国王 vs バーリン
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/シュベル
謁見の間の扉が開き、ヒルデス他3名と背負われた男が1人の計4名が、王座までの赤い敷物の上を闊歩する。最後尾を歩く男の背には、背負われ血の滲んだ布を腕や腹に巻いた痩せた男の姿があった。カレラの父親だろう男の姿に、痛ましさを感じ瞼を閉じる。
ドサっと音がなり、瞼を開ければ国王の立つ台座から5メートルほど離れた位置で、ヒルデス他3名が膝を着きそれなりに見えるような格好をしている。側近くには、倒れ臥したまま動かない男がいる。
《倒れているのが、カレラの父親でしょうか?》
デイハは憐れみの声を思念のせ聞いてくる。それに怒りを滲ませたジオールが答えた。
その瞳は、細く眇められヒルデスたちを睨みつけている。
《そうじゃろうな。……クズ共が!!》
《まだ、はじまってもいないのに、今からそれでは疲れてしまいますよ?》
冷静な状況判断を下すベルンに、デイハも頷いていた。
《国王と奴らの話し合いが先だ。どうにもならなければ、魔道具を起動させてからやり返せば良いではないか》
《まどろっこしいのぅ!》
こういう場に、ジオールは向かないであろうことは分っていたのだがまさか、奴らが入って来ただけで怒りを滲ませるとは流石に考えていなかった。
今回の作戦では、まず国王がヒルデスたちに事訳を説明させる。その後、相違点などを宰相ノービスが突き付ける。それでもダメなら本来は、私が威圧し話させる予定だったが、魔道具を作ったことで、それを使うことになっった。
厳しい顔をした国王へ、挨拶の口上を陳べたヒルデスたちが立ち上がると、倒れたカレラの父親と思しき男を引き摺り国王に見えやすい位置へと移動させた。
「前回の謁見の折、お約束いたしました。罪人を連れて参りました」
下等な者を見る目で倒れた男を見やると、薄ら笑いを貼り付けた表情でヒルデスが、国王へ軽く頭を下げ話しを切り出す。
「その者は話せるのか?」
問いかける国王に対し、答えたのは恭しくお辞儀をして見せた、小太りで七三に分けた髪、特徴的な大きな鼻を持つ男だった。
「私は、バーリン・ロルトルと申します。発言をお許しいただけますでしょうか?」
あれが、バーリンか……。
「構わん」
発言を許した国王へ礼を陳べるとバーリンは話はじめる。
「前回の謁見で、意識の無い罪人を5日という期間で、連れてくることをお約束しましたが重篤な状態での移動は、困難と判断した私たちは国王陛下へ忠誠を示すため、罪人ではありますが、神殿の神官さまに毎日回復魔法を使っていただきました。
ですが芳しくなく……間に合わないかと思っていたところ!! 今朝方、漸く意識取り戻したのです! ですから話しをすることはまだ難しいかと思われます」
『忠誠を示す』の部分がいやに強調されている。しかも、『今朝方、漸く意識を取り戻した』と言っているが、昨日カレラに持たせた、魔法:聞き耳ヒアードを籠めた魔道具では、しっかりと父親の声が入っていた。
バーリンという男が、これまで口だけで言い逃れできていた意味が良く分った。
「なるほど……。話が出来ぬか……。ではこちらでも、神殿の巫女殿に来て頂けるよう手配しよう!」
頷き、直ぐに近くの者へ声をかけようとする国王を、バーリンは止める。
「陛下。この者は罪を犯しているため、神聖魔法での回復が作用しにくいと神殿の神官さまが言っておりました。ですから、巫女様にご足労頂いたとしても、急激に回復する見込みは低いようです。それにもし、巫女様が回復に失敗したなどと事実無根の噂が出回れば、そのお立場も悪くなるのではないでしょうか?」
国王は、その眼を少し眇め顎に手を添え考える素振りを見せ、思念を飛ばしてくる。
