17 賦役
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「身元もわからぬ不審者に、ただ飯を食わしていくわけにはいかんでな」
問い詰めるチシャに、虚勢を張るようにふんぞり返って、村長は言った。
「名もわからんし、行く当てもなかろう。この村で暮らすなら、村の掟に従ってもらわねばならん。
そこでだ。
チシャよ、お前の母親が、あやつを引き取って、養子とすることにした」
「え?」
「お前が成人しとれば婿入りさせてすんだものをな。
幸い今、この村にお役人様が来ておられる。
そやつは文盲らしきゆえ、代筆で養子手続きをしておいたぞ。
そやつはこれから、お前の兄者じゃ。チシャ」
そんなむちゃくちゃな話があるもんか!
「そんなっ!羆さんは何にもわかってないのにっ!
記憶が戻ったらどうする気なのっ!」
「まあ、そんなときはまた、なるようになろうさ。
ごほん、あー、それでじゃ。
村人になったからには、村人の義務があってな。
今回の賦役を、そいつに任せることにした」
チシャは村長をキっと睨みつけた。
目当てはそっちか!
領主から各村に割り当てられる、労働力の提出。
数年ごとに回って来る賦役の制度は、一番の働き手を取り上げられるため、小さな村には大きな負担だ。
誰を出すかを決定するのは村長。それを判定するのが役人。
裏取引や賄賂がまかり通り、役人の懐は肥え太る。
だから。
よそ者の羆さんを村人にしたてて、かわりに差し出そうって。
そんな卑怯なことをっ!




