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超能力VS剣と魔法の力  作者: たまゆか
3/5

第三話 僕の能力って便利だけど役に立たない

「¢Ah`\/ASi%Ik,uaSOOI!!!」


 言葉は理解できないが、確実に分かっている事がある。

 僕らが歓迎されているわけではなく、むしろ威嚇されているって事だ。

 ふと、考えてみたんだが、言葉がわからなくても僕の能力で心を読んでみればいいんじゃないか?フェイロンの感情がわかったように、僕の能力は直接頭に感情が伝わってくるから、どんな言葉を使っていようが、それは障壁ではない。

 

――何者なんだ、こいつらは!!まさかクソったれ共の仲間じゃねーだろうな……――


 やっぱり心が読めたぞ!やった!


 って言ってる場合じゃないよ……。確実に何か彼らは勘違いしているし、彼らの思っている事がわかっても、それを否定する手段もない。

 彼らの文化も何もかもわからないから、黙っているだけでもいきなり攻撃されるかもしれないし。


 もうここは、確実に逃げるに限らないか?


「ハッチさん、なんとなくヤバイ『勘』がします、逃げませんか?」

 

 やはりこう言う時には便利だぜ。僕の能力「勘」と言う事で済ませちゃえば、危険回避だって余裕。

 そうだな、これから僕の生きる術は、僕の能力を使って何だか色々できそうな能力を持つ「ハッチ」を上手く操り、この世界をやり過ごせばいいじゃないか。きっとできるぜ、結構このハッチという男は単純そうだからな。

 そんな事を思って僕は、ハッチを見た。


「少年の能力の勘も随分曖昧だなー、言葉がわからないくらいで逃げたらもったいないじゃーん」


 そう言って、またも何やらぶつぶつと呪文のようなものを呟き始めた。

 おいおい、怪しい動きと言動をしているから、彼らの警戒心がマックスなんですけど、どうしてくれるんだよハッチさん。

 明らかに怪しまれている。彼らから動揺と警戒を表す心の声が聞こえるよ、そして何だか僕らを捕まえる為に攻撃準備をしているようだ。門番と思われる人たちの後ろの方からどんどん人が集まってきているし、まじでやばい状況だった。

 

「ハッチさん!私もちょっと危ないんじゃないかと思います!私にはそんな能力的な勘はないけど……」

「ね?君のよく効く勘が言ってるんだもんね?」

「えっ、あぁうんうん!そうなんだよ!って聞いてる?ハッチさん!?」


 ハッチは、呪文を一通り唱え終えたようで、最後の一節にとりかかった

「言語の尊厳すら破壊せし者、今地獄の底から這い上がり、我に従え!()でよ! アガレス!」

 そうハッチの召喚術が発動すると、目の前に気持ちの悪い大きなワニの上に跨り、手に大鷹をとまらせた老人が現れた。


《おう、ハッチ。久しいな、なんじゃ俺になんか用か?》


 さっき召喚したドラゴンのフェイロンは喋らなかったが、この老人はいきなり喋りだしたもんだから、僕とヒカリちゃんはかなり驚いた。

 ハッチは今回もニヤニヤしながら、僕たちの様子を伺っている。いいから、もったいぶらないで何かするなら早くやってくれよ……。


「アガレス爺ー、正面に見える人たちが、な~にを言ってるかわかんないんだよお、ちょっと通訳頼むー」

《あぁ?そういや、どこだよここは。んで、なんなんだあいつらは。》

「ここは異世界なんじゃねーかなー、いいから早くしてくれよー、早くしないと攻撃されそうなんだよねえ」

《チッ、相変わらずだな。わかった、なんて言えばいいんだよ》

「えっとさあ、俺たちには敵意はない!仲間だから、仲良くしよう!的な事を言ってくれないかあ?」

《おう、わかった》


 おいおい、今の会話黙って聞いてたが、本当に大丈夫なのだろうか、まずこのアガレスとかいう爺さんは何者なんだ。そして異世界って言っているのに、通訳出来るのだろうか。そんな不安を抱きつつ、僕はヒカリちゃんを見た。

彼女は何か閃いたような、思い出しているような、よくわからない表情をして、ずっとアガレスの方を見ている。

 何考えているんだろうな、読んでみるか……。と思ったが、安易にすぐ能力を使うのは僕の悪い癖だ、自重しなければいけない。特に女の子に対しては、色々と不都合が多すぎるんだよ。


「思い出した!確かアガレスっていうのは、言語を司る悪魔だったと思います!元々天使だったけど、堕されて悪魔になったような」

《良く知ってるな小娘!俺の事を知ってる奴は結構な悪魔オタクだぜ?》

「え!いや、オ、オタクとかではなくて……。昔神話を題材にした小説や漫画なんかがとても好きだった時があって、それに貴方に似ている悪魔が登場してたの」

《ほう、まぁ、悪い気はしないがな》

「ほ、本当ですよ!?神話を題材にした小説とか、テレビドラマとか、い、意外に多いんですから!!変な事思わないでくださいね!!」

 非常に慌てているヒカリちゃんだが、僕によくわからない。何かしら人には恥ずかしい思いや趣味や趣向があるもんだ。やっぱりさっき心を読まなくてよかったな。

 その後、アガレスは「さてと」と呟き、門番達の方に向かって移動し始めた。門番達はいきなり現れたモンスターのような奇怪な人物に驚き、今にも襲いかかってくるのではないかと思うくらいに興奮しているようだった。

