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竜達の愛娘  作者: ao
第五章 ―終章―
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途絶えた痕跡

/シュベル


 ウィリアが誘拐され、二日過ぎていた。探せど探せど見つからず……心が張裂けそうなほど辛い時間が過ぎる。皆には、王としてそんな姿を晒す訳にはいかず必死に繕ってはいるが、それも限界に近い。数分おきに彼女を案じ、何故あの時ウィリアを残し皇城へ向ったのかと己を責める。


 ウィリアが誘拐されたその日、私は皆に交代で探すよう伝えた。

 食事も睡眠も取らず昼夜問わず飛び回り探そうとする仲間に、判断力が鈍り命の危険に晒されたとしてもその命を使いウィリアを守るのではないか? と危機感を覚えたからだ。

 

 もちろんウィリアを救い出すことはこの命にかけても必ず果たして見せる。だが、それは私のウィリアに対する想いからであって、皆にそれを強制してはならない。


 そう思ったからこそ伝えたのだが……王竜の命を破り、必死に飛び回り探す者が続出した。叱りつけるつもりで声を出した私へ口を揃え力強く言うのだ……「我らがきっとウィリア様を探し出してみせます」と……そんな仲間を叱れるはずもなく、昼夜問わず竜がアルシッドク皇国内を飛び探しまわっている。

 

 しかし、その甲斐空しく彼女は未だ発見することが出来ないでいた。二日目の陽が沈み、月が中程に差し掛かる頃、この二日ウィリアを探し回る、私の頭にウィリアからの思念が届く。


