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銀色のアリス〜Ace編〜  作者: ブレイブ
第一部、序章、カルオン島にて
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一話

今作はアリスとナツと今後もう一人登場するキャラクターの三人体制の主人公となります。

エルフェルン共和国、首都


ここはエルフェルン王国時代の元々は王都であった場所。現在はエルフェルン共和国の首都が置かれている。その首都に一体のドラゴンが降り立った。


「帰ったかドラゴルル」


「おう!」


首都に帰還したドラゴルルは話しかけて来たドラゴンに気さくに挨拶する。


「さて、何か言う事はないか?」


「んー?なんのことだい?」


「惚けるな、お前、天使派の船を破壊しただろう」


「あーバレてたか、でもよ!あそこはうちの領域だぜ?あんな所をのんびりと通ってた奴等が悪い!」


現在のエルフェルン共和国の主導者、ドラゴルルの兄である、ギラゴルルに叱られる前にドラゴルルは龍派の領域内を通っていた天使派の船が悪く自分は悪くないと弁明する。


「それが通じるのは軍艦だけだ愚か者め、今回は、龍王様が釈明をして下さるが次はない!、注意せよ!!」


「へいへい」


(チッ!、停戦中だからといって俺らの王様が天使派の奴等に謝るのかよ!、気に入らねぇぜ!)


自分達の王であり父でもある龍王ドラゴラムが人に謝ると聞いたドラゴルルは明らかに不満気な態度を見せる。ギラゴルルはそんな弟を見て呆れため息を吐くのであった。


アリスの小屋


「所でさアリス、そんなにあのボールが気になるのか?」


食事を取り元気になったナツはアリスがしゅるんしゅるんと尻尾を揺らしボールをちらりちらりと見ているのを見てボールが気になるのか?と聞いた。


「ナツ君!黙ってくれないかな!、今必死に本能と戦ってる所なの!」


「わ、悪い」


アリスにぴしゃりと怒られたナツは黙るが腕が木製のコップに当たり落ちてしまいコツン!と高めの音が鳴る。それと同時に小屋に風が吹き込みボールが動く。それを見たアリスは。


「んにゃー!」


椅子の上にしゅた!と乗ったかと思うと尻尾の毛を逆立てながらグググと踏ん張りボールに向けて飛び出した。


「にゃー!、丸い物!、にゃー!」


そして猫そのものな仕草でにゃーにゃー言いながらボールで遊び始める。


(あーこれ後で面白いやつだ)


グレイは楽しそうにボールで遊ぶアリスを暫く観察する。



「・・・忘れてくれる?」


「ごめん、あれは忘れられない」


「シャー!、忘れろー!」


忘れられないと言うナツにアリスは飛びかかる。新米だが冒険者であり体を鍛えているナツはヒラリと飛びかかって来たアリスを避けると親猫が子猫にそうするように首根っこを掴み動きを止めた。


「ほい、猫捕獲」


「はなせー!」


「やだね、お前離したらまた俺に襲いかかってくるだろうが」


「シナイヨホントダヨ」


「カタゴトでバレバレだ!、この野郎!」


ナツから逃れようとジタバタするアリスだが次第に無駄だと判断し大人しくなる。


「・・・出来るだけ忘れれるようにするからさ?、落ち着け?」


「絶対だよ?」


「約束する、他人にも口外しない」


「なら良いよ、離して、あなたに見せたいものもあるしにゃ」


(たまに語尾に、にゃ、が混ざる事に本人は気付いているのだろうか・・・)


ナツはアリスの語尾について聞いてみようかと思ったがまた揉み合いになるのは嫌なのでまたの機会に聞く事にする。その代わりにアリスの見せたい物について聞く事にした。


「それで?、何を俺に見せたいんだ?」


「こっちだよ!、付いて来て!!」


アリスはピョンとジャンプし椅子から飛び降りるその結果小屋の入り口に転がっていたボールを蹴っ飛ばしてしまった。


「ふにゃー!!」


「アリスぅぅぅぅ!?」


この後ナツは猫の本能に負けて転がっていくボールを全力で追い掛けるアリスをこちらも全力で追いかけた。




顔を真っ赤にしてボールを脇に抱えて歩くアリスと。必死に追いかけた為笑う気力もないくらいに疲れているナツは森の中を歩いている。森の中は様々な果物が実っておりアリスがここで一人で暮らしていたと聞いているナツはこの実りの豊かさならば確かに三年程度ならば余裕で生きて来れただろうと思う。


「はい、いちごっぽいの」


「ぽいのってなぁ・・・、腹壊さないだろうな?」


「大丈夫大丈夫、私が食べて試してるからにゃ」


アリスはナツに安全安心な果物である!と言う事を証明する為パクリといちごっぽいのを食べた。いちごっぽいのはアリスのお気に入りであるらしくほっぺに手を当ててアリスは美味しーしながら尻尾を揺らしている。


「大丈夫そうだ・・・な」


ナツはアリスの様子を見て大丈夫だろうと思いいちごっぽいのを食べる。その瞬間口の中に広がるさっぱりとした甘さ。確かにこれはアリスが美味しーしながら尻尾を振ってしまう事に納得出来た。


