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5-7

「何でも喋りますですはい」


 レベルカンストともなると、まともなダメージを受けることも少なくなる。その上、彼らは回避率が高く、敵の攻撃対象から外れる能力に長けた忍者。この世界に来てからまともなダメージを受けたことが無いのだろう。


「だから殺さないでください。何でもしますから」


 ハンドキャノンの砲弾を浴びて、何箇所も骨折した二人の超人たちは、涙でぐちゃぐちゃになった顔で俺にそう言った。


「あー、うん、分かったよちゃんと本当のこと話すなら殺さないから」


 念のため、ディテクトファルス(虚言感知)の魔法をかける。レベルカンスト忍者に通るような魔法ではないのだが、抵抗するなと言ってあるので二人はすんなりと魔法にかかった。これで嘘をついたら感知することができる。


「なんで俺を襲ったんだ?」

「俺たちはジェイク派で、ダンフォース様の首を取ることを最優先にしてるんですはい」

「ジェイク派?」

「アナトリア攻略を失敗した後、ミナトとジェイクが口論になって分裂したんですはい」


 なんだと?


「すぐにでもダンフォース様を暗殺しようというジェイクと、様子を見たいというミナトと意見がぶつかったんです。その時はミナトの方が支持されていたから一応収まったんですが」


 この一年余り、あいつらが姿を見せなかったのはそういう訳があったのか。


「しかし様子を見るって、ミナトはその間何をしていたんだ?」

「何か調べ物をしていたみたいです。幹部である元パーティーを連れて世界中の遺跡を巡っていたようで。詳しくは俺らみたいな下っ端にはなんとも」

「お前ら下っ端だったのか」

「はい。だからダンフォース様の首を持って帰れば扱いが良くなると思って」


 下っ端か……あの程度の腕前じゃ仕方がないか。


「で、ミナトが優勢だった状況が変わったのか?」

「はい、ジェイクが元の世界に帰る具体的な方法を発見したことで、多くの転移者がジェイクを支持するようになり、ミナト派は追い出されました」

「元の世界に?」

「ジェイク派に与する、ランク二位の転移者である剣聖ソードセイントカコが中心となって元の世界に帰る方法を調べていたようです」

「カコか……」


 剣聖カコ。最初期から居るプレイヤーの一人で、PvPでは無敗だと言われている強者だ。クラス:剣聖ソードセイントは、忍者と同じ東方オリエンタル風クラスの一つで、一撃必殺の高火力クラスだ。防御力も高く、純粋なアタッカーとして評価されている。

 カコはそんな剣聖を極めたと言っていいほど熟知したプレイヤーで、一撃必殺を活かせるPvPイベントでは常に一位のスコアを取っていた。

 まあ、この世界でどういう戦い方をするのかまでは分からない。ゲームと現実は違う、いろいろな技が使えるとはいえ、魔法の使えない剣聖がどこまで有効なのか、俺にも判断ができない部分がある。

 今はおいておこう。


「それで、元の世界にどうやって帰るんだ?」

「なんでもブルーオブアナザーカラー事件が起きた後、その隕石が元の世界をつなぐゲートになるそうです」

「よくそんなこと分かったな、証拠があるのか?」

「さあ」

「おい!?」

「い、いやだって、俺たち大学生だし難しいことよく分からないから」


これが転移者か。たしかに、彼は成長する過程をすっとばしてレベルカンストの能力を与えられただけ。精神的には現代人のままか。


「我がことながら、ミナトは特別なんだな」


 現代人の癖に、戦争を引き起こしてその間に暗殺するなんてこと、躊躇なく実行できるあいつの精神状態が心配になる。社会不適合者じゃないだろうか。


「帰る方法が確定した以上、大半の転移者はそっちについたのか」

「それがそうでもないんです」

「何?」

「ブルーオブアナザーカラー事件のあと、ジェイク派はさらに分派しました」

「意外だな、どういう派閥なんだ?」

「かつてミナトの仲間だったケントって女がリーダーになって、ブルーオブアナザーカラー事件で被災した人々の救済を進めるべきだって主張したんです」

「ケント……重戦士ケントか」


 ケントもミナトの仲間だった1人だ。そして原作小説でもジェイクの親友として、準レギュラー的な扱いで登場している。なんでもケントは小説を書いている作家の人とリアルで知り合いだそうだが、それについては詳しいことは教えてくれなかった。まあ俺も無理に聞こうとはしなかったしね。


「まあそういうことで、ジェイク派はちょっと人手不足で、俺たちみたいな下っ端でもこうしてダンフォース様を襲撃するくらい」

「説得力あるな」

「でしょう?」


 そういって忍者たちはヘラヘラ笑っている。同じ忍者でもキシンはもうちょっとしっかりしてたと思うんだけどなぁ。


「三派それぞれの目的と現状はわかるか?」

「俺たちジェイク派は、元の世界に帰るゲートを作ること、そしてそれを妨害に来るダンフォース様の排除することが目的です。ミナト派は行方不明、そもそも何を調べていたのかも俺たちにはわかりません。ケント派は生き残った聖騎士たちを集め、救済軍を設立し、各地の援助に回っています」

「なるほど……」


 しかし、これは良い情報が手に入ったものだ。いくら人手が足りないからといって、猫の手を重要な仕事に駆り出すもんじゃないな。


「あ、そうだ、最後に」

「なんです?」

「なんで俺がこの街に来たってわかったんだ?」


 別にお忍びの旅というわけではないのだが、それでも電話もメールもないこの世界、海を隔てたレオン帝国からエーリュシュオンまで、どうやって俺が旅立ったことを知ったのだろう?


「ああ、それはジェイクから教えてもらったんですよ」

「ジェイクが? どういうことだ」

「今ジェイクは、青い隕石と融合して、異色の災禍をある程度コントロールできるようになっているんです。白鯨と戦ったことで、ダンフォース様の船を知覚できたそうです」


 本来はヒーローであるべきジェイクが何をしようとしているのか。これだけ情報が手に入ったというのに、俺には何もわからない。

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