《しっ……しゅべ……る、さま》


《ウィリア! どこだ?》


《……っ、く……えま……ん》


 思念の声は、途切れ途切れにしか聞こえずウィリアの魔力が安定していないことを示していた。

 近くの平原へ慌てて降り、もう一度ウィリアへと声をかける。


《ウィリア。聞こえるか?》


《し……ぱい……な……い》


 彼女の声音が沈んだのを感じ謝っているのでは無いかと思い至る。

 私が降り立った場所に、次々と仲間が降り立ち魔法:擬人化を使い駆け寄ってくる。


《謝る必要は無いぞ。確かに心配しているが、こうして話せただけでも私は嬉しいのだ》


《うっ……し……》


 ウィリアが言う言葉をなんとか聞き取ろうと集中している私へ、ジオールたちが視線を向けていることに気付き皆にも、ウィリアの思念が届いているのだと理解できた。

 ウィリアが何かを伝えるよう思念で言えば、周りの皆は必死にその声を聞き言葉にしようとする。


「馬車のゆれがひどいでしょうか?」


「とりのこえ?」


「うーん。これでは判りませんな。シュベル様ゆっくり話してくれと伝えてみて下さい」


 カシとベルンがそれっぽく聞こえる単語を繋ぎ、言葉にするも確証が得られない。

 デイハが、ゆっくり話すようにと言う助言をしてくれる。

 その言葉を信じ、もう1度ウィリアと思念を通す。


《ウィリア。聞こえていたらゆっくり話してくれ》


《は……い。じぇ……し……の……じゅう……しゃに……よば……れて……》


《ジェシカの従者に呼ばれた?》


《は……い。い……ま……くら……は……この……な……にい……す》


《今、箱のな、なかにいるのか?》


《……はい。……う……ま……ば……しゃ……が……がた……》


《馬? 馬車……ガタガタ?》


「なるほど! ウィリア様は馬車に乗せられ、移動させられているのではないのですか?」


「この時間に動いてる馬車を探せばいいのじゃ!」



 デイハが声を読み取り、馬車と言う単語から移動しているのではないかと伝える。それを聞いたジオールが、探そうと訴えた。

 確かにこの時間ならば可能だろう。探す決断をすると直に、皆へ伝える。


「そうだな。デュセイからどこへ向ったかは判らんが、この時間帯ならば動いている馬車も少ないはずだ。それに、我らも身を隠しやすかろう。

 直に、捜索隊を編成する! ジオール、デイハお前たちが仕切れ」


 頷いてくれた皆に、頷き返し部隊編成をジオールとデイハに任せ、ウィリアとの思念を切らさぬよう言葉を語りかけた。


《ウィリア。出来る限り思念を飛ばし続けてくれ》


《……い》


 ウィリアとの思念を交しながら、ベルンに皇王たちへ連絡を入れるよう伝えた。

 頷き、羊皮紙、羽ペン、インク、テーブルを魔法:孤児箱から取り出すと、思念を通し会話した内容らしきものを次々と書きとめていく。


「シュベル様。編成が終わりました。これより出発させますがよろしいですか?」


「あぁ。皆によろしく伝えてくれ」


「「はっ」」


 早々に準備が整い出発するジオールとデイハの頼もしい背中を見送り、瞼を閉じウィリアの持つ自分の鱗の気配を探す。何度やっても掴めなかったが、思念が通じる今ならばもしやと考えたからだ。

 じっと瞼を閉じ、気配を辿る北、東、西……南! 微かに南に気配を感じた気がして顔を上げたはいいものの、余にも弱く確証を持つことができない。


 目を眇め探るよう南の方角を向きもう一度試そうとしていた私へ、思念での会話を終えたベルンが声をかけてきた。


「シュベル様、いかがされましたか?」


「いや……南に、鱗を感じたのだが……」


 そう言って首を振り、気にするなと伝えればベルンが羊皮紙を差し出す。

 受け取り内容に目を走らせた私は、驚き彼の顔を凝視した。


 書かれていた内容は箇条書きで計画の全容が書かれている。

 

 ・ジェシカの従者の筆跡で、詳細が記されていた。

 ・ジェシカの母が昨日、治療院へ向ったおり、行方不明。

 ・深夜手紙が投げ込まれ、人質に取られていると判明。交換条件はウィリア様の身柄。

 ・馬車でデュセイからカージスの中間付近の山間に連れて行く。

 ・期日6日以内。

 ・ジェシカ、思念を送りウィリア様を呼び出す。

 ・店は、贔屓(ひいき)にしている宝飾店。

 ・裏口から誘い出す。


「その従者の部屋に、残された記録から得られた情報のようです」


「南……で間違いないようだな」


「デュセイからカージスへ行く道中にある、山の中に何かが隠されているのでしょうか?

 しかし、馬車を使ったとしてもここからでは5日はかかるはずです……」


 南で間違いは無いだろう。


「昼夜問わず走らせれば、その半分で間に合う……とすれば、既にやつらの元へ連れて行かれている可能性が高い!」


「急ぎましょう!」


 ベルンと二人頷き合い、彼に思念で皆に伝えるよう頼み、私たちもその場から急ぎ飛び立つ。


《ウィリア。迎えに行く待っていろ》


《……さま……い》


 途切れ途切れで理解してやることはできないが、なんとなく彼女が、私の名を呼び「はい」と答えてくれた気がした。

 待っていろ、必ず助けてやる……そう伝え、翼を目一杯広げ星が瞬く空を南へ向い羽ばたいた。

 


 近くに飛ぶ仲間の姿が増えはじめ、目指す場所が近いことがわかる。

 ウィリアと繋げたままの思念に向け、近くに来ていることを知らせ安心させてやろうと、名を呼んだ。


《ウィリア。もう直だ!》


《……》


《ウィリア? 聞こえているか?》

 

《……》


《ウィリア!!》


 何度確認しても、思念は通じている。

 私だけではなくウィリアと共にいた仲間たちも感じるようだった……だが、その後何度呼びかけてもウィリアからの返事は返ってこなかった。


《ウィリア様に何かあったのでしょうか?》


《急げ!》


 焦り、憤り、怒り……全ての負の感情が私の不安を煽る。

 何度も翼を動かし速さは出ているはずなのに、景色が色あせゆっくりと流れて見える。


 ……その感覚に覚えがある……いつだったのかは思い出せない。


 だが、ひとつだけ判るのだ。


 思いを寄せる者が死すその瞬間の気持ちだけは――。


 蘇る夢でみた記憶に、早鐘のように鼓動が増していく。


 どんなに焦り急いでも、後から闇が追いかけ迫り全てを飲み込もうとしているように感じると同時に、身は震え、恐怖と戦慄を覚えた――。


足を運んでいただきありがとうございます。


残りだいたい、10話~15話ぐらいです。

長々とかかり申し訳ありません……。

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