15 山を下りて
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二人が出てきたすきまはふさがり、あたりは静まりかえった。
「・・・な・・・なんだったんだよ、今の・・・」
「み、見たよね、羆さん。
ちかちか光って、言葉をしゃべった。
あれ、何だったんだ?
夢じゃなくって、ほんとにいたよね」
振り向くが返るのはいつものとおり沈黙。
「眠ってるって・・・かぁ・・・
起きてるよねぇ、ねぇ」
もつれた金髪を持ち上げると、濃い蒼の瞳がチシャを見返す。
「ちゃんと眼、開いてるのになぁ。
起きてるよ、ねぇ」
顔をぺちぺち叩いても、頬をうにっとつまんでも、相手は無表情のまま。
チシャを見る眼は蒼く澄み、穏やかだ。
これでもねてるの?と首を傾げると、相手も鏡のように首を傾ける。
大きな尻尾を持ってたら、ゆるやかに振られていることだろう。
「・・・頭の中が、眠ってるのか。
頭が起きたらしゃべってくれるのかなぁ。
ねえ、あたしはチシャだよ。
チシャ」
言ってみてよ、と何度も繰り返したけれど、羆は静かにチシャを見つめるだけだった。
『地の恵み』をもらったせいか、苔はたくさん収穫出来て、よい出汁の出るキノコも採れて。
上機嫌で戻ったチシャだったが。
「ただいま、かあさん」
家の戸をくぐったとたん、ムッとする匂いに顔をしかめた。
(なに、これ。お酒?)




