第113話 領外への遠征
家に帰って、ルナがリビングにいたので、コーヒーを淹れてもらった。作業が一段落したマリアを呼んで、遠征の話しを伝えた。
「やっと落ち着いて仕事するのかと思ったのに、今度は遠征に駆り出されるの?」
「他の領地の者から、ここの領主様への相談だからなぁ…。で、それを受けての領主様指示だ。こんなことなら、ナイトなんて称号もらうんじゃなかったよ。給金ももらってないのに…」
「何よ、タダ働きなの⁉︎」
「今回の遠征は、働けばもらえるよ。前回の討伐の時、ちゃんと支払われたし…」
いくらもらったか、覚えてない…。
「どのくらいの期間になるの?」
「行くのに3日ほど。向こうで何をどこまでするかは未定だから、期間も分からん、で、帰りも3日ほどだな」
「10日以上じゃない⁉︎」
「何日かかることになるのやら…。浮気すんなよ〜」
「しないわよ‼︎ 失礼ね‼︎」
「冗談だよ。そんなに怒るな…。とにかく準備して、待機するから。ギルドに騎士団からの連絡が入り次第、ワシにも連絡がくることになってる」
と伝えて納屋に向かった。武器の状態を確認して、いくつかの着替え、等々をバッグに詰めた。まぁ、準備なんてこんなもんだろう。元々、持ち物は少ないし、嵩張るのは武器くらいだ。矢筒には、木製の矢を入れた。金属製は、何かあった時のために、ほんの数本だけにした。
納屋の外に出てタバコを一服。タマモとルナが、コーヒーを持ってこちらに来た。ルナが
「バタバタしてるね。なんか落ち着かない…」
「それは、ワシに対してか?それともこの世界全体の感覚か?」
「後者よ。モヤモヤするというか、黒いモヤのようなものが増殖しながら蠢いてる感じ…」
「確かに、キナ臭い感じはあるんだ。アチラの領主は毒殺だしな…。ところでさ、人を操る魔物って、いるのか?」
『いる。かなりの高等種よ?あなたの世界で言う、『サタン』をはじめとする悪魔系が、これに当たるわね」
悪魔ときたか…。いわゆる『魔族』の系統…。『神』と敵対する、『悪』の根源…。
「そんなもの、倒す術はあるのか?」
「金属製の矢を、少し多めにしなさい。マモルのクロスボウなら貫けるわ。それに、魔力の増強もできるし…」
矢筒を2種類持って行くか。リングは付けっぱなしだから大丈夫だが、バングルを忘れずに付けて行かんとな。
コーヒー飲んでタバコを吸って、のんびりした雰囲気を味わっていたが、ギルドのスタッフが馬車で迎えに来た。
「騎士団より、領主様の指示が発布されたと連絡が来ました。
『本日夕刻より、エクランド領騎士団、並びに領内のBクラス以上ハンター、冒険者は、エクランド領主の名の下、隣領エイサム領に赴く。目的は、エイサム領内の内乱、もしくはこれに準ずる係争を鎮めることである』
マモルさんには、至急、ギルドに来て欲しいとのことで、迎えに来ました!」
「わかった。荷物を持って来る。マリア、ルナ、タマモ。留守、頼むな」
「何よ、改まって…。気を付けて」
荷物を持って馬車に乗り込んだ。
ギルドに着くと、騎士団も集合していた。ヒースとアランは、ハンターと冒険者を指揮っている。ハンターと冒険者のクラスはBクラス以上が招集された。メンバーを見ると『チャック(チャッキー)』もいた。他にも二刀流をワシが封印した、『コーダ』もいる。あいつ、いつBクラスになった?
「お疲れ様です。チャッキーとコーダは、つい先日、昇格したんですよ。経験不足は否めないですがね」
とアラン。ハンターらの脇には、アマゾネスたちの姿もあった。
「出発までまだ時間があります。コーヒーでもどうですか?」
アランが手を振ったら、ティナがコーヒーを持ってきた。もしかして、進展あったか…?アランが真っ赤になりながら、
「私たち、一緒になることを前提に、正式に付き合うことになりました。マモルさんには、相談に乗ってもらったり、いろいろ感謝してます。ありがとうございます」
「そうか、よかったよ。でも、その矢先にこの騒ぎか…。難儀なことだね〜」
と言いながら、コーヒーを受け取った。
「この騒ぎについては仕方ないでしょう。領主様からの指示もありますし…。王国内のことでもありますから…」
「お互い、損な性分だな。貧乏くじを引き寄せる…」
「イヤなこと言わないで下さいよ〜。まぁ、貧乏くじ引きやすいのは認めざるを得ないですが…」
アランの隣でティナが笑う。微笑ましい光景だな。
『鬼が出るか蛇が出るか』という状況の中、2人には何とも癒される。
「お〜い、あたしのこと、忘れてない?」
マルタがいた。
「え?なんで?なんでここにいる?」
「あたしもBクラスの冒険者ですけど、何か?」
と身分証を出してワシらに見せつけた。確かにBクラスと記されてる。
「家の連中には伝えてあるのか?」
「ない。店に置いてあるもので遠征の準備をしたから帰ってない」
さあどうする?どうやって、マルタも遠征だと伝えるか…?悩んでいたら騎士団の副長から
「遠征に加わらない騎士団の者もいますし、その一部はマモルさん宅、いやマリアさん宅の護衛の任を、領主様から仰せつかっています。その者に伝言をいたしましょう」
との提案があり、あっさり片付いた。何で家に護衛が付く?
「マモルさんはナイトですよ?その邸宅に護衛が付くのは当たり前です。あと、馬車はマルタさんと騎士団の馬車にお乗り下さい」
「わ〜い。旦那様と一緒だ〜」
「やめなさい、恥ずかしい…。新婚旅行じゃないんだから…」
「いいじゃん、このくらい」
「ダメ。一緒に行けない人のことも考えなさい」
「あ、ごめん。はしゃぎ過ぎた…」
あっさり反省する…。
そんなドタバタをやってる間に、騎士団長から話しがあると、号令があった。
今回は3話でご勘弁を…。
なかぬか進まなくて…。




