歴史・・・バレマシタ③
③
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/シュベル
ウィリアが魔道具を作り終わり、連絡をくれるまでにやらなければならないことがある。それは、デイハにウィリアが語った、グリンヒルデ王国の事を話すことだ。いざ話すとなれば、学長たちが邪魔だなと思っていたのだが、ベルンの思念でそれが解決された。
《シュベル様、皇王と宰相がこちらにつくようです》
《今日、呼んだのか?》
《先程、思念を飛ばしたのですが、グリンヒルデの名前を出したとたん直ぐに、こちらに来ると言い出しまして、もう直ぐ到着するかと思われます》
《そうか、ならばデイハと一緒に話を聞いてもらった方がいいな》
《はい》
皇王達が来る事を、学長たちにはなすべきだろうな。そう思い、口を開こうとした私の前に、複数の料理が置かれていく。誰が置いたのかと見れば、カシが魔法:個人箱から出して置いていた。私の視線に気付いたカシは、微笑みを浮かべ
「ウィリア様が、持たせて下さったのですよ」
「そうか」
「デイハ様を待つ間、時間がありましたから、皆もお腹が空く頃だろうと作れるだけ作ってくださいました」
ありがたいことだ。ウィリアのこう言うところが、好ましいのだ。自分が、どんな状況にあろうとも、他の者を思いやれる心を持っている。
「では、ウィリアに感謝していただくとしよう」
竜の皆が、手を合わせ「いただきます」と声を出すとフォークやスプーンを使って食事をはじめた。学長たちにも、料理を進めた。
「そうだ、ニルク学長。もう直ぐ皇王と宰相がこちらに来ることになっている。手間をかけさせるが、よろしく頼む」
ウィリアの作った、肉団子を頬張る。学長に私は、皇王達のことを頼んだ。口一杯に肉団子を入れた状態で、学長が目を見開いた、何か言いたそうにもごもごしている。なんとなく、言いたい事が予想できた私は、彼の知りたいであろうことを説明することにした。
「まぁ、今回のグリンヒルデ王国の件だ。皇王も宰相も知らなかったではすまんだろう? それに彼らのことについては、私も友誼を交わした相手として伝えるべきことは、伝えておかなければならないしな。
そんな訳で、彼等に後日時間を作ってもらおうとしたのだが、今日の方が時間の都合が良かったらしい」
「あぬぼとぅ」
学長は、何度か頷くと他の料理を食べはじめた。
「その調子で、わしの質問にも答えていただけますかな? シュベル様」
ジオールが、小皿に料理を移しながら言う。
「なんだ? 聞きたいことでもあるのか?」
この時の私は、既に先程、暴露する形になった思念でのやり取りを忘れていた。ジオールがニヤっと凶悪な笑いを浮かべているのに気付かず、私は肉団子を頬張った。
「先程の思念の会話についてです。いつからウィリア様にシュベル様と呼ばせておいでなのでしょうか?」
口の中に入った、肉団子が勢い良く正面に座る、副学長へと飛んで行った。
「なっ、なななんのことだろっか?」
視線は彷徨い、心臓は今にも握りつぶされそうなほど痛い。動揺しているのが、自分でも理解できた。
「なんのこと? 先程の思念のことですじゃ」
ジオールの手が、私の頭蓋骨を鷲掴み、徐々に指先が食い込んでくる。
「それでしたら、叙爵される前ですよ。皇王に魔石を頼まれた日から数日後ですね」
ベルンが余計なことを言うから!! 指先がかなり食い込んでいるではないかっ!!
「ほぅ……」
「ジオール、流石にもう……割れそうなんだが……」
ミシっと言う音が、聞こえる――私の頭から!!
「それで? ウィリア様にどこまで不埒な真似をしたのですか?」
皆の視線を感じる、私のことを一切信用していないのだな。コイツ等は!!
