二話、食べる吐く美味しい吐く
宿
「え・・・、ここ無料なの?」
「そうだよー!、宿代払ったらお昼とお夕飯は無料で付いてくるんだって!」
「へー」
と、冷めた反応なシエラだが目はキラキラしている物凄く目がキラキラしている。夕食が無料と言う事が余程嬉しいのか本当に目がキラキラしている。
「そ、それじゃ私は大人!だから!ステーキランチで!!」
昨日、お子様ランチを頼んでナツに思いっきり笑われたアリスはフンスと胸を張りステーキランチを頼んだ。
「お子様ランチ頼んでたお前のどこが大人だ」
「え?お子様ランチ・・・?、子供じゃんアリス」
「・・・ッー!、言わないでよぉ!ナツ!!」
島を出てから初めて出来た同い年の友達であるシエラに良い顔がしたかった非常に子供らしいアリスは。昨日はお子様ランチを食べていた事をバラしたナツの胸をポコポコと叩く。
「いて!グホッ!、んが!」
アリス本人的にはポコポコパンチだがそれなりに威力があり、ナツは確実にダメージを受けて行く。
「あれ・・・?ごめん、そんなに痛くしたつもりないんだけど・・・」
「・・・アリスちゃんは明日から加減という物の勉強をしようねー」
「ヤダ、それで?、シメラは何を食べる?」
「ステーキセットに、ハンバーグセット、それにパスタセット!!」
「ええ・・・、そんなに食べれる?」
「大丈夫!!」
「・・・本当かなぁ」
夕食を頼んだアリス達は席に座り運ばれて来るのを待つ。数分待つとこの宿の食堂の大将が全員分の料理を持って来て並べてくれた。
「アリスにシエラだっけか!、お前ら育ち盛りなんだからいっぱい食えよな!、はっはっは!」
「うん!食べるー!」
「良いねぇ!、その元気さに免じてプリンを作ってやるから待ってろ!」
「プリン!?、わーい!!」
プリンはアリスの好物の一つである。アリスは楽しみだなにゃあーと言いながら王族として教えられた綺麗すぎるナイフ捌きで肉を切るとお上品に口に含み美味しーする。
対する貧乏エルフは雑に切るとガツガツと歯で肉を千切り肉を噛む。同い年の少女なのに育ちの差でここまで違うのかと二人を見守るナツは思う。
「うっ」
それから暫くアリスとナツは楽しく話しながら、シエラは足りない栄養を取り戻すかのようにガッツガツと食べていたが突然口元を押さえた。
「シエラ?、大丈夫・・・?」
「んんー!」
アリスはそれを見てシエラの身を心配するがシエラは返事をする前に食堂から飛び出して行った。
「なんだ?」
「さぁ?」
二人は何事かと顔を見合わせ数分後、シエラが戻って来た。
「もしかしなくても吐いたのかお前・・・、飯食うだけで吐くって何日飯食ってなかったんだよ・・・」
「この村に到着するまでの一週間くらい、あと一日遅かったら死んでた、危なかった、さて頂きます」
「吐いたのにまだ食べるんだね・・・」
吐いてスッキリしたらしいシエラはまたガッツガツと幸せそうに肉を食べる。すぐに栄養が魔力に変換されているようで彼女の体からは魔力が放たれ始めた。アリスの目猫耳の毛と尻尾が魔力に反応する。
「凄いね、エルフってこんなにすぐ魔力を溜めれるんだ、尻尾の毛がチリチリするよ」
「私達エルフは魔力と魔法と共に生きる種族、だからこそすぐ魔力を回復出来るように体が出来ているの」
「ふぅん」
アリスがシエラの魔力が回復して行けば行くほどチリチリと逆立って行く自分の尻尾を楽しげに見つめていると・・・?。
「うっ!」
シメラはまた食堂から飛び出して行った。
「・・・、栄養失調が治るまではあの調子だろうな・・・」
「うん・・・」
風呂場
「はぁー、満足」
吐きながらもお腹いっぱい食べて満足したシエラは先程までの暗い表情から太陽のような明るい表情になっていた。魔力も大分回復したようだ。
