ミルクと決闘
拙い文章を読んで頂きありがとうございます。
後、2話位かかりそうですが、基本プロローグだと思っていただければ幸いです・・・。
毎日少しずつ書いていく感じになるので、短いと思うかもしれませんが最後までお付き合い下さい。
嬉しそうな赤子の様子に、赤子を見つめる者達もどこかほっこりしているそんな反応をみやり、ほっと一息ついた。何故だろうか、たった数時間という時間なのだが赤子と共に居る事で、人族への憎しみが少しずつ薄れているように感じる。
今度は餌の時間である。
人は、上位階級の者になればなるほど乳母というものがいるらしいのだが……。ここで、それを用意するのは無理だと分かりきっていた。
だからこそ、餌入れを魔法で用意する。
餌の入れ物(ココナッツの様な容器の中に細い木の皮で作られた突起があり、外には布が巻いてある。)の中身は空だ。
一度手に取り観察する、先程の水浴びで泣かせてしまった為、今回は事前に人の知識を探る。
まずは、赤子を腕に抱き上げ首と身体を固定する事、それから、餌入れに魔力を流し、布部分を赤子の口元に持っていく事か。
飲み終わったら、肩口にあげて、背を優しく叩き空気を抜くようだ。魔力を流す事で、餌入れに赤子に必要な乳が溜まるのだな。よし、今回は失敗して泣かせぬようにしよう!!
赤子を抱き上げ口元に餌入れを近づけ、先端を唇に当ててやると、赤子はそれが自分の餌である事を知っているかのように先端に吸い付き腹を満たしていく。
ひとしきり、乳を吸い腹が膨らんだのか、赤子は吸い口から口を離し私に向け、「あー、う~」などと言葉を発する。
その姿のなんと愛らしいことか!! 竜とて、情はあるのだ。卵を温め生まれたばかりの子竜に餌を与え、身繕いなどもする。それを考えれば見守る竜達のあの子に向けるような視線も理解できた。
その姿を見守る竜達もまた口々に
「なんと、可愛いものだ……赤子とはまことに可愛らしいモノなのですな」
「乳を飲む姿もいいが、先程の水浴び後の笑った顔も良かったな!」
「――イィ!!!!」
「……」
一部首を傾げる反応もあるにはあるが、概ね皆に受け入れられたようだな。うんうん、と首を縦に振りつつ皆の反応に肯定を示す。
そこへ、1匹の青よりの黒竜が上空を旋回し近くの岩場に着地する。着地後、こちらを向き頭を下げた。
「面をあげよ」
「王竜シュベル様、お久しぶりでございますじゃ」
「久しいな、ジオール」
「はい。お元気そうなお姿拝見できこのじじぃも安心いたしました」
「うむ、ジオールも元気そうでなによりだ!ところで、今日はどうした? いつもは数十年は塒で過ごすはずのお前がここにくるとは――もうそんな時期だったか?」
このジオールは、シュベルの教育係の様なもので、前王竜が身罷りその役目を辞去し、ここ1000年ほどは、数十年塒で眠り起きてシュベルの元へ飛んできて話し、話に飽きるとまた塒に帰り眠りにつく事を繰り返していた。元気な姿が見れるのは良いとして、前回の訪問からまだ数えて数年しか経っておらず不思議に思いたずねたのだ。
「いえ、何やら神気を感じましてな、それでもしや何か王竜シュベル様にあったのではないかと心配になり訪ねた次第でございます」
「そうか」
ジオールの視線が、シュベルの腕の中で今も舌ったらずに「うぅ~、キャッキャ」などと言っている赤子に留まる。その視線が、赤子からシュベルへと移動、また赤子へ戻り周囲を見渡し、近くに控えたアルミスを捉えた。
「……」
「……」
アルミスとジオールが無言で視線を交わし、またシュベルへと戻した。
その顔色は、明らかに蒼白(どちらかと言えば白っぽい)になり、巨体を震わせ打ちひしがれた。
ジオールが掠れた声で呟くように
「ボソボソボソ……」
「ジオール!」
「……ナッ……コン……」
独り言をボソボソと言うジオールに声をかけてみる。
これはマズイ! 何がどうなって――こんな状況に!! 焦って周りをみれば、自分の後ろに控えるアルミスが視界に入る。……まっまさか!! 嫌な予感……この感じは、まだ年若いころに経験した、言い訳をさせてもらえず昼夜問わず3日間説教をされた時の感覚によくにている!! これはまずいのではないか? どうにかして、抑えねば3日では済みそうにない説教の予感!