「そんなこと、するわけがないだろう! ウィリアはまだ、11なんだぞ?」
「あら~。ではシュベル様はもし今夜、ウィリア様から、キスをして欲しいとか望まれてもしないと仰るのですね?」
「キスか……」
もし、ウィリアが憂いた表情で私を見上げ『シュベル様、キスして』なんて言ったら、確実にしてしまうな。ウィリアの唇は柔らかそうだったな――。
アルミスの言葉に、妄想を膨らませる私の量肩にガシっと音が鳴ってもおかしくない程、強靭な指がめり込んできた。
「シュベル様、何を考えていらっしゃったのでしょうか?」
笑みを浮かべる、カシの目が汚物でもみるような目になっていた。
「あ、それはだな……」
そこへ、ノックの音と共に皇王と宰相が、扉を通って現れた。私の姿を見た2人は思いっきり視線を逸らすと、用意された新たなソファーへと座った。
「それで?」
カシが、しつこい! 私は、ついに切れた。
「お前たち、いい加減にしろよ? 別に問題はないだろう? ウィリアも私も番が居るわけじゃないい! それにウィリアとは、手を繋ぐだけだ! それ以上は何も無い! それとも何か? ウィリアに私はお前と一緒に居られない。他に恋人を作れと言えばいいのか?」
肩に乗っていた指を外し、ジオールの手を弾くと、私は怒りの視線を皆に送った。
「シュベル様、落ち着いて下さい。皆も、少し落ち着け」
唯一傍観に徹していた、デイハが私を宥める。
「すまんな。少し頭を冷やしたいから上に行ってくる。戻るまで待っててくれ」
そう告げると、私は空魔法を使い塒へ移動した。
竜体になり空を飛んだ。久しぶりに舞う空は、変わらず美しい。煌く夜空を独り占めしたようで、荒んだ心が洗われていく――。
夜と言う事もあり、いつもは行かない森へと飛んでみることにした。森に近付くにつれ木々の間に複数の火が灯っているのが見えた。その周辺から、嫌な感じがした。この高さではまずいかもしれないな、そう思い高度をあげた。
眼下に見えたその光景は、森の中に、かなりの数の焚き火があり、その間に天幕が張られている。天幕の側には、冒険者と思われる鎧やローブを着た者達がいた。冒険者と判断した理由については、鎧などがバラバラだったからだ。
こんな場所で野営か……。皆に注意させておく必要があるな。密猟者の可能性を思い至らなかった私は、その場を後にし、空の散歩を終えたのだった。その後、人化すると空魔法で学長室に戻ったのだ。
私が室内に戻ると、ジオール達がしょぼくれた顔で謝罪してきた。どうやらデイハに諭されたようだ。今後、必要なことは報告すると言うことで話は終わった。
全員揃ったと言うことで、私はウィリアから聞いた、グリンヒルデ王国について話しをする。
「まず、前置きさせてもらうが、何故これから話す内容を、我らが知っているのかについては言及は避けてもらいたい。それに関して、我らは答えることができない。それを了承する者だけ、ここに残って欲しい」
実際、ウィリアの名前を出すことはできない。それが、皇王や宰相であったとしても……。あの子が神に愛されていると知れば、そこにどんな危険が及ぶか想像に容易い。
皇王たちの様子をみていた、学長たちも彼らが頷いたのを確認し、頷く。全員の意思の確認が取れたところで、今回知りえた情報を話す。
「この学園に、グリンヒルデ王国第2王子が居ること、皇王と宰相は知っているな?」
2人が頷く。
「その王子が、今日演習場にやってきた。この国とグリンヒルデは親しい関係にあることも言っていた。そこで自国にも魔力操作の内容を伝えたいこと、講師を勧誘したいことなどを学長に告げていた。学長が断ると、この国の魔導師団で講義を行っていることも知っていた。
グリンヒルデ王国が、元デスピア王国に一方的に戦争を仕掛け、国土を増やした。そして元デスピア王国は、デスピア領となった。ここまでは皆も知っているはずだ。問題はその後だ!」
私は、一度そこで言葉をきる。ふぅ~と息を吐き出し続けることにした。
「グリンヒルデ王国から来た、デスピア領主(グリンヒルデ王国・第3王弟)は、税金が払えない住民は、竜を狩りその死骸を献上すれば免税すると、デスピア領内の住民に公言したそうだ。
そしてその狩られた竜たちこそ、今ここにいる、デイハがまとめる南の竜たちだったのだ」
デイハの目が、はち切れんばかりに見開かれている。皇王たちもまた、その情報を知らなかったようで、痛ましそうに目を閉じ閉口していた。
「そっ……それは真の話でしょうか?」
震える声で、デイハが確認してくる。私は、デイハの肩に手を置き何度か擦ると
「事実だ」
怒りの篭ったデイハの瞳から雫がこぼれ落ちた――。




