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竜達の愛娘  作者: ao
第二章 ―冒険者ギルド編―
50/108

歴史・・・バレマシタ④

④ すみません。かなり長くなりました。

 お読みいただきありがとうございます。評価・ブックマークをしていただきありがとうございます。もし、お時間があり書いてもいいなと思われる奇特な方がいらっしゃいましたら、感想をいただけると嬉しいです。

/シュベル


 デイハの怒りは尤もであり、それを否定できるだけの言葉はない。長年、長として南をまとめてきた分、その憎しみ・悲しみ・苦しみは、計り知れない。人族の勝手な理由で、殺されてきた南の竜たちにとってこの情報は、報復にでるために最高の情報であったのは間違いない。

 

 私は、デイハに確認しなければならないことがある。怒りで涙を流す彼に、出来る限り優しい声音を出すことを忘れずに


「デイハ。南の長としてお前はどうしたい?」


 ピクっと肩を震わせた、デイハは私のほうへ物悲しい顔を見せ、目を伏せた。


「私は……私たちは、人への復讐はやめたのです。それは、南の総意です……。ですが」


 涙が一粒こぼれ落ちた。


「ですが、私は憎い! 私の家族を殺した人族が憎いです!! シュベル様――」


 悲痛な声だった。私は、堪らずデイハを胸に抱え込むように抱きしめた。デイハの目が大きく見開かれた、誰かに縋るなことができない彼の苦しみが少しでも和らぐように、何度もその背を撫でた。


「デイハ。私はお前を誇りに思うぞ。今まで良く耐えてくれた。今すぐとは行かないが、必ずお前達の敵は討つと約束しよう!!」


 在り来たりな言葉しか、言えない私をどうか許して欲しい。


 どれぐらいの時間、そうしていたのかは分らない。ただ、デイハを慰めるだけの時間はあったようだった。デイハも落ち着き、これからの事について皇王たちと、魔力操作についての話をしようと思う。


「すまなかったな。時間を取らせた。先程も言ったことではあるが、あの国の王子に対する魔力操作の対策を考えて欲しい」


 私の言葉を受け、宰相がいくつか提案をしてくれた。


「まず、魔力操作に関してですが、魔法師団の団員に関してはこちらで、口外しないよう徹底いたしましょう」


 宰相が、次にと言いかけたところで、ウィリアから思念が届いた。


《シュベルお父様? 今、お話してもよろしいですか?》


 私は、片手をあげ、宰相に少し待ってもらうことにした。


「ウィリアからだ。魔道具を頼んでいた」


《あぁ、いいよ》


《魔道具が出来上がりました。どうしたらいいでしょう?》


《カシをそちらに送る》


《はい》


 私は、後ろを振り向きカシへ頼むと伝えた。カシは頷くと直ぐに消え、ウィリアをつれて戻ってきた。戻ってきたウィリアは、皇王たちがいたことで、居住まいを正し淑女の礼をした。


 私とデイハの間の隙間を、ポンポンと叩きウィリアを隣に座らせると魔道具を見せてもらった。それは、小さなメダルの形をしている、表面には、ミルリル銀を埋め込んだ青白に光る五芒星があり、その中央部分に形を合わせた魔石がはめ込まれ、5つの星の角にも小さな魔石が埋め込まれている。一見すれば、それは勲章にも見えた。


