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竜達の愛娘  作者: ao
第四章 ―グリンヒルデ王国編―
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明かされた企み

/シュベル


 昼食を取り終え、食後の紅茶を飲んでいると、カシリアとベルンがダイニングへやってきた。

 カシリアの左手には、先程渡した指輪がしっかりと嵌められている。顔を見る限り、きちんと伝えたようだ。そんな2人を遠めに見て、頷いた私に気付いたベルンが、僅かに頭を下げる仕草を見せた。


 可愛い奴だ……。

 夜には、セシルから報告があるだろう。それにより、彼を行かせるかどうかを決めようと考えれば、隣に座っていたウィリアが、首を傾げこちらを見ていた。


「どうした?」


 ウィリアを真似て首を傾げて見せれば、くすくすと笑い。


「見ていただけです……嫌でしたか?」


「そっ、そんなことはない。もっ、もっと見ていいぞ」


 余の可愛さに昇天しそうになり、どもってしまう。

 こんなに可愛くて、美しく、可憐で、花のように愛しい――。

 

《お顔が、死んだ豚のように醜くなっておりますわよ?》


 アルミスが、思念を飛ばしてくる。

 顔が死んだ豚……。例えが酷すぎやしまいか?

 視線だけを動かし、アルミスを見ればニコニコと笑いつつも、心底冷え切ったような目をしていた。

 

 あぁ、番と喧嘩でもしたのだろう。そう勝手に予想しつつ、紅茶を飲んだ。

 そこへ、ベルンが声をかけてくる。


「シュベル様。今から皇王のところへ報告に行って来ようと思うのですが?」


「そうか。あぁ、そうだついでで構わないから、これを監視している者へ届けて欲しい」


 魔法:個人箱から、つい先程作り上げた魔道具を各50ずつ取り出した。

 それと、と付け加え他より少しだけ大きな魔石の魔道具を、ベルンの手に乗せる。


「それは、お前の分だ。使い方は全員に思念で伝える」


「畏まりました」


 彼はそう返事を返すと、取り出した魔道具を、個人箱へと仕舞い皇王の元へ報告に向った。

 彼を追うカシリアの瞳が不安そうに揺れていたのをアルミスが慰めているのが見えた。


 声をかけようかとも思ったが、既にアルミスが慰めているので敢えて声はかけず、自室へと戻るとだけ伝え、ダイニングを後にした。

 自室で、作りかけの魔道具を作る。

 これも、皆を守るためのものだ、と思い。手を抜くことなく1つ1つに願いを籠めた。


 無事に魔道具完成し、手の開いている者たちに手伝ってもらうよう声をかけ、柵の内側に取り付ける。足りない部分が無いかを確認し終え、起動させれば柵全てを覆うようにして光の壁が天高く昇っていった。

 壁は数回、淡く光る波が天へと昇ると、色を失い周りの景色を映し出すように見えなくなった。


 次に、本当に魔道具が思い通りに動くのかを試す。

 それについては、竜ではどうにもできないため、ウィリアに頼んだ。

 一度柵の外へと出てもらい、屋敷の門を通れるかを試してもらう。門へ入ろうとしたウィリアが、何かの壁にぶつかり入れないくなったと言った所で、無事に魔道具:防柵(バリケード)が、起動していることがわかった。


 内側から、門の魔道具のみに停止をかけ、開けてやればウィリアも通ることができた。


 次に試すのは、新しい魔道具:呼び鈴(ホ・ベル)だ。

 これについては、手伝いをかって出てくれた竜に頼む。門に取り付けた魔道具へ外から触れるだけで、リビングに設置したもうひとつの魔道具が、けたたましい鉄の打ち合う音を室内へ響かせた。

 皆が耳を押さえ、しかめっ面を見せている。

 反応を見る限り、早めの改善が必要なようだ……。

 

 今日のところは、これで我慢してもらおう。

 皆を労うため、口を開きかけた私の袖を、ツンツンと引っ張る感覚に振り向いてみれば、ウィリアがニッコリ微笑みつつ首を振った。


「ダメか?」


「はい。ダメです」


 どうやら、魔道具:呼び鈴は却下されたようだ。

 早急に新しい物を作らねば……。そう思い、ふたつの魔石を取り出せば、ウィリアの手が魔石を覆った。

 魔石に伝わる、僅かな魔力を感じて驚き彼女を見た。

 彼女が魔石から手を離すと、そこには新しい魔道具が出来上がっていた。


 魔法:呼び鈴は知らないはずだ。まさか! 1度、魔道具を試しただけで、その仕組みを理解できたというのか?