「ジッ……ジオール???」
その声量は徐々に大きくなり、何度も何度も尻尾を地に叩きつけ嘆く様子
「わっわしの教……育が間違っていたのでございましょうかぁぁ!! まっまさか、人間にお手をつけるとは何事かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いやいやいやいやいやいやいや!!」
必死に両手と首を振り、ジオールの言葉を否定する。顔をあげたジオールの顔面が、憤怒に染まっている、この状態ではまったく聞いてもらえる気がしない。
「聞け、て言うか、聞いてください!! ジオール、落ち着けお前の勘違いだ」
「前王竜様にお仕えした、私をそのような戯言で騙せるとでも御思いかぁぁぁ!!」
「いやいやいやいや、騙してない、騙してません! 聞いて! 取り敢えず話を聞いて、ジオじぃ!!」
「言い訳無用じゃぁぁぁぁぁ!! この馬鹿もんがぁぁ!」
「ちょーーーーーーーーーーー」
「焦りのあまり、王竜形無し……ぷっ……」
「何か言ったか……アルミス?」
「イエ、ナニモ! 来ます!! 赤子をこちらに御預かりいたしましょう! ジオール様のあの状態では赤子が危険になるやもしれませんからね! ふふふっ」
一瞥したシュベルに、ニッコリ微笑み、アルミスが赤子を受け取り避難しようとする。そんな私たちのやり取りをみた、ジオールは更に顔を赤くし大きな声で叫ぶ。
「やはり! やはり! あのメスガタブラカシタノダナ!」
「ちょっとまっ……って、ジオール片言になってるよ! アルミス」
「……」
アルミスに助けを求めるように見れば、そっと視線をはずし、無言を貫かれた。
ついに、怒り心頭のジオールが動く――!! それに合わせるように、赤子を連れたアルミナに直ぐに離れるよう言い、魔法:解除を唱え竜体になると上空へと飛翔する。巨体を持つ2体の竜が、翼を広げはためかせ、互いに一定の距離を保ち滞空する。
どこからともなく、一陣の風が吹きぬけた……、それを合図に、互いに大きく翼を動かし飛行すると、相手へと突進する。 ドォォォン!! と爆音が鳴ると共に、前足を組み合わせ掴み、鋭い牙が並ぶ口を大きく開き、突き立て合う……。
左の肩にジオールの牙が喰いこみ肉を引き裂きにかかる。が、私も負けてはいない!! ジオールの左の首筋に牙を食い込ませ、その肉を引き裂くよう力を込める。互いの攻撃に、赤い血が染み出し滲んでいた。
ジオールが離れないよう細心の注意を払い声をかける。
「聞け! ジオール、お前は誤解している。あの赤子は、アルミスの子供ではない!」
「何を今更! アルミスなどおらんではないか! 人に誑かされた王竜などもはや王たる資格はない!」
「違う! あの赤子は、私の子ではない!」
「ならば何故、あのように世話をしているのだ! シュベル様の子であるのだろう! 今更隠せるものではない!」
フンと鼻をならし、ジオールが私と組み掴んだままの自身の前足を引き寄せる。私の巨体が徐々に引き寄せられていく。それを見計らい、尻尾で攻撃を加えてくる!!
それを防ぐため、翼を羽ばたかせジオールを掴んだまま、急旋回し上昇する。急激な、旋回後の上昇についにジオールの前足が離れた! そのまま両者バランスを崩し2体の距離が開いた。
これを機とばかりに、言葉を搾り出す。
「いいか、ジオール、よく聞けこれより私の記憶を見せる。それを見てもなお信じられぬのであれば、竜神アルバス様に聞け!」
「ふん! 記憶を見せる? 何を馬鹿なことを……」
ジオールの瞳から、視線を外すことなくシュベルは魔法:万能知識創造を使う。相手に記憶を渡せる魔法:記憶譲渡が出来上がる。記憶譲渡を詠唱し、渡したい記憶範囲を絞り、ジオールへ向け魔法を放つ。
私の額から延びた線が、ジオールの額に吸い込まれると、2体の額を細い光り輝く線が結び、線を伝い丸い球体が幾つも移動する。
魔法を受けたジオールに記憶が見えたのだろう、その顔はみるみる青くなり滞空するのも怪しいほど、フラフラと巨体を揺らしはじめた。
「こっこれは……」
「ふぅ~。やっと理解できたか?」
その様子に息を吐き出し、ジオールへ視線を向けた。ワナワナと震えはじめた彼は弱々しい声音で呟く。
「シ、シュベル様……わっ、わしは……」
「うむ! そなたも神気を感じここに来たと言っていたならば信じて欲しいのだ」
「まっ、誠に申し訳ございません。この不祥事、このジオールのいっ―― 「ならん!軽々しく命を差し出す事許さん! 」」
「しかし!!」
「ジオール、本来ならば許される事ではないだろうが、今回のことについては不問とする。その代わりお前もこの赤子の世話をする事とする!」
「はっ」
王竜の決定は、絶対でありジオールはそれを受け入れるしかなかった。
決闘が終わり、ジオールの巨体を支えゆっくりと降りる。
アルミスに抱かれた赤子を見遣れば、キャッキャと喜び手を伸ばしていた。愛らしい仕草を見せる様子に、知らず微笑んでいた。
昭和初期あたりに、竹を使った哺乳瓶があったらしいので、それをちょっと違う形で応用しています。実際とは違うのでそこはご容赦下さい・・・。
文字抜けがいくつかあったので修正しました。