「・・・」
アリスは服を脱いだシエラの胸元を確認しよしっ!とガッツポーズする。彼女も同じくペタンコだったのだ小さいのは味方なのだ大きいのは敵なのだ。でも大きいのを持っているイザベラは優しいから好きなのだ。複雑である。
「何ガッツポーズしてるの?」
いきなりガッツポーズして何も聞かれない訳がない為シエラは何事か聞いて来た。
「なんでもないにゃー」
「本当?」
「本当だよー」
二人はガララと扉を開けて風呂場に入る。そこにはこの日もイザベラがいた。今回は先に髪と体を洗ったようだ。その証拠に髪が濡れている。
「おや、アリスちゃんじゃないかい、そっちの子はお友達かい?」
「うん!、エルフのシエラだよ!」
「あなたがアリスが言ってたイザベラさん、・・・」
シエラはイザベラの胸を見てアリスと同じく自分のペタンコを見る。
「あんたもかい・・・、アリスちゃん、二回目を言うのは面倒だ、後であんたから言っておきな」
「はーい」
アリスは返事をしながら湯に浸かろうとするが。シエラに止められる。
「アリス、入り口に書いてあった、ここのお風呂、頭と体を洗ってからじゃないと入っちゃダメなんだって」
「そうなの?、私昨日洗わずに入っちゃった、アレダメだったんだね」
「他の所もそう、アリスはお姫様だから知らない事多いみたいだし、これから私もナツみたいに色々と教えてあげる」
「えへへ、お願い」
知る事いっぱいあるアリス。しかし沢山物事を知れる事が今のアリスにとっては楽しくて楽しくて仕方がない。その為可愛らしく微笑みながらシエラにお願いと言った。その笑顔を見たシエラもぎこちなく微笑み返し頷いた。笑顔は苦手なのだ。
シャワーの前に座った二人はそれぞれお湯を出し、頭を洗い始める。
「・・・気になってたんだけど、その猫耳の中って頭洗う時に水とかシャンプーとか入らないの?」
「入るよー、だからこうやって耳をペタンとさせて入らないようにするの、耳が動かない子達がどうしてるのかは知らないかなー」
「動かない子達は大変そう」
「だね」
気持ち良く頭を洗った二人は次に体を洗う。
「尻尾、洗って良い!?」
「良いけど・・・、あんまり力入れないでね?」
「入れない!入れない!」
「じゃあ良いよ、ひゃん!」
アリスに尻尾を洗っても良いと許可されたシエラは早速尻尾を握り洗い始める。いきなり尻尾を握られたアリスは可愛らしく悲鳴を上げるがシエラは無視して尻尾を洗う。
「し、シエラ、もっと優しく・・・」
「・・・」
「んん!」
アリスはもっと優しく洗って欲しいとシエラに言うがその反応が面白い為シエラは構わずゴシゴシと洗い強すぎる刺激を感じるアリスは足をピーンと伸ばす。
「終わった」
「もー!、もっと優しくって言ったでしょ!」
「あなたの反応が可愛いから緩めると言う選択肢がなかった、反省はしない」
「して!?」
「断る」
「んにゃー!」
反省しないシエラにアリスはんにゃーとお湯をかけようとするがシエラはクールにお湯を避け、ささっと体に付いた泡を洗い落とすとお湯に浸かる。
「負けた気がするにゃ・・・」
負けた気ではなく明確な負けなのだが。負けてないと思い込む事にしたアリスは泡を洗い落とすと湯に浸かる。
「生き返るー・・・」
「だねー・・・」
二人はポカポカと暖まる。イザベラはそんな二人を微笑ましげに見守るのであった。
借りた部屋
「上がったよー」
「おーう、大将がプリン持って来てくれてるぜ、さっさと食っちまって容器返して来い」
「プリン!!」
シエラはプリンと聞くと嬉しそうに椅子に座りスプーンを取ると猛烈な勢いで食べ始めた。アリスはそんなシエラを見てあはは・・・と笑いつつ椅子に座るとプリンを食べ。二人で容器を返しに行き。この日は夢の世界に旅立った。