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8 おっきなのを拾う
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その日の夕方
山菜を採りに山に入った女の子が、傷だらけでぼろぼろの大男を拾って帰って来たので、村の人々は仰天したのだった。
村人の平均より頭二つ分は高い、巨大な体躯。
汚れ切ったぼうぼうの金髪から覗く端正な容貌と尖った耳に、すわ妖魔か、と人々は色めき立ったが、子供のように手を引かれた男は、女の子に命ぜられるままに井戸端に坐り込んで顔を拭かれ、傷を洗われ、大きな肩や背にぺたぺたと薬草を張り付けられている。
水の椀を渡されて取り落し、叱られて肩を落とす姿に少し安心して人々は近づいた。
「おい、チシャ、そいつは何だ」
「山で拾ったんだよ」
「でかいな・・・魔物じゃないのか」
「大丈夫、おとなしいよ。言葉はわかるみたいだし」
さあ、立って、と促すと男はふらふらと立ち上がり、チシャが招くままに後をついて行く。
しかし、狭いあばら家に入ろうと身をかがめたが、ごん、と梁にしたたかに額をぶつけ、呻いてうずくまってしまった。
「でかい阿呆の迷子じゃのう」
村長ののんびりしたひと声に、皆の緊張が解けた。