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半妖の戦士 第一部    作者: 葉月秋子


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12/23

12 商人

12



 次の朝早く。


 チシャは山を見上げて考え込んでいた。


 お肉が食べたいのは切実だけど。

 そろそろ雨が多くなる時期だった。


 もう一度小銭になる岩苔を採りに行くべきか。

 晩御飯のお肉を採りに行くべきか・・・

 雨に濡れてしまったら苔はふくれて腐りやすくなり、売り物にならないのだ。


 悩んでいると共同井戸の方で何やら人が騒いでいる。



 あ、羆さんに水汲み頼んでいたっけ・・・





 深い井戸から釣瓶で汲み上げた水を二つの手桶に移し、小屋に運ぼうと振り向いた大男の前に、村を訪れた商人とその護衛が立ちふさがる。


 中年太りの少し禿げかかった商人は、品定めでもするように、襤褸着を着た金髪の大男をぶしつけに眺めまわした。


「ふん、良いガタイをしとるの。こっちへ来い。名は何という」



 しかし男は黙って突っ立ったまま。

 もつれた金髪は一部子供たちにおさげにされているが、眼にかかるまで伸びた前髪の下からは表情が読めない。


「聞こえたのか、おい!返事をしろ!」


 護衛が居丈高に一歩踏み出すが、男は下がりもせずに立ち尽くしたまま。



「そいつはチシャの言う事しか聞かねぇよ」


 通りかかった村人が笑いながら言った。


「なんもしゃべらんから、名もわからんわ」


「チシャ、とは?」


「ほれ、あのちっこいガキだ」


 丘を駆けおりて来るやせっぽちの少女を指さす。



「羆さーん」


 声を聞いた男が顔を上げ、歩き出す。



 留めようと踏み出した護衛は、歩を進めた男の前で怯み、動きを止めた。

 その前を何事もないように通り過ぎ、男は少女の方へ歩いて行く。


「おい?」


 商人が声をかけると、護衛はぎくりとしてぶるっと頭を振る。


「いや、申し訳ない、ちょっと眩暈を・・・」


 そう、ただの眩暈だ。

 けっしてあの巨体に威圧されたわけでは・・・



「水汲み終わったら朝ごはんだよ、羆さん。またかぼちゃだけどさ。

 食べ終わったら一緒に山にいこう」

 

 重い水桶を軽々と下げて、男は少女の後をついていく。




「あのガキが飼っているのか・・・ふむ・・・

 どこに住んでいるのだ、あいつらは」



 聞いてこい、と護衛に命じた商人は、何か頭の中で計算を始めたようだった。


 


 



 







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