託された娘
はじめて書いた作品です。文字表現などへたくそだとは思いますが、読んでみて面白いと思っていただければ幸いです。あまり、厳しい言葉で突っつかれると、へこむのでできればオブラート30枚ぐらいに包んでいただければ……。
ルルリアルという世界にあるアルシッドク皇国の領土最北端、ゴーチ連峰と呼ばれる山々のひとつに竜の住処がある。
この時間はいつも、皆自由に飛び、狩りをしている。だが今日は違った。突然の事に、いつものように狩りに行っていた竜達が戻ってくる。
住処に光の粒が舞い降り、その光を取り囲む様に飛んでいる。光は、ゆっくりゆっくりと1匹の黒竜の元へと集まっていく。
黒竜は、頭を垂れその光を迎える。空を舞う竜達は、各々近くの地に降り同じように頭を垂れる。
光がひとつとなり、赤い髪の神官着を着た男が言の葉を紡ぐ。
『王竜シュベル・クリム・ハーナス 久しいな』
「はっ、お久しぶりにございます。竜神アルバス様」
王竜シュベル・クリム・ハーナスは、黒い鱗・金の瞳、この世界に生きるすべての竜の王である。
『うむ、おもてをあげよ』
「はい。して、本日はどのようなご用件でしょうか??」
『あぁ……、それなんだが……』
どこか言い難そうに視線を逸らした竜神アルバス様は暫く沈黙したあと
『ところで、最近そなた達竜と人との間に不仲が生じていると聞いたが、何か理由があるのか?』
話を逸らすためか? 竜と人族について聞いてきた。
「不仲……ではなく、無慈悲に我らを殺し、糧を得るような輩です。その愚かさを思い知り我らは関わるのを止めただけ……でございます」
正確にはわからないが、この世界に産まれ落ちて1500年にはなるのか?
竜種は皆、長寿で身体は頑丈だ。強い魔力を持つことも知られている。
他の言葉を話す種族と同じように、魔獣を狩って食している。
嫌っていようとも、他種族に対し、こちらから手を出したりはしない。まぁ、あちらが攻撃しない限りではあるが……。
だが、他種族は違う。我らが何もして来ないと分かれば、言葉が通じない魔獣と同じだと決め付け、欲望のまま我らを狩ろうとする。そんな多種族の中で最も攻撃的なのが人族なのだ。
奴らにとって我らは私利私欲の道具に過ぎない……。身体を覆う鱗はどんな宝石より魅力があり、魔道具や飾りに加工される。その血は病を治す薬の材料だと言い伝えられ、肉は最上の食材とされ、骨は加工され多くの武器になる……。
この1500年、何度も塒を追われ、多くの同族が無残に殺された……。ゴーチ連峰は、翼を持たぬ者たちには到達することができない僻地であるため、ここに塒を築いたのだ。
竜神アルバス様は何故、人族との不仲などを気になさるのだ? 我らは、もうこれ以上、同族を失いたくなどない! 大切な仲間を守る為にも現在の他種族に我らは関わるべきではない。
思考を打ち切り、竜神アルバス様の顔を見詰める。
『うむ。確かにお前たち竜種は、この数百年でかなり数を減らしているな……』
「はい。ですから他種族と関わるべきではないと考えています」
『だが、このまま他種族との関わりをお前たちが止めたところで、また同じことの繰り返しになるのではないか? いずれ他種族は、ここに辿り着くだろう、そうなれば……わかるな?』
「それはっ」
確かに、竜神アルバス様の仰るとおり、いずれはここにも他種族は来るだろう。竜の身体は大きく目立つ。同族が狩に行った際、他からの攻撃による怪我をしているなんてこともあるぐらいだ!
だからと言って、今更他種族と交流する気になどなれない!!
『そこでだ、我ら神は考えた』
そう切り出した竜神アルバス様の言の葉に、策があるのかと期待を込めた視線を向けた。
視線を受けひとつ頷くと笑みを浮かべて
『そなた達は、他種族、主に人族の考えや行動が理解できないのだろう?』
「確かに、人族の考えや行動は我らには理解できません……が?」
『そうであろう!! お前たちが生き残る為には、人族と共に生きることを学ばねばならん!! よって私たち神は、この人族の子を……お前たちに育ててもらいたい!』
そう告げて、小さな籠を私の目の前に出現させる。籠を覗くと、そこに髪は紫苑色、瞳は更に濃い紫、肌は白く、可愛らしい赤子が眠っていた。
但し人族の赤子――だったのである!!
