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16 家で
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チシャがきれいに掃除をして出ていった家の中に、饐えたような安酒の匂いがこもる。
「どこで油を売ってたんだい。役立たずな子だ」
薄暗い家の隅で、陶器の甕を抱えてうずくまる母は、酒臭い息を吐きながら言った。
「まあ、いいか。
お前の奉公先が決まった。さっさと荷物をまとめな」
「えっ?」
突然の事にチシャはびっくりする。
そんな話、一度も出たことは無かったのに。
「そんな!かあさん一人になっちゃったら、ここでどうする気なの?」
「今日たずねて来た商人さんが、おまえに良い仕事口があると言うのさ。
結構な支度金を出してくれたんだ。
これとお前が仕送りしてくれりゃ、一人暮らしには十分さ。
さあ、早くしな。そのうすのろも一緒だ」
「えっ!なんで」
なによ、それ。
「なんで羆さんがいっしょなの!
この村の人でもないのに!」
「文句は村長に言うんだね」
しらッというと、母親はまた陶器の甕を傾ける。
いったい、何なんだ・・・
「村長んとこへ行くよ、羆さん!」




