三話
ミナミの村、冒険者ギルド
アリスはナツとシエラと共にギルドにいた。
「はっはっは!、見ろよ!アロボ!!、昨日はこんなに稼いだぞ!!」
一人の男ミロロが前日に稼いだ金額が表示された冒険者カードを見せる。気になったアリスはとととー!と走って行きカードに表示されている金額を覗き込んだ。
「わー!、十万ゴールド!、私が昨日稼いだのは一万ゴールドなのに!」
「はっはっは!、そうだろう!そうだろう!、・・・君は誰だ?」
「アリスだよ!」
「ヘッヘッヘ、そんなおっさんよりも俺の方が凄いぜ?アリスちゃん!見な!」
アロボはアリスに自分の冒険者カードを見せる。そこには十二万ゴールドと表示されていた。
「おお!、アロボお兄さんはおじさんより凄いね!」
「そうだろーそうだろー、おいミロロのおっさん、今日はアリスちゃんって証人もいるし俺の勝ちで良いよな!」
「くっ!、覚えておけよ!」
アロボに敗北したミロロは悔しそうな顔を見せるとクエストボードに向かい依頼を受けるとギルドから出て行った。アロボはにっしっしと嬉しそうだ。
「これいつもやってるの?」
「おう、あのおっさんは俺のライバルだからな、絶対に引けないのさ、それじゃ、俺も仕事に行く、今回は手を貸してくれてありがとよ」
「う、うん」
(私ただ気になる事聞いただけなんだけどにゃー)
アリスは去って行くアロボに手を振ると仲間達の元に戻る。
「先に言っておくがあんな感じで言い争って喧嘩をする奴らもいるから一々驚かないようにな?、ガラ良い奴もいるし悪い奴もいる、色んな奴らが仕事を探しに来る場所、それが冒険者ギルドなんだ」
「うん、あのモヒカンのおじさんとか見たら分かるよ・・・」
アリスに恐々と見られるモヒカンのおじさんは少女の視線を受けてニカッと微笑むとアリスに近付いて来て包み紙に入った飴を渡すと頭を撫でてから去って行った。
「人は見かけにはよらない、一つ覚えれたね、アリス」
「う、うん、良い人だった・・・、美味しい・・・」
モヒカンのおじさんがくれた飴はイチゴ味だった。いちごっぽいのが好きだったアリスにとってかなり美味しく感じる味である。
「人って見かけによらないから難しいだろ?」
「うん、まずは話してみるのが大切なんだね」
「お母さんもそう言ってた、沢山の人と話す事が大人になる為には必要だって、さっ、今日も依頼受けよう、そして美味しいご飯を食べる!」
貧乏エルフから食いしん坊エルフにクラスチェンジをしているシエラは美味しいご飯を食べるにはお腹を減らすべき!と言うとクエストボードの前に行く。
「俺らCランクの冒険者が今日受けれるのは薬草集めに、ゴブリン討伐に、荷物の配達、最後に鶏の卵の選別か」
ナツが今日と言ったのは、このクエストボードの依頼は毎日残ったものに加えて新しい物が追加されて追加されて行くからである。ミナミの村のような田舎町では新たに張り出される量は少ないが。大きな街に行けばそれはもう沢山の依頼が毎日張り出される。
「ゴブリンってなあに?」
「小さな人型の魔物さ、とにかく一所に集まる奴らでさ、その集まった場所が炭鉱とかの洞窟だと、気付かずに入った奴等が襲われて怪我をしたり最悪殺されたりする、だから発見したら必ず討伐しないといけないんだ」
「・・・危険な魔物なんだね」
アリスは思う、沢山の人が怪我をしないように戦える自分がゴブリンを倒そうと。
「決めた!、私、ゴブリン討伐の依頼に行く!」
「あなたならそう言うと思った、それに三万ゴールド!、レストランでご飯食べれる!!」
「すっかり食いしん坊だね、シエラ」
食に貪欲な食いしん坊エルフを見てアリスはクスクスと笑う。そしてゴブリン討伐の依頼書を取ると受付に向かい依頼を受けた。
「討伐任務は危険だ、気を引き締めて行くぞ、おー!」
「「おー!」」
アリス達はギルドを出ると町を出てミナミのキタ通りに出てその先のコモッチャ平原に出た。
コモッチャ平原
