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13 山で
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結局苔採りを優先したチシャは、羆の先に立ってひょいひょいと身軽に山を登って行った。
「なんか感じ悪かったよな、あの商人さん。
いつもの行商のおっちゃんなら、『苔はとれたかい?』って笑顔できいてくるのに」
お役人さんと一緒のあの商人は、かぼちゃの良し悪しを確かめるみたいな眼をしてこっちを見る。
「ほら、羆さん、あんた、あそこの岩を崩して出てきたんだよ。
覚えてる?」
人一人がやっと通れるだけのすきまだけど、これを素手で崩して開けたんだから、凄いや。
「どこに通じてるんだろ。ずいぶん深いねぇ」
と、のぞき込んだチシャは。
奥の暗闇で、ぼうっと光がともったのに気づいて「ひゃっ!」とのけぞった。
「な、何かまだいるぅ!」
お化けとか、ゴブリンとか、お化けとか・・・
ふっ、とあたりが暗くなったので息が止まりそうになったが。
後ろから羆が近づいて、覗き込んだだけだった。
「お、お、脅かさないでよおっ!」
出口を塞がれた形になって、チシャは必死で大きな体を押し出そうとした。
ぼおっと光が大きくなって。
『ほお。そなたに懐いたのか』
それは声を出し、愉快だ、と言わんばかりにちらちらと瞬いた。




