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迷宮と掲示板 改稿版  作者: Bさん
1章 石の迷宮
3/88

3話

「さて、行くか。って、このPCはどうやって電源を落とすんだ? いや、そもそも電気ってどこから来ているのだろう?」


 PCの本体を見ても電源コードらしき物はなかった。内部電源なのだろうか。

 恐らくそういうのを気にしても仕方ないのだろう。答えてくれる人が居る訳でもないし。

 PC本体の電源ボタンを押すとすぐに終了した。起動もそうだったが準備動作が一切ないらしい。


 重い腰を上げてPCの近くにあった巨大な扉の前に移動する。

 来た時から、何か威圧感を放っているこの扉が迷宮へ続く扉なのだろう。

 俺たちの戦いはこれからだ、と終わりになる訳もない。行くしかないのだ。


 武器で戦う経験なんて今まであるはずもない。

 現代の日本で生活をしていたら当然といえば当然だ。

 俺はビクビクしながら扉を開ける。

 俺の心情とは関係なく扉はあっさり開き、埃臭い臭いが辺りを充満させた。

 よし、と気合を入れて先に続く階段を降りていく。

 階段は結構長く、3分ほどだろうか。

 全て降りきった所で周囲を見渡す。明かりはしっかりとしているらしい。蛍光灯ほどではないが、それなりに周囲を明るく照らしている。


 周囲の構造は先程の部屋と同様、石で積み上げられた迷宮のようだ。

 積み上げられたと言っても、ちゃんと四角く切られている為、人工物と明らかに解かる造りだ。

 正面は通路になっており、光が奥まで続いていたのでかなり奥の方まで見える。

 念の為、腰に佩いていた剣を鞘から抜刀し通路を歩いていく。

 すると、すぐにT字路にぶつかる。恐る恐る左右を見渡すと何か蠢いているモノが見つかる。


 左側の通路を見ると白い何かが見えた。あれは骨だろうか。

 確か、先行した人の情報では(スケルトン)が居ると言っていた。恐らくあれがそうなのだろう。

 そのまま先手必勝! と行きたい所だったが、足が竦んで中々1歩が踏み出せない。

 そうしていると、骨がこちらに気が付いたのかゆっくりと歩いてきた。

 