ここはコモッチャ平原、中央にコモッチャ牧場があり放牧されている沢山の牛や羊達がのんびりと草を食べている。このコモッチャ平原の東の洞穴に住み着いたゴブリン達は牛や羊達を捕らえ盗んで行く。今回の依頼は盗まれる前にゴブリンを倒し牛や羊達への被害を防ぐのが目的だ。
「ゴブリン達が隠れている洞穴に行こう、そこにいるかもしれねぇ」
「うん」
アリス達は牧場の様子を眺めながらコモッチャ平原の東に向かう。
「魔導四輪車だ、こんな近くで見たのは初めて!」
魔導四輪車、魔導炉と呼ばれるエンジンを積んだ車であり。ミナミの村にも一台だけあるのをアリスは遠くから見ていた。そしてエルフェルン王国の城に暮らしていた頃も城の最上階から出てはいけないとアリスは親や祖父母に言われており父と母が車に乗りどこか行く様子を寂しそうに城の自室から眺めるのがアリスの日常であった。その為このような近さで魔導四輪車を見るのはアリスにとって初めての事であった。
「良いよなぁ、あぁやって走ってどこにでもいけるんだ、俺もいつか欲しいよ」
ナツは魔導四輪車に憧れの視線を向ける。
「確かに、あぁやってどこにでも行けたら楽しそう、いつか買えたら私も乗せてね!」
「勿論さ」
いつか車を買ったら乗せるそう約束したアリスとナツは笑い合う。そこにシエラも加わる。
「私も乗る」
「決まってる、お前も乗せてやるさ!」
「約束」
この時の約束、それが果たされる事は・・・。
「着いた、ここが洞穴だ、誘い出すぞ」
ナツは鞄から閃光弾を取り出すと洞穴の中に放り投げた。洞穴の中に投げ込まれた閃光弾は地面に落ちると光を放ち。数秒遅れてゴブリン達が騒ぐ声が聞こえ足音がこちらに近付いて来るのが聞こえる。閃光弾を自分達の住処に投げ込んだ不届き者を殺しに来たのだ。
(なんとなく作った撒菱だけど、使ってみよう!)
木で作った筒の中に入れた木の撒菱をアリスは地面にばら撒く。不届き者を探して飛び出して来たゴブリン達は撒かれたそれを踏んでその場で飛び上がった。
「良いぞ!、動きが止まった!」
ナツは靴で撒菱を踏みしめると裸足で撒菱を踏み飛び上がったゴブリンと違い何のダメージを負わずに地面を踏みしめ。一匹のゴブリンを斬り裂き仕留めた。
「やるね」
シエラも背中に装備した杖を取り出すと得意魔法である風の魔法で二匹仕留めた。
「はぁぁ!!」
アリスはゴブリンに近付くと剣を振るう。アリスの正確な無比な斬撃はゴブリンを一撃にして仕留める。
「サンニンモ!!」
「ヤッタナ!!」
残る二匹の杖を持ったゴブリンは杖の先から炎の球を放って来た。それを見たシエラは水球を杖の先から放つと火を消した。
「ナツ!、トドメを刺すよ!」
「おうさ!」
二匹のゴブリンは続け様に火の玉を放って来る。シエラはそれを水球で防ぎ。ナツが先にゴブリンとの距離を詰め二匹まとめて斬り裂いた。
「行け!アリス!!」
「うん!、ダッシュスピアー!」
赤く光る刀身と共に前に飛び出したアリスは体を斬り裂かれ動きが止まっている一匹の胸を貫く。
「クソガァ!!」
最後の仲間をやられたゴブリンは叫びアリスに火の玉を放って来る。黒い瞳で正確に迫る火の玉の動きを予測してみせ、一振り二振り三振りと全て剣で斬り裂き潰したアリスはグッとゴブリンとの距離を詰めた。
「ソニックスマッシュ!!」
アリスはトドメとしてソニックスマッシュを放つ。ブゥンと音を鳴らしながら放たれた斬撃はゴブリンの首を刎ね。頭を失ったゴブリンは力なく倒れる。
「やったな」
「うん・・・」
アリスは自分が殺してしまったゴブリン達を悲しそうに見つめてからすぐに視線を逸らす。その瞳に涙が溜まっているのをシエラは気付いていたが何も言わなかった。
別の洞穴
「ボス、最近人間どもに何人もの仲間がやられてます、そろそろやり返しませんか?」
流暢な言葉を話すゴブリンが仲間達の仇を取ろうとゴブリンキングに申し立てる。
「ハッ、良いぜ、何人もの俺らの仲間を殺しやがった人間どもに俺らの恐ろしさを思い知らせてやろうじゃねぇか!、行くぞテメェら!!」
「「おお!!」」
ゴブリン達は向かう。自分達の仲間を何人もの殺したミナミの村に住む者達に復讐をしに。