「これが、さっき私が頼んだ魔道具?」


 ウィリアは、ニッコリ笑い頷くと肯定した。


「はい」


 皆が食ういるように魔道具を手にとり見ている。そこでウィリアが説明してくれた。


「まず、魔道具の中央部分に、忘れたい事を魔法で入れます。さっきお父様が言っていたのは、この部屋でお菓子を食べた事でしたよね?」


 ウィリアの声に私は頷いた。


「では、それを魔法:物語記憶(エプルメモリー)を使ってあるので、血を1滴垂らして、思うだけで大丈夫です」


「なるほど、それで?」


 宰相が、先を促す。


「他は特にないですよ。つけるだけです。あとは魔道具が勝手に仕事してくれます」


「それだけ?」


「はい」


 ニコニコと笑顔が答えるウィリアに、私たち大人は拍子抜けである。


「詳しい話は後で聞くとして、さっそく効果をためしてみようではないか!」


 ノリノリで皇王が、魔道具に血を流そうとしている。危機感がないにも程があるぞ! とは言えなかった。


「とにかく、一度試してみよう。そうだな、私が実験台になろう。ウィリア私が、この魔道具をとりつけたら、何んでもいいからお菓子をだしてくれ」


 私の言葉にウィリアは頷いてくれた。私は、自分の爪で指先に傷をつけると血を魔石に流した。血が魔石に触れると、淡い光を発し青白いミスリル銀の五芒星が、金色に変わっていた。

 中央にある魔石に触れ、『この部屋に居る間に食べたお菓子の記憶』と思い、魔石が再度光ったのを確認して、自身の胸ポケットに入れた。


 その様子を見ていたウィリアが、チョコマフィンを取り出し、紅茶と共に皆で食べる事にした。チョコマフィンは、少しほろ苦く、生地の甘さが相まって非常に美味しかった。出されたコーヒーと良く合いっている。

 

「しかし、本当にそんなことができるのでしょうか?」


 デイハの言葉に、皆も頷いていた。作ったウィリアが、ぷぅ~と両頬を栗鼠のように膨らませている。その顔が非常に可愛く、皆もほっこりしているようだった。


「信じているよ。ウィリアならできる」


 私の言葉に、膨らんだ頬が鳴りを潜め、花がさくように笑顔へと変わる。私は、そんなウィリアの頭を撫で、コーヒーを飲み干すと、立ち上がり扉へと向う。共に席を立ち付いて来たベルンにメダルを預け、扉をでる。特に変わったことは無い。


 そこへ、一緒に出てきたベルンが、扉を開けたまま私へ聞いてきた。


「シュベル様。先程、召し上がったお菓子はなんですか?」


「それは……」


 つい、先程食べた物が思い出せない。頭の中で魔道具へ血を垂らし、胸ポケットに入れたこと、その後ウィリアが、確かに皿を取り出した。コーヒーと一緒に食べた。だが……何を食べたのかを思い出せない。


 様子を見守るベルンに、私は首を振る。他の皆も気になったのか扉の側まで来ている。


「だめだ、お菓子だけが思い出せない。コーヒーを飲んだことや、話した内容は思い出せるのに!!」


 皆の顔に喜色が表れる。

 その後、室内へ戻り、何を食べたのかを思い出せない私に、ベルンからメダルを手渡された。この場にいた皆が、喉をならし私を凝視している。そのメダルに触れた途端、記憶がよみがえった。


「チョコマフィンだったな。食べた物は――」


「はい。その通りです」


 ハイタッチを交わし、喜びを露にする学長たち。安堵の色を見せた皇王たち。ウィリアを撫で回す竜たちとさまざまな反応ではあるが、成功したと言う事なのだろう。

 喜ぶ皆を前に、私は改めて話しを再開する。


「喜んでいるところ、すまないとは思うが話しを続けたい。まずウィリア、この魔道具についての説明を頼んでいいかな?」


「まず、この中央の魔石に、物語記憶を入れたのは知ってますね。上から時計周りに、契約、場所、指定、忘却、回顧の魔法がそれぞれ小さい魔石に入ってます。それを、ミルリル銀で繋ぐことで、全ての魔法が作用するようになっています」


 チョコマフィンをハムハム食べる、ウィリアの頭をなでた。


「なるほどな、ウィリアは凄く考えてくれたんだな。当面はウィリアの作ってくれた魔道具で凌げるとは思うが、これを人数分用意するとなると骨が折れるな」


 私の言葉に、ウィリアは嬉しそうに胸を張った。


「確かに、そうですなぁ。ウィリア様にだけ負担をかける事になりますしのぅ」

ジオールが、そう言うとウィリアは、首をかしげ


「ジオールお爺様?別に負担にはなりませんよ?」

 

