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半妖の戦士 第一部    作者: 葉月秋子


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20/23

20 旅立ち

20


 そして二日後。


 チシャと羆は、雨もよいの空の下、商人の馬車に乗せられ、ドナドナされていった。



「賦役の任期は二年。仕事は王都南の運河建設の人足じゃ。

 本来は二名じゃが、お役人様がハンパ物のお前でも一名分として認めて下さった。

 飯場の飯炊きでもして、せいぜいがんばれ」


 未成年の女の子を賦役の頭数に入れて出すなんて、国法違反だろうに。

 賄賂とか袖の下とか、犯罪臭がぷんぷんする。


 だがチシャにはそんな知識もなく、相談できる相手もいない。

 泥酔してしまった母親とはろくに話すことも出来ず、支度金として渡された金がどうなったのかも知らぬまま、わずかな衣類とため込んだ小銭をまとめる。


 さすがに後ろめたかったのか、村長は羆にまともな古着を見繕ってやり。

 もつれた髪を切りそろえ、こざっぱりした羆が立ち上がると。

 金の髪に青い眼、尖った耳を持つ、整った異貌の巨人は、辺りを圧倒する存在感であった。



(ほうほう、やはりこれは掘り出し物じゃわい)


 商人はほくそ笑んだ。


 もとより人足にする気も、二年で解放する気もない。

 同行の役人とは、すでに話がついて、借り受けの書類も製作済みだ。


(あとは飼い主のあの小娘を丸め込んで、こちらの命令に従うよう、調教し直せば)


 王都まで連れて行けば、どのような伝手でもあるのだ。


(くっく、先が楽しみじゃ)




「これからどうなるんだろう羆さん」


 餞別に渡されたわずかな食料と衣類の包みをかかえて、チシャは心細げにつぶやいた。


 教育も受けられず貧しい村の中しか知らぬチシャは、外のことなど全くわからない。

 役人も商人も、まるで信用できないし。


(でもあたいがしっかりしないと。あのちかちかするやつに、世話を頼まれたんだから)


 羆さんは、いや、もうそうじゃない。


「バルーにいさん」


 チシャが呼ぶと、相手は青い眼でチシャを見返す。


「チシャ」


 まだほかの言葉は出てこないけど、目覚めていくって言われたんだ。

 大丈夫。なんとかなるさ。大丈夫。


「大丈夫だよ。あたいが一緒にいるからね」


 半分は自分に言い聞かせるように声にすると、チシャは今にも降り出しそうな暗い空を見上げるのだった。


  


 


 

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