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半妖の戦士 第一部    作者: 葉月秋子


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19/23

19 兄

19



「ごめん、ごめんよ羆さん!

 あたいがこんなところに連れてきたせいで、とんでもない事にまきこんじゃった!」


 村長も、あの商人も、お役人も、かあさんも!


 みんなずるい!卑怯だ!おとななんて、みんな、みんな・・・


 小さな胸は怒りで煮えくりかえるが、無学な子供は表すすべを知らない。

 首をかしげて澄んだ目でこちらを見ている若者を、守れぬ無力感がつのるばかり。


「村長が、あんたをかあさんの養子にする手続きをして、お役人が受け取っちまった。

 あんたはあたいの兄さんってことにされちゃったんだ!」



 兄さん?兄?



 それは彼にとって、とても懐かしい言葉だった。


『兄さま!兄さま!』


 花咲き乱れる庭園で、駆け寄ってくる銀髪の少女。

 彼が取り込んでしまった存在が、こよなく愛し、繰り返し思い出していた記憶の断片。

 さわやかな風。煌めく噴水の豊かな水。見上げる少女の、無垢な笑顔。

 喪われてしまった存在の、大事な記憶。



 チシャという少女が彼に縋り、彼を兄と言う。


 そう、自分はあの、「兄」と言う存在になれたのだ。



「・・・ち・・・しゃ・・・」


「えっ?」 羆さんが、しゃべった!



 そう、こうして、頭をなでて、大丈夫だと笑ってやれる。


「チシャ」


「笑ってるの?怒ってないの?

 あたいなんかの兄さんにされちゃって、それでもいいの?」


「チシャ」


 名を呼ばれ、頭を撫でられて、びっくりしたチシャは大きな体にしがみつき、張り詰めていた糸が切れたように、わんわん泣いてしまったのだった。





 


 



 

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