第10話 奇妙な同居
続編、アップします。
「この部屋、自由に使っていいわ」
と案内された部屋は、工房脇の空き部屋だった。が、物置き的なものではなく、割と綺麗に片付けてある。ベッドの他に、作り付けの棚やクローゼット、机と椅子も置いてある。まったくもって不自由しないと思える、十分な部屋だ。広さ的にも8畳くらいはありそうだ。
「元は祖父の部屋だったのよ。ベッドも使って構わない。シーツとかも洗ってあるから。他に必要なものがあったら言って」
「ありがとう。行くとこないわ、金ないわだったから助かった」
と心からの感謝を伝え、納屋の修理をするから着替えたいと申し出た。
彼女が部屋を出たところで、一旦、部屋にあった椅子に腰掛け、電子タバコを取り出した瞬間、
「母屋は禁煙!で、外だとしても私の前でも吸わないで!いい⁉︎」
と凄まれた…。慌ててうなずき、承知した。とりあえず着替えして、納屋の修理に向おう。そこで一服すりゃいい。
そんなこんなでトランクから着替えを出し、泥だらけのスーツを脱いだ。
「キンッ」
何かが床に落ちて、響いた。コインのようなものだが、心当たりがまったくない。どこから落ちた?上着のサイドポケットを探ると、同じものが4枚あった。落ちたものと合わせ5枚。コインならどのくらいの価値があるんだ?着替えてからマリアに聞いてみるか。
着替えを終えて、さっき話をしていたリビング的な部屋で、マリアが頬杖をついていた。
「どうした?何か悩んでるような顔して」
と、少々茶化しながら声をかけた。すると
「何故アンタにここに留まれって言ったんだろ…?初めて会ったばかりで何も知らない相手なのに…」
「迷惑なら、明日朝には出て行くよ。とりあえず、今夜は泊めてもらえると助かる」
「いいのよ、気にしないで。私がいろと言ったんだから」
でも、やっぱり気にはなる…。若い女の子と二人暮らし…。世間様の目が特に…。
「あっ、そうだ。これ何か知ってる?」
先程のコインよようなものだ。
「これ、どうしたの⁉︎ 王国の金貨よ⁉︎」
上着のポケットにあったが、まったく心当たりがないことを伝えると、
「金貨1枚で、大体二人なら1か月くらいの食費が十分賄えるわよ!かなり贅沢ができる!1枚頂くわよ、アンタの2か月分として。いい?」
いいも悪いも、こちらは居候の身。これでメシ食わしてもらえるなら御の字だ。しかし1枚で1か月二人の食費とは。しかも贅沢な…。日本円で5万前後の貨幣価値かな?




