。部屋にはメモを残したから、マルタが起きていれば、準備しているだろう。


 部屋に入ると、準備万端なマルタがいた。説明の前に、軽くキスをして、状況を伝えた。武器を手にマルタを伴い、詰所に戻る。そこには騎士団の中堅メンバーが5人いた。


「じゃあ、行くか」


『七人の侍』ではないが、5人の騎士を率いたナイトと魔導士の7人で、『何かが蠢く』森に向かった。


◇◇◇◇◇


 近付くにつれ、当然だが、地響きが大きくなった。しかし、まだ姿は見えない。時折り咆哮のようなものも聞こえるようになった。獣系か?はたまたトール系か?いずれにせよ、大型には変わりないが、過去に退治している相手だ、上位種でなければ対処は可能なはずだ。


 ん?そうか、上位種の存在、すっかり忘れてた…。ははは…。あ〜ぁ、フラグにならなきゃいいけど…。


 徐々に近くなり、木々が倒されているのが見て取れた。更に慎重に近付いていく。相手が目視できた。トール系だが、体が赤茶色…?上位種かぁ…。はぁ、フラグ立てちまった…。


 しかし、この状況はトール上位種だけではないだろう。相手も見極めてから攻撃しないと、こちらがやられる。右に回り込みながら、相手を探った。見えた、熊系、シルバーグリズリーか?いや、これも一部の色が違う…。首周りに赤い模様がある。『ツキノワグマ』のようだ。ただ、やたらとデカい…。丈は5メートル以上ある…。バケモノだ…。救い(気休め…)は、それぞれが1体しかいないことだった。


 クロスボウに、金属の矢をつがえる。1発で仕留めたい。トールの方が、喉元など柔らかい部分がありそうだ。そこを狙い、矢を放つ。矢羽根が小さいため、風切音は小さく、回転しながら飛んでいく。その間に矢を追加でつがえる。当たる!というタイミングで、トール上位種が矢に気付いた。手をかざして遮ろうとするが、矢はそのまま手を貫いた。が、首に半分刺さった程度で止まってしまった。あれを避けようとするのか?勘がいいのか?動体視力も良さそうだ。


 追加の矢を、今度は眉間目掛けて撃ち込んだ。首を押さえようとしていたため、二の矢には気付かれず、そのまま眉間に突き刺さった。


 位置を変えて、次の矢をつがえる。今度の狙いは熊系の方だ。移動しつつ、トールを見やると、静かに倒れていくのが見えた。


 熊系に正面から対峙して、吠えたところ、口を狙った。そのまま吸い込まれ、後頭部から矢が抜けた。毛皮が硬そうだったため、柔らかそうな口腔内を狙った。正解だったようだな。熊系はそのまま後ろに倒れた。


 2体の魔物を退治し、直近の危険は去った。解体をどうするか?すると後ろから足音やら話し声やら…。騎士団に付き添われ、この町のギルドスタッフ数人が来たようだ。


「多分、というか、死んでるから危険はない。解体を頼めるか?」


と声をかけたが、倒れている2体を見て驚いていた。


「こんなデカいの見たことないぞ…。なんでこんなのがいるんだ?」


「後日改めて、領主様に相談の上、領内の魔物の生態調査をすべきかもな」


「これを仕留めたのか?アンタ、何モンだ?」


「隣町エランのハンターだよ。一応Aクラスだ」


「ナイトでもある方だ」


と騎士団が付け加える。そしてマルタが


「鍛治屋でもあるわね」


あ〜、ごちゃごちゃうるさい。余計なことは言わんでよろしい。


 解体作業が済むまで、騎士団のメンバーと周囲の警戒をしながら、解体員の護衛をした。マルタがギルドスタッフに、


「魔石は帰りに受け取るから保管しておいてね」


と頼んでいた。


「いや、魔石もデカいようなら、エランのギルド支部にアランがいるから、そっちに届けてくれると助かる」


馬車での移動とはいえ、大きい魔石は荷物になる。先に届けてもらうのがいいだろう。マルタも納得した。


 しかし、こんな大型種が町に近い場所に出るなんて…。この先の行軍が思いやられる…。

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