表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/108

5-10

徒歩や乗馬による旅の最中、いくら疲れていても夜眠る前はストレッチをかかさない。疲労し、凝り固まった筋肉を優しくほぐす。


「私がやってやろうって言ってるのに」


 シシドが口を尖らせている。


「その代わり自分もマッサージしてくれって言うんだろ? これはマッサージじゃなくてストレッチなの」


 結構が悪くなった筋肉に刺激を与えて気持ちよさを得るマッサージとは違う、あくまで筋肉の調整がメインなのだ。プロの按摩師ならそりゃそういう効果のあるマッサージもできるんだろうけど、この世界ではその手の技術は密僧モンクの秘伝なのだ。扱えるものは滅多にいない。


「しゃーない、クロウにでもマッサージしてもらってくる」

「おう」


 そう言った俺に対して、何故かシシドは大きなため息を吐いた。


「まっ、いいんだけどさ」

「何が?」

「何でもないぜ」


 ひらひらと手を振ると、シシドはクロウたちの部屋とは別の方向へと廊下を曲がった。


「夜空でも見てくるぜ」



 ストレッチを終え、俺は固いベッドに腰掛ける。


「…………」


 これから何が起きようとしているのか。俺に何ができるのか。


「ジェイクは知ってるのかな」


 あいつの前世の記憶は戻ったのだろうか。俺がこれからあいつに対して何をするのか、もう分かっているのだろうか。


「キャアア!」


 夜の静寂を引き裂くような悲鳴が聞こえた。


「なんだ!?」


 俺は杖を掴み慌てて外にでる。


「な、オーガ!?」


 外では醜悪で巨大な人影が、錆びついた斧を振り回していた。オーガの目の前には俺たちにマシュマロをわけてくれた村長の奥さんが、腰が抜けたのか這うようにして逃げている。


「止めろ!」


 つるり油オイルオブトリッパーの魔法がオーガの腕に発動する。つるりと手を滑らせ、斧はあらぬ方向に飛んでいった。

 ほんの些細な違和感だった。オーガは飛んでいった自分の斧に目もくれず、俺を睨みつけていた。おかしい、腕力自慢で愚鈍なオーガらしからぬ動きだ。

 とっさに俺は身体をひねりながら振り返った。


「お前たちは!?」


 そこにいたのは二人の忍者。今度はマジックアイテムによる隠密補助をつけ、レベルカンストにふさわしい動きで俺へ刀を突き出している。

 避けられたのは偶然に過ぎない。なぜだ、どうやってオーガを味方につけた。あいつらにオーガを手なづけ、協調して不意打ちするなんてことができるのか?


短距離転移ショートテレポート!」


 俺は奥さんのところへ飛ぶ。まずはこの人を安全な場所に誘導しないと。


「大丈夫ですか、今安全なトコ」


 トンと押されたような感覚を感じ、次に腹に燃えるような熱を感じた。


「え、あ……」


 遅れて激しい激痛が走る。

 奥さんの突き出したナイフが俺の腹に突き刺さっている。


「村人のナイフくらいじゃ……ダメージまともに通らないはずなんだが……」


 さっきまで怯えていた奥さんは、今はまったくの無表情。白いお面を思わせる、不気味なものだった。


「マジックアイテムか……」


 意識が遠くなる。毒を与えるナイフなのだろう。

 解毒の魔法を使わなければ。だがそんな暇は与えないとばかりにオーガが飛びかかってきた。


「この……」


 出し惜しみはなしだ、俺は魔力を込めてハンドキャノンを発射し、オーガの頭を砕く。すぐに懐の大砲を地面に置いて縮小解除。


「向かってくるなら……」


 忍者は臆した様子も無くまっすぐにこちらに向かってくる。そんな覚悟があいつらにあるはずがない。

 俺は散弾を装填してあった大砲を至近距離で発射した。ピンポン球くらいの大量の鉛弾がはじけ飛ぶ。


「くそ……やはり痛みを感じていないか」


 忍者は全身に弾丸を浴び、血を吹き出しながらも全く勢いが衰えない。

 ざくりと二本の刀が俺に突き立てられた。


「こ、呼出コールド……」


 再び俺の身体は転移する。テレポートと違い、コールドは事前に魔法をかけたアイテムのところへ飛ぶ魔法だ。俺は散弾の一粒にこの魔法を事前にかけていた。事前に詠唱の半分を済ませておくことができ、目標をイメージする必要がない分、とっさに発動できる点で、この魔法はテレポートより優っている。

 村から離れた森の木に突き刺さった弾丸の元へ俺は飛んだ。距離は500メートルといったところか。


支配ドミネイトの魔法じゃなさそうだな……人形遣いドールマスターか?」


 上級クラスの一つ人形遣い。本来はモブクリーチャー一体を支配し、コントロールを得ることができるのが特徴のクラスだ。また人形を作成して戦わせるというスキルもある。支配はNPCや対プレイヤーには使えないはずだが……そこはゲームと違うのかもしれない。


「人形遣いがコントロールを維持できるのは同時に一人まで、となると最低四人いるのか?」


 上級クラス持ちが四人。ジェイク派なのだろうか。


毒除去リムーブポイズン


 魔法で毒が消える。続けて偽りの生命フォルスライフの魔法で大きく減った生命力をある程度取り戻す。


「ふぅ、砲撃の音でシシドやクロウたちにも危険は伝わったと思うけど」


 だが人形遣いか……はっきり言って不遇クラスの一つだと俺は思っていた。ボスには支配能力は通用しないし、自分よりレベルの高いクリーチャーを支配することもできない。自分より弱いクリーチャーを一体味方に加える。それが人形遣いの能力。


「現実だとレベルカンスト忍者をコントロールできるのか?」


 どうもしっくりこない。転移者のレベルカンスト人形遣いが四人もいるということか。それでいて操作するのがオーガや村人?

 何かがおかしい、そう思えて仕方がなかった。俺には知らない何かを、相手は知っている。そんな気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