「こりゃうまい!、何個か持って行こうぜ!」


「でっしょー!、でも持って帰るのは帰りね?、誰もいない島なんだから私達以外は誰も取らない、なら後でも良いよね、って訳」


「確かに、なら後で取ろう」


「うん!」


いちごっぽいのから離れたアリスとナツはスタスタと森の中を進む。進んでいるうちに川のせせらぎが聞こえて来てナツは近くに川があるのだと判断する。その事についてアリスに聞こうとしてアリスの方を見るとアリスは口元に手を当ててワタワタしていた。


「どったの?」


「なふでふぉないふぉ」


「口元に手を当てて喋るのやめなさい」


「なんでもないよ」


「その割に何か言いたそうですが?」


「にゃー?、言いたい事なんて何もないよー?」


「嘘付け」


明らかに何か言いたそうなアリスを不思議に思いながらナツはアリスと共に更に川に近付く。近付く毎にアリスの尻尾の揺れは大きくなり早く何か言いたそうなのが隠せなくなって行く。


「なんだよー、!」


そして森を抜け川に出てナツは目を見開く。そこには木を削って作ったボートが浮かべてあったのだ。


「ふっふーん!、どうかね?ナツ君!、私の自信作にゃ!」


「すげぇ!、ボートを作っちまうなんてどれだけ器用なんだよお前!」


それもそこそこ立派である。


「たまーにピコーンて閃いてさぁ?、その閃きを元に作ったら大抵上手く行くの、その閃きがなんで来るのか私にも分からないんだよねー」


「ふーん、予言系の能力かな?」


「さぁ?、分んにゃい」


本当に分からないアリスはコテンと首を傾げた。


「それで?、ほぼ完成してるように見えるけどこれ使えるのか?」


「うん、船体は浸水とかしないから大丈夫、後は水掻きを作らなきゃいけないね」


「手伝うよ、そしてこの島から脱出しよう、お前の目的の為にもな」


「うん!、それじゃまずは使えそうな素材は持って来てるから後は削るだけなの、手伝って!」


「任せろ!」


アリスとナツは剣を抜くと木を削り始めた。まだまだ手や背の小さいアリスでは時間のかかる作業も男であるナツが加わった事によりかなりスピードが増す。二人はあっという間に水掻きを完済させた。


「よーし出来た!、後は・・・どっちが大陸なのか分からないのが問題なんだけど・・・」


「大問題じゃねーか・・・」


「あはは・・・、・・・ナツも分んにゃい?」


「コンパスは持ってるぜ?」


「コンパスあっても地図がないと意味ないよー・・・」


ボートが完成し一瞬希望が見えたかと思った二人は大陸がある方角が分からないという問題に直面しガックリと肩を落とす。そして落ち込みながら小屋に戻って行った。



アリスの夢


『アリス・・・、アリス・・・』


(誰だろうこの声、昔聞いた事があるような・・・)


『アリス・・・、大陸はこの島から西の方角です、そちらにコンパスから目を離さず真っ直ぐに進めばそこが天使派の大陸ですよ・・・』


(怪しいにゃー・・・)


『・・・、信じなさい・・・、信じなさい』


(益々怪しいなー)


『信じろ!、信じろ!』


(露骨に口が悪くなった!?)


『一回で信じないからです!、あなたは転生する時も全く!、本当に全く!!、三日も私を信じず嘘だ詐欺師だと騒ぎまくって!!』


(誰の事?、私そんな覚えないけど?)


『・・・(ムカついたから記憶を消してやったとか言えない・・・)』


(おーい?声さん?、なんで黙るのー?)


『と、とにかく!、西に向かいなさい!、いいですね!?』


(あーい、忘れておくにゃー)


『いい加減にしなさい!、全く!!本当に全くぅぅ!』





アリスの小屋


「なんであの声の人あんなに怒ってるのかな・・・、・・・西か」


アリスは小屋に戻ってからナツに見せて貰ったコンパスを手に取る。きっちりと北を指しているコンパス。アリスはそれを元に西の方向を向く。


「こっちが私達の大陸、私が産まれた大陸があるんだ・・・、うん!怪しいけど!!詐欺っぽいけど!、行ってみよう!!」


「騒がしいな、どうかしたか?」


「夢でね?どう考えても詐欺っぽいけど!!、女の人の声がして大陸は西だった教えてくれたの!、だからさナツ!、行ってみようよ!!」


「自分で詐欺っぽいとか言ってるのに信じるのか・・・」


「だって地図もないんじゃ怪しくてもあの女の人を信じるしかないんだもん」


「んー・・・、んー!、分かった!、行ってみよう!、一つ聞くがちゃんと天使派の大陸なんだよな!?」


ナツは悩んだ後、西に行くと言うアリスの考えに同意した。


「そう言ってたよ!」


「・・・大丈夫かなぁ」


夢の中の声を信じアリスとナツは西に向かう。二人を待っているのは希望が絶望かそれは天使の気まぐれ次第。

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