《シュベル様、いかがしましょうか?》
《そのまま話に乗っておくといい》
《では、そういたしましょう》
「ふむ。そのような噂が立つのは巫女殿に失礼だな……。仕方ない、この者を特別牢に運べ!」
そう言うと、国王は左に居た騎士へ視線を向けた。カレラの父親を抱かかえた騎士2人は、王座後の扉へと消えて行った。
扉の向こうにいる、カシへ思念を飛ばす。
《今連れて行かれた者を治すよう、巫女に伝えてくれ》
《はい》
完結に必要な情報だけを伝え、思念を切ると目の前で繰り返される演劇を観戦する。国王は、困り顔を見せ再度になるが、と前置きし奴らとの会話を進める。
「先程の罪人が、お前たちに報告した内容をもう1度詳しく話せ」
説明するため、ヒルデスが出るのかと思えば……。またもやバーリンが言葉を発した。
「取調べの結果をご報告させて頂きます。
アルシッドク皇国にて冒険者が不当に逮捕されたと報告されたことに端を発します。
ロートの自白によれば、アルシッドク皇国では、どうやら人外を大公として迎え入れたようで狩りが禁止されていることを知らなかった、冒険者たちが捕縛されたのです。
また、捕縛した冒険者を運び入れた、シュベルと名乗る者によってデュセイ支部の女性職員が、不当な扱いを受けたことに対し、抗議したギルド長バスカ・バッケンの言葉に激昂し、故意にギルド所有の建物を破壊したと報告が入っております」
「なるほど……。それでお前たちはその報告に、どう解釈し行動したのだ?」
バーリンの説明中、後方からピリピリと静電気の立つ音がしている。誰かは既に検討はついている。振り返えらず思念を送る。
《ジオール……頼むから、落ち着いてくれ……》
《……ユルセルノデスカ?》
《はじまったばかりで、怒るな!! ほら、これでも食べろ……》
魔法:個人箱から取り出した、ウィリア特性のどら焼きを10個ほど渡してやる。
国王とバーリンの会話を聞き逃さないため、2人の会話に耳を澄ませる。
「はい。アルシッドク皇国に職員を派遣しました。そこで調べたところ、虚偽の報告ありとの結果を受け。すぐさま職員であるロートを捕らえ尋問いたしましたが、虚偽の報告をしたことを認めず……、拷問にかけました」
「そうか。ひとつ疑問がある、何故職員を派遣したのだ?」
国王の問いは思わぬ反撃だったのだろう、バーリンは、はじめて言葉に詰まっている。ヒルデスと視線を合わせ、汗を拭うと説明を再開した。
「それについては、ロートに報告した職員とギルド本部長であるヒルデス殿の言葉の違いからでございます」
頷いた国王の様子を視線だけでチラ見した、バーリンは流れる汗をハンカチーフで何度も拭いている。
「なるほど、だがそれだとおかしいのではないか?」
その言葉に、視線を彷徨わせうろたえた様子を見せたが瞬時に隠し国王の言葉に反論する。
「何がおかしいのでしょうか?」
「気付かぬか? ヒルデスの名で、冒険者ギルドはアルシッドク皇国・皇王に対し書簡を送ったのだろう? それにはなんと書いてあったか覚えていないのか?」
「それは……、まだロートが虚偽の報告をしたと判っていなかった時期に、ギルド職員が出したものであり、ヒルデス殿は関与しておりません」
「そうか……。だが、それだとその職員が勝手にヒルデスの名前を騙ったことになるのではないか? ではその者もここにつれてくるべきではなかったのか?」
目を眇め国王が問えば、バーリンは汗を拭うばかりで答えることはできないようだった。そして、ついにヒルデスが言い訳をする。
「それもまた、ロートの仕業です! 本人が自白しております」
ヒルデスの言葉に、私はニヤリと笑みを浮かべる。宰相ノービスもまたほくそ笑んだのだった。
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