21 雨
21
翌日からは雨になった。
商人とお役人が乗る上等な馬車が一台。チシャと羆が乗る荷馬車が一台。
それぞれの御者と、四人の護衛。
だんだん雨脚が強くなる。
やっとたどり着いた河のほとりの宿場町では、上流で三日も続いた豪雨のために河は増水。
「橋が流されちまったんだ。水がひくまで河は渡れん」
旅人たちは皆、足止めをくらっていた。
雨合羽を着た町役人が商人たちに近づく。
「ハットフィールドから来たお役人てのはいるかね。
魔道便で伝言が届いとるぞ」
承認して受け取った役人は顔色を変えた。
「なにっ、監査がはいるだと!」
宿場町は泊り客であふれ、臨時に建てられた仮設の大テントの中は、人足として集められたむさい男たちの人いきれと湿気がこもって、空気も悪くなっていた。
その中でも、特に騒がしい一角。
「どうだい、そこの強そうなおっちゃん。銅貨一枚で勝負しないか。
兄ちゃんに勝てたら銅貨十枚だ!
よし、始めるよ、いいかい、それ!」
チシャは元気だ。
伸びすぎた髪はまとめて布できっちり包み、ほっそりした四肢に大きすぎる上着をまとって腰ひもを結んだだけの姿は中性的で、女の子にはちょっと見えない。
「それいけ、はげ!」
「うすのろなんかのしちまえ!」
はやし立てる人々の見守る中、筋骨隆々の禿親父と、無表情な金髪の青年との勝負が始まる。
自信満々で始めた親父は、しばらく青筋を立ててぶるぶると腕を振るわせていたが、じりじりとその手は下がり、ばったりと甲が机についた。
「腕相撲一本勝負、兄ちゃんの勝ち!」




