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竜達の愛娘  作者: ao
第二章 ―冒険者ギルド編―
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トモダチ・・・噂話

/シュベル


 ウィリアの入園の式典の後、色々と込み入った話にはなったが、概ねなんとかなる目処が立った。グリンヒルデ王国に関しては、今のところ、この国に何かをしかけているわけではないと言う事で、当面は様子見することとなった。


 あの日、帰宅したのは、いつもは就寝している時間だったこともあり、そのまま解散となったが、ウィリアと添い寝をしようと部屋へ向った私を、アルミスが止めた。「何故?」と聞いた私に彼女は「男女がひとつのベットで寝るのは、番になってからにしてください!」と言われてしまった。公に、思いあっていることがばれてしまった手前、反論できず。その日から同じ部屋ではあるが、別々のベットで眠ることとなった。


 そんな感じで、ウィリア入園2日目の今日、私・アルミス・ベルンの3人は、講師準備室にてウィリアに虫が付かないかを観察している。今は、基本強化の歴史の時間だ。


 アルシッドク皇国が、建国されたのは約9500年ほど前だ。その当時この国は、この大陸全土が領土となっていた。今では、その領土は小さくなり、複数の国が存在している。初代王竜と盟約を交わしたとされる国王とは、現皇王の祖先にあたる。

 ウィリアの授業風景を眺め、私の持つ歴史の知識を確認すると、そんなことが浮かんできた。


 授業終わりの鐘がなり、講師が教室を後にすると生徒達の声が聞こえはじめた。羊皮紙に黒板に書かれた内容を、書き終えたウィリアに声をかけてきた女性徒がいた。


「あの、ハーナスさん。先程の授業の羊皮紙、よろしければ見せていただけませんか?」


「はい。どうぞ」


 ウィリアは、素直に羊皮紙を見せた。声をかけた女性徒は、くすりと笑う。


「ありがとうございます。お優しいのですね」


 ウィリアは、不思議そうな顔で彼女を見つめた。


「あぁ、申し遅れましたわ。私、ジェシカ・マルセ・ユーフェリテと申しますわ」


 ジェシカは自己紹介すると、立ち上がり軽く淑女の礼をする。


「ウィスユリア・ハーナスです。よろしくお願いします」


 ウィリアも、立ち上がり淑女の礼を返し、2人で笑い合う。

 

 ジェシカ・マルセ・ユーフェリテは、この国のユーフェリテ侯爵家の娘だと、本人が言っていた。彼女は、侯爵家では3人目の娘で、学園に、2番目の姉と3番目の兄がいると言っていた。

 趣味は、刺繍をすることにしていると話、本当は、冒険者になってみたいと話している。他にも、クラスの誰がどこの家の人間かなど、色々な情報をウィリアに教えていた。面白い娘である。


「あのね、ジェシカさん」


 ウィリアが、恥ずかしそうにモジモジしつつ ジェシカに声をかけた。


「はい?」


「私と良かったら、お友達になってくれませんか?」


 頬を少しだけ赤くする。ジェシカは満面の笑みを浮かべて。


「もちろんですわ! 私のことはジェシーと呼んでくださいませ」

 

 彼女の声に、ウィリアも嬉しそうに微笑みを返す。


「本当! 嬉しい。私のことは、ウィリアって呼んで欲しいな」


「では、ウィリア。今日からよろしくおねがしますね」


「こちらこそ、よろしくね。ジェシー」


 2人は、微笑みあうと握手を交わした。授業開始の鐘が鳴ったのは、直ぐのことだった。


 2時間目・3時間目と授業は進み、昼休みとなった。昼は、どうするのかウィリアに思念を飛ばす。するとウィリアは、食堂に行ってみたいと伝えてきた。ならば一緒にいこうと誘い食堂入り口で待ち合わせすることになった。

 

 食堂入り口に着くと、まだウィリアは着ていないようで、邪魔になるかもしれないからと、ベルンの提案で、食堂の入り口から少し離れたところで待つことになった。


 多くの生徒が食堂を利用しようと、入り口を通る。その中に見知った女性徒が姿を現した。焦げ茶色髪、茶色の瞳を持った、スレンダーな体躯に制服が良く合っているその女性徒は、私たちに気付くと軽く会釈をすると、キョロキョロと見回し、別の誰かを探しているような仕草を見せた。