 僕らも恐る恐るであるが、アガレスの後ろについて行く。アガレス自体は大きくないのだが、アガレスの乗っているワニがデカイので、ちょっと盾に出来るかなっていう安心感がある。

 アガレスがある程度近づき、ニヤッと笑うと、通訳だと言うのに僕らでも意味がわかる言葉で叫び始めた。


《てめぇら!俺達は敵じゃねぇ!ちょっと訳あってこんなところに来ちまったが、危害は加えねぇよ。それを信じるか信じないかはてめぇら次第だが、特に敵じゃねぇっていう証拠も何もねぇのも事実だ!ここは黙って俺様の顔を立てて、仲良くしてやってくれや!あぁ、もし逆に俺たちに危害を加えようってんなら、俺達は俺達を守るために全力で戦い、てめぇらを叩き潰すぜ!わかったか!?そっちの代表者出てこいや!》


 おいおいおいおいおい。なんでいきなり喧嘩腰なんだよ、馬鹿なの?そんな言い方だったら敵味方以前に、警戒されるの決まっているじゃないか。まぁとは言っても、言葉が普通の言葉を使ってるから、絶対通じてないと思いますけどね。「ちなみに俺様、通訳です♪」とか、楽しそうに言っちゃってるけど、なんなんだよ一体……。

 そう思っていると、門の奥の方から周りの人たちよりも立派な鎧を着た、かなり筋肉質で大柄な男が前に出てきた。


「3;0oxe10r aO@ < Q 0M<dehq」


《おい、ハッチ!こいつが村の警備代表だってよ!》

「なんでわかるんだよー!なんで言葉が通じてるの!?」


 余りの出来事に僕らしくなく自然と突っ込んでしまったのだが、ハッチが言うには、アガレスが話す言葉はその相手がわかる言葉に全て置き変わるらしい。

 つまり僕たちには僕たちにわかる言葉に、異世界人には異世界人のわかる言葉にと、勝手に変換されるということだ。

 これは僕のテレパシーの感覚に近いものなのかなと、考えているうちに警備隊長が叫ぶ。


《ハッチ、悪いんだが。俺達の風貌や物言い、そして態度がとても信じられないと。そして、丁度奴らは戦争状態だったらしく、俺たちにスパイ容疑がかかっている。だから、このまま帰すわけにはいかないとよ》

「えー!風貌や物言いと態度って、全てアガレスさんのせいじゃないっすかー!」

《ほう、小僧。この俺に向かってなかなかの言い草だな、小僧がハッチと一緒にいなければすぐにでもこのワニの餌にしてやってもいいんだぞ?》

 老人のようなアガレスの顔が、まるで鬼の如くみるみる変わっていった。そしてアガレスから無言の圧が僕を襲う、これが本物の悪魔の威圧ってやつなんだろうか……。まじで身体が動かない。

 そしてアガレスはまた独特な風貌に戻りニヤリと笑うと。


《うっそぴょーん♪ぐはは、小便くせぇビビりな小僧だな!ぐはははは!冗談だぜ?まぁ小僧の言っている事も9割間違いじゃないような気もしないわけでもないがな!なぁハッチ、そう言う事で俺は帰るわ、あとはがんばれよ、通訳はしたからな?んじゃの》


 何なんだよ一体……。警備代表の男も僕たちも一連の出来事に茫然としていた。


「うん、まいったねーこりゃあ、どうしようなあ~、少年!やっぱり少年の勘って当たるんだねえ!」


 ハッチが大してリアクションを取る事もせず、そう言うと同時くらいに、僕たちは村の警備隊と思われる先ほどの門番達数十人に囲まれ、拘束されてしまった。

 先に村の警備たちの心を読んで警告したにも関わらず、僕の忠告はまったく役に立たないのだった。

 そう、僕の能力って便利だけど、役に立たない事が多いんだよね。


 そして、僕らが連れて行かれたのは、映画やTVで見た事がある中世ヨーロッパの騎士たちが捕まるような、石で高く積み上げられ、遥か頭上高い位置にほんの数十センチ四方の小さな穴があるだけの、冷たく暗い牢屋だった。あの小さな穴は知ってるぞ……、ほんの少しだけ外の光が漏れるんだ、そして今が朝なのか夜なのか判別するんだ、そうやって時間の感覚を失わないように、精神が狂わないように、でも限界まで弱らせるように作られているんだろう?

 例によって僕とハッチは同じ牢屋、女性のヒカリは違う牢屋、大体女子と男子は別れるって言うね……。まぁこんなところで一緒になった所で、何かラブロマンスが生まれるわけでもないんだが。


《あ、そうだ、ハッチよ。なんか奴らが言ってたんだが、なんとかっていう国のなんとかっていう部族がここを攻めにくるんだってよ、気をつけろよ!死ぬなよ!俺なんか悪い「予感」するぜ!んじゃ》


 僕がしょうもない事をウダウダ考えていたところ、どこからともなく、姿が見えないがアガレスの声が僕ら2人の近くから響いた。あとから聞いたけど、ヒカリちゃんにもその声が届いていたって。

 はぁ、うるさいっての……。

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