「ぇ……? ちょ………」
籠の中身を見て、言葉を失った私を余所に、竜神アルバス様はいい笑顔で何度も頷いている。
あまりのことに、思考処理が追いつかず……呆然となる。周りで頭を擡げ籠の中を見た竜たちも、顎が外れんばかりに口を開け目を見開いている……。
思考が戻り、沸騰したような感覚で、私は悪態を吐いてしまう。
なっ……何を考えているのだ、この神は!! 何故、竜種を守るため、我らが人の子を育てねばならんのだ?? 人族の行動や考えを知るため? 生き残るため? 我らの同族を殺し益を得ているばかりなのに、それを育てる? ……無理に決まっている!!
いやいや、神が仰るのだ!! 冷静になれ私!
何か目的があるのかもしれん……。そう考えるも、否定したい自分の感情が無理だと告げている。
神の考えなど理解できるわけがない。人族の赤子を育てれば分かるのか?? ……だが、この僻地でどうやって育てろと言うのか? 卵ではないのだ、これに関して育てるのに必要なものさえ分からぬのにどうしろと……。全く持って竜神アルバス様の行動の意味が分からない!
無理です!! 本当に勘弁して下さい……神様!!
「竜神アルバス様――恐れ多い事ではございますが……。ここは、僻地であり過酷です! 人族の赤子を育てるにはそれなりの環境が必要でしょう? 竜の子は生まれれば直ぐに、親から与えられた餌を自分で食します。人族の赤子は何を食べるのでしょうか? 我らには、人族の赤子を育てられるだけの知識すら無いのです……。ですから我らでは……この人族の赤子を育てることは難しいと考えます」
諦めてくれるよう、理由を並べ言葉を口にすれば……。
顎に手をあて、竜神アルバスは考え、ポンと手を打ち両手を腰に置き(仁王立ち)
『よし! では、赤子を育てるのに必要となる万物知識創造という魔法を授けよう。この魔法はそなたが持つ知識により、魔法や必要な物を全て作り出せるはずだ。それゆえ、これも必要になるだろう……人の知識を与えよう。これにより問題は全て解決する!! はっはっはっ……』
「はっ??」
高笑いする、竜神アルバス様……。
竜神アルバス様の指先が光ると丸みを帯びた形となる。それはゆっくりと移動し、私の額に吸い込まれていった。
***万物知識創造を覚えました。これにより、魔法を含み全てを作り出す事ができます***
頭の中で、知らない女性とも男性ともとれない声が聞こえた。
無事付与が終わったのを見届けた竜神アルバス様は、天へ上りながら告げる。
『では、頼むぞ! そうだ、もうひとつ伝える事があったのだ! アルシッドク皇国の王に伝えるよう既に巫女に伝えてあるが、その幼子がいずれ育ち、必要になったときは、かの国の皇王を訪ねよ。きっと、歓迎してくれるだろう!』
素敵な笑顔で2本の指を立て片手をあげた、竜神アルバス様の姿が薄れて消える。その光景を、タダタダ呆然と見送った。
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/アルバス
竜の住処から帰還したアルバスの元に、金の髪に金の瞳白いアオザイの様な恰好をした女性が声をかける。
「お帰りなさい、アルバス。首尾はいかがでしたか?」
「あぁ、ルティアか。問題ない! しかし、あのシュベルがあのような顔をするとは…クククッ」
シュベルの驚愕した顔を思い出し肩を震わせ笑うアルバスの姿を見て、ルティアと呼ばれた女神が困り顔で
「まったく、創造神であるカルミティアル様には困ったものです。異世界の娘を酔っ払って死なせてしまうなど……」
「まぁ、仕方あるまい。カルミティアル様は我らが創造主でもあるのだ、かの方の決定は絶対だ」
「そうですが……」
「彼女には、我ら神の加護がついている。竜達も悪いようにはせんだろう」
「そうですね」
同時に、溜息をもらした。
今回、何故竜王シュベルに幼子を預けたか……事の発端は創造神カルミティアル。彼女はとても酒好きで、どこどこの世界の酒がうまいと聞けば、その世界へ遊びに行き酒を飲む。
酒は好きだが強くはないため、異世界で空を気持ちよく飛んでいた際、手に持っていた杖を落としてしまった。
たまたまそこに居た女性に直撃し死なせてしまったのだ。その世界の創造主から、彼女を生き返らせることができないと聞いたカルミティアルは、こちらの世界に彼女の魂を呼び事情を説明した。
そして全てを把握した彼女は、カルミティアルの謝罪を受け入れ、こちらの世界で転生する事になったのだが、彼女を死なせてしまったカルミティアルは、彼女になんでも言って欲しいとその願いを聞きだした。
聞き出した願いについては、余りにもカルミティアル様の独自的解釈が入るため、それについての言及は避けようと思う。
結局、カルミティアル様に行って? と言われた私は、竜の住処を訪れたのである。
主神の行ったとんでもない独自解釈、それによる魔法の行使を知らない王竜シュベルに対し、2神は頭の中で手を合わせて詫びるしかなかったのである。
1話目の修正を入れさせて頂きました。文章がぐだっていた為の変更です。