 くすりと笑い、私はその女性徒に教えてやる。


「リーシャ、ウィリアならまだ来ていないぞ」


 そう言うと、彼女は少し恥ずかしげに微笑むと、私たちから少し離れた場所に立ち、生徒が来る方向に顔を向け、ウィリアを待つようだった。

 多くの生徒が食堂へ向う集団の中に、紫苑色の髪が靡いたのが見えた。


「ウィリア」


 そう呼べば、彼女も気付いたらしく、集団から抜けだし此方へ歩を進める。ウィリアの視界にリーシャが入ったのだろう。嬉しそうに笑うと、リーシャのところで足を止め楽しそうに会話していた。私たちは、肩を竦め笑い合うと、リーシャとウィリアを誘い食堂の中へと入った。


 2人の会話は、尽きることが無いのだろうか? 止まることなく話続ける2人の少女に、少しの呆れをまぜ先へ進むように促せば、歩を進めつつ話をしている。器用なことだ……。


 食堂は、自分の好きな物を、既に盛り付けされた皿ごと取るシステムになっている。今日のメニューと言うもの自体が存在していないようだった。私たちも好きなものをとると、空いていた席についた。


 手を合わせ「いただきます」と食事の前の感謝をして、食べはじめる。この食堂の料理は、質より量なのだろう、肉はパサつき、味は旨いとは言えない……。こんなものを周りの生徒たちは、旨いと言っている。非常に哀れに思えてきた。ウィリアも同意権なのか、食事があまり進んでいないようだった。


「そう言えば、ウィリアはご存知ですか?」


 リーシャの言葉にウィリアが首をかしげている。


「何を?」


 真面目な顔をしたリーシャは話はじめる。


「カシールの森と言う、魔獣の森が最近、怪しく光るらしいのです! 調査に赴いた者たちもいるらしいのですが、誰も戻っては来なかったそうですの!」


 人さし指を立て、机に胸を押し付けて語るリーシャに、ウィリアも真剣に聞き入っていた。その森と言うのは、昨日、私が飛んだ森だろうか? あそこに居たのは冒険者だけだからな、そこではないのだろう。そう考え、リーシャの話に耳を傾けた。


「そこで、近隣の村は、冒険者の方を雇い、捜索を依頼したそうですわ。冒険者の数人が、その森を調査して帰って来たらしいのですが、皆口をそろえて、覚えていないと言ったそうですわ! 私のクラスでは、今その噂話が流行っていましてよ」


「そうなんだ。どうして忘れちゃうのかな? 忘却の魔法でも使われたのかな?」


 こめかみに指を押し当て、考えているウィリアにリーシャが可笑しそうに笑う。


「ふふっ。ウィリアは真面目に考え過ぎですわ! こう言うお話は、話半分で聞かないと騙されてしまいますわよ」


 そう言うと、立てていた人差し指で、ウィリアの額をチョンと押す。ウィリアはムッとした様子で、額を掌で押さえると


「リーシャのいじわる!!」


 ぷぅっと頬を膨らませ見つめ合うと、ふふふっと楽しそうに笑っていた。


「あら、ウィリアは、もう食べませんの?」


「うん。もうお腹いっぱいなの。リーシャもあんまり減ってないよね」


 眉根を寄せた、リーシャは小声になると


「こう言っては失礼になりますが、ここの料理は美味しくありませんもの……」


「うん。ウィリアもそう思う」


「ふふふっ。ウィリアなら分ってくれると思ってましたわ! 舌馬鹿のお兄様にはわかっていただけませんでしたが……」


 呆れた顔を見せ、肩をすくめて見せた。


 2人の会話を聞いていた私へ、いやに真剣な声のベルンの思念が割り込んできた。


《シュベル様、先程のリーシャ嬢の話、こちらでも調べてみた方がよろしいかと……》


《理由は?》


《森の名前に見覚えがあります。叙爵の際貰った地図にその名が入ってたように思います》


《わかった。ジオールに、その森には他の竜を近付けるなと注意するように伝えてくれ》


《はっ!》


 人の記憶が消える森か……。私が、貰った範囲にもいくつか森が含まれていたな……魔力操作の授業用の魔道具といい、グリンヒルデ王国といい、色々重なりすぎる気がするな、こういう時は昔から良くないことが起きる。気を付けておくべきだろうな――。

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