23 峠越え
これから数話、災害の描写があるのでご注意ください。
23
二日が無為に過ぎていった。
豪雨は止んだが、川には濁流が渦巻いている。
「こんなところで、これ以上待つことは出来ん」
焦燥感にかられた役人が商人を叱咤する。
山越えして、上流の橋を目指そうというのだ。
「し、しかし道は相当に険しいのです。この雨の後では・・・」
「なんとしてでもロックバイトの町に行かねばならんのだ。
多少の無茶は覚悟の上だ。馬車を出せ!」
お役人の言葉には逆らえず、商人はしぶしぶ馬車を用意する。
トミタが商人を隅に引っ張っていった。
「馬車を出すと聞いた。私も乗せてくれ」
「この悪路だ。馬に負担がかかる。余計な荷物は邪魔だ」
「そこをなんとか」
どうするのかなー、とチシャが見ていると、話がまとまったのか、手代と荷物を残したまま、わずかな手荷物をかかえたトミタが、チシャたちの荷馬車に乗り込んできた。
「一人だけしか乗せんというのだ。仕方がない」
護衛の一人が先導し、残りがうしろについて、馬車と荷馬車は出発する。
雨は止んだが、道はぬかるみ、馬の蹄は滑るし、泥が車輪に絡みつく。
「おい、うすのろ、降りて馬車を押せ」
「兄ちゃんはバルーって名があるんだ、ちゃんと呼べ!」
何度か立ち往生しそうになりながら、濡れた山道を苦労して上がり、峠に差し掛かったとたん。
チシャはぞわっ、と鳥肌がたった。
山が・・・鳴いている。
同時に頭の中に大きな声が響いた。
『このおろかものめっ!
雨が降ったら山に入ってはいかんと、言ってあったじゃろうがっ!
よりにもよってこのタイミングでかっ!』
そして・・・
山が、動いた。