 

「まさか、作ったのか……?」


 微笑むことで、そうだと言っていることが判った。

 こういう顔をする時は、どんなに聞いても答えてはくれないことを学習している。

 そのため、何故だと言う思いはあるものの、考えるのを止め彼女が作ってくれた魔道具を持って、門へと向った。


 門の魔道具を取り外し、新たな魔道具をはめ込む。

 先程より少し形が小さかったらしく、抜けてしまいそうになるのを魔法を使い門に空いた穴の幅を狭めることで上手く嵌めることができた。

 

 再度、魔道具:呼び鈴を鳴らす。

 聞いたこと無い音がなる。例えるなら少し甲高い鳥の声と鉄製の鈴の音に近いだろう。

 室内で聞いていた皆が、頷いているところを見る限りこれで問題が無いようだった。

 


 無事、魔道具起動も終わり。これで屋敷についての不安は解消されたと、ソファーで人心地ついていると、慌てたようなセシルの思念が届いた。

 思念が届いた者全てが、その事実に固まり暫し、リビングが無音となった。


《もう一度確認する。

 コーラルの目的は、リーシャとウィリアと言うことで間違いないのだな?》


《はい。リーシャさんを狙う理由は、どうやら国が関係しているようです。

 アルシッドク皇国とセルスティア王国、両国で結ばれた同盟の内容が、グリンヒルデの王にとっては、かなり気に入らないようですね。

 無理にでも婚姻関係を作れと命令を受けているようです。

 その両国の関係に亀裂を入れたいと考えているようです》


《なるほど。それはどこで知りえた情報だ?》


《馬車の中に、隠し入れた魔道具でコーラルとその従者である、オーカスの会話を聞き取りました。》


 リーシャを狙う理由は、やはり国が関与していたようだ。

 しかし、無理にでも婚姻を結べと言う命令を平気で下す者も、受ける者もどちらも気に入らない

 ウィリアもとセシルは言っていた、その理由はなんだろうか? 


《ウィリアを狙う理由は?》


《それですが、どうやら王の命令ではあるようですが、アルスティと言う男がウィリア様を欲しているようです。今日会っていた男達に、ウィリア様を誘拐するよう話していました》


《馬鹿王子か! スラムの者を使って誘拐するつもりか!》


《馬鹿王子? その人については良く判りませんが、シュベル様へ接触を図ろうとしているも事実のようで、以前手紙を屋敷へ届けたのはゴードヴィズだと、言っていました》


 まさか、相手にすらというより、存在すら認められていないのだぞ? それでもなお、ウィリアを嫁にするつもりなのか。

 コーラルは、是が非でもウィリアを連れて行くつもりなのだろう。それだけは、許さない。どんなことをしてもウィリアと仲間だけは守らねば。

 奴のニヤニヤしたあの顔が浮かびイラつきに、やはり消しておくべきだったと後悔した。


《ウィリア様に手をだせることだけは、阻止致しましょう!》


 デイハの言葉に皆が頷いた。そこへジオールが疑問を投げかける。


《少しおかしいですのぅ》


《何がだ?》


《いえ、馬鹿王子が関与しているのであれば、何故シュベル様の元へ訪ねて来ないのか。と思いましての》


《と言うと?》


《馬鹿王子と接触したのは、3年前じゃ。それなのにじゃ、今更手紙を送ってくると言うのが腑に落ちんのじゃが》


 そうか……。確かに、あの時、馬鹿王子に会った際、私は確かに名乗っているのだ。何故今更となるのも不思議では無い。説明を聞いて漸く理解できたが、新たな疑問が浮かぶ。

 では、私の名を知っていてなお、今まで2年もの間、何の接触も無かったのか――。

 兎に角、今は目的がはっきり判っただけで良い。これでこちらも手が打ちやすくなる。そうして直にベルンへ声をかける。


《ベルン。聞こえていたな?》


《はい。伝えておきます》


《頼む。今夜、再度会議を開く皆参加して欲しい》


 思念を通じて、皆が了承の返事を返してくれた。

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