11 羆と呼ばれる男2
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「はい、羆さん、かぼちゃ」
呼ばれた大男はゆっくりと顔を上げ、差し出された椀を受け取る。
刻んだかぼちゃに、少量の塩を入れて煮込んだだけの夕餉の椀。
昨日もかぼちゃ、今日もかぼちゃ。
明日のご飯も、やっぱりかぼちゃ。
今年はかぼちゃが豊作だった。
村長の家では家畜の飼料にもするかぼちゃが、チシャの家では主食である。
中身が半分になった鍋をもう一度火にかけ、粗朶を一枝も無駄にしないように柔らかく煮直して、少し潰して食べやすくする。
「かあさん、夕食だよ」
奥の寝床に声をかけるが、母は起き上がる気配もない。
「またかぼちゃかい、まったくいやになる。
街にいた頃は、朝晩パンが出たもんだ。祝日にはバターとジャムつきで、肉入りスープといっしょにさ。
毎日こんな家畜の餌を食べる暮らしになるなんて・・・」
しばらく前に腰を痛めた母親は、足も弱って寝たり起きたり。
愚痴だけが毎日増えていく。
落ち穂を拾い、かぼちゃを運び、粗朶を拾って食事を作るのは、みんなチシャの仕事になった。
ブツブツ言いながらやっと起き出したのを確かめて、チシャは炉端に戻り、少し冷めてしまった自分の椀を取り上げる。
そして
「あれっ、熊さん、食べないの?
冷めるとさすがに不味いよ、これ」
と、チシャが匙をふると、羆もゆっくりと食べ始めた。
・・・・・・・・・
うーん、やっぱり不味いわ、これ・・・
塩が足りない、肉っけ、脂っけが欲しい・・・
食べられるだけましだけど、熊さんもこの大きな体で、これっぽっちじゃ足りないだろうし。
「明日、棘モグラでも狩りに行こうか・・・」