 俺は気合を入れると覚悟を決める。

 盾を正面に構えてこちらからもゆっくりと骨の方へ歩いていく。

 お互いに剣の攻撃範囲に入ると骨はゆっくりと腕を持ち上げそのまま振り下ろしてくる。

 俺はそれを盾にぶつけて受け流す。

 初めてでも盾術の効果があるのだろうか。簡単に受け流す事が出来た。


 隙が出来た骨に向かって俺は剣を振り下ろす。

 その剣は骨の頭部へと当たり、相手は体勢を崩した。

 これはチャンスだ。俺はそう思い、追い討ちをかける。 

 返す刀で骨の脇腹を殴る。銅製の剣は斬るというより鈍器に近い。

 その勢いが強かったのか、骨は少し奥まで吹き飛んだ。倒したのかどうかは解からない。

 しばらく警戒していると骨が粒子になって消滅した。どうやら倒せたようだ。


「ふぃーー」


 思わず息が漏れる。たった2回斬っただけである。

 それでも初めての戦闘はかなり疲れた。

 恐らく緊張をしていたからだろう。初めて命のやり取りをしたからだと思いたい。

 毎回こうでは探索どころではないだろう。

 しかし、スキルは凄いと思う。ゆっくりとはいえ、剣を盾で受け流し、それなりに重量のある剣で2回連続で斬る真似が出来た。

 昨日まで体を鍛える訳でもなく、剣を1度も握った事の無い俺が出来る動作ではない。

 そんな事を考えていると、骨が粒子になった所に箱が現れていた。

 どこにこんな箱を隠していたのだろうか。


 完全に質量保存の法則を無視している箱に近寄った。

 確か、敵を倒すとアイテムをドロップするんだっけか。

 そこでスキルリストを見た時に罠解除スキルというモノがあった事を思い出す。

 箱には罠がかかっている可能性とかあるのだろうか。

 とは言え、罠解除のスキルなんて取ってはいない。

 だが、宝箱という存在は、開けたいという誘惑を発している。

 最初だし、そんな酷い罠は無いだろう。そう思い俺は箱をゆっくり開けていく。

 ある意味これがフラグの様な気がしなくも無い、そんな事を思いながら俺は箱を開けきった。


 宝箱はギギギギィと鈍い音を発しながら開く。何も起こらない。

 どうやら罠はなかったようだ。

 箱の中を覗き込むと中には1本の剣が入っていた。

 これが戦利品なのだろうか。


 どんな剣なのかは見ただけではさっぱり解からない。

 確か、PCの所に鑑定という項目があった気がする。

 恐らくそれで効果を確認するのだろう。


 効果が解からず、使用できない剣を持ち歩いても邪魔だ。

 アイテムボックスみたいな便利な物はないのだろうか? そう思った瞬間に正面の空間が割れ、空洞が現れた。

 ここに入れろという事なのだろうか。保管を出来るならとても便利だ。

 この先、装備品が増えていけば必須になるだろう。

 ためしに剣を入れてみるが、空間は閉じない。

 もしかしたらともう1度アイテムボックスと念じる。すると、空間が閉じていく。

 何ともゲームらしい設定である。


「さて、この調子でどんどん戦っていくか。慣れないとどうしようもないからな」


 わざと声に出してそんな事を言う。

 これは自分を鼓舞する為だ。周囲には誰もいない。




 周囲を探索し、骨を狩り続ける。1対1であれば問題なく倒せるようだ。

 先ほどの様な緊張ももうなくなっている。

 確か掲示板では(コボルト)がいると書いてあった気がするが、今のところは遭遇していない。

 二足歩行の犬との事で、骨と違い生物である。

 余り戦いたいとは思わないが、出たらどうしようもない。


 そう思っていると、遠くに犬を見かける。

 どうやらフラグだったらしい。

 確か、斬ると一杯血が出るんだっけか……。

 生物なのだから当然だろう。

 嫌だな、と思いながら通過儀礼と諦め犬の方へと歩いていく。

 何体か骨を倒して俺も少しは自信が持てたようだ。


 犬はこちらに気が付き叫びをあげながら走ってくる。やばい、こわい。

 無言で戦っていた骨とは違い、こちらは生物である。

 戦うときに当然声をあげるだろう。

 そんな当たり前の事を忘れ、俺は気迫で負けていた。

 だが、そこは頼りになるスキル補正だ。

 コボルトの剣を軽々と盾で受け流し、反撃の隙を容易に作り出す。

 後は斬りつける覚悟だけだ。


「ハッ!」


 俺は声に出しながら剣を上から振り下ろす。

 銅製の剣は切れ味が悪く、頭に当たった時にドゴッという音を立てる。

 コボルトがそのまま痛みで蹲る。

 俺はそのチャンスを逃さないと腕を後方に下げてコボルトの首に剣を突き立てた。

 刺さった部分からは血が飛び散り、俺の体を血で染める。

 コボルトは苦悶の表情でこちらを睨み、そして数秒後に粒子となって消滅した。


 だが、何故だろうか。生物を殺した、という罪悪感が一切ない。

 凄く冷静だ。血が飛び散り、自分にかかるなんて恐怖を感じそうなのに何故か何とも思わない。

 慣れなのだろうか、それとも得体の知れない何かが働いているのだろうか。

 確かに、探索をする上で一々そんな事で立ち止まっていたら攻略が進まないだろう。


 まぁ、良いか。良い方に捉えよう。

 俺はすぐに考える事を止める。基本的に楽天家なのである。

 宝箱を開け戦利品を回収すると犬の討伐も視野に入れ入り口周辺で狩り続ける。

 だって、複数相手は怖いもの。




 ピロリン


 スケルトンとコボルトを狩り続けていると何度かそんな音が鳴っていた。一体何だろうか。

 その度に周囲を見渡すが、特に何も起こらない。


「そろそろ少し先に進んでみようかな」


 同じ敵を狩り続けるというルーチンワークに飽きていた。

 なので、先に進んでみようと思った。思ってしまった。

 しばらく立ち塞がるスケルトンとコボルトを狩り続けていると、その時がやってきた。

 複数の敵との遭遇である。