 また、おかしなことを言うと、魔法:個人箱から新たな魔道具を取り出す


「シュベルお父様はご存知かと思いますが、物は複製できるのです。ですから、これも複製できますよ?」


 そう言って、笑いかけるとウィリアの手の中にある魔道具が、白い光に包まれる。光が収まると、1つしかなかったはずの魔道具が、3つに増えていた。


「どうやったのだ? 魔石は複製できないだろう?」


 私の疑問は、皆もよく理解できている。魔石とは、魔獣の中にまれに生成される魔力の固まりである。それを複製する事は、誰にもできないはずだった。


「魔石は、魔力の固まりですよね?」


「あぁ。そうだ」


「魔力は、この世界に流れる粒子であり、魔石はその魔力を魔獣が体内い集めたものと考えればできますよ?」


 そう言う事か、ウィリアが言いたいのは、魔力を使う事にできない魔獣は、長い年月をかけてその体内に魔石として魔力を貯める。それをウィリアは、魔法を使う事によって作り出している。と言うことなのだろう。


「そう言うことか、だがこれを100以上作るのは流石にきついのではないか?」


 私の疑問に、ウィリアはうーん。と考えるように頷くと


「指定解除みたいな魔法ができれば、数十個あれば使いまわしできると思いますけど――」


「魔法を作ることができないということか?」


「はい。この魔道具には6個の魔法を使っているので、下手な解除魔法を使って消してしまうと、他の魔法が機能しなくなる可能性があるので難しいですね」


「なるほど。これは私たちにも作ることができそうか?」


 そう聞けば、ウィリアは首を横に振った。


「無理です。これに関しては、その必要な知識があるので……」


 ミスティ様の知識が必要と言うことか。そう私は納得する。


「とりあえず、複製できるだけするしかないな」


 私がそう言うと、宰相が手をあげ発言する。


「複製したとして、それが誰の者かわからなければ、困るのではありませんか?」


 そこは、ウィリアも考えていたらしくメダルの裏を見せると


「裏に名前が、自動で入るので問題ないと思います。保管に関しては、シュベルお父様たちは、魔法:個人箱がありますから盗まれる心配もありません」


 皆が頷き、魔道具の件はこれで終わりとなった。

 次の話に進もうと口を開きかけた私に、宰相が申し訳なさそうな顔を見せ口を開いた。


「シュベル様、ウィリア様、大変恐縮ではありますが、お願いがございます」


「なんだ?」


「はい。その先程、魔法師団の件についてのお話をさせていただいた。と思いますが、その……魔法師団にも、その魔道具を融通して頂けませんでしょうか? もちろん! ただでとは申しません。

 出来うる限りご協力いたしますし、お望みの物があればこちらで手配もいたします。ですからどうかお願いできませんでしょうか?」


 皇王と共に2人して頭を下げてきた。


「聞くが……。魔法師団の総数は何人だ?」


「そうですね、1300名ほどになります」


 1300人分、と言っても予備を含めれば約2000個にはなるだろう。その数の魔道具を用意するとなれば、魔力がどれほど必要になるか――。そう思い固まる私に、ウィリアの声が聞こえた。


「時間はかかりますけど、それでもいいならウィリアは作りますよ」


 ウィリアは、平然とそう言った。まぁ、作る本人が許可を出すのであれば、私たちが反対するのもおかしな話だ。


「いいらしい。とりあえず魔道具ができるまでは、全ての訓練を中止とする。理由は言わなくてもわかるだろう?」


 私の言葉に、皇王はじめ皆が頷いた。

 アルミスが、ウィリアに質問する。


「ウィリア様、大変ではございませんか? 4000個も用意しなければならないのですよ?」


 アルミスの心配が嬉しかったのか、んふっと笑って


「大丈夫です! 魔道具を作るのは大変だけど、これがあれば、家族を守れるでしょ?」


 ここで言う、家族とは私たちのことだろう。ウィリアの優しさが私たちの心を満たしていく。アル

ミスがウィリアを抱きしめ、何度もありがとうと言っていた。


 私も、アルミスに抱かれたウィリアに心からの礼を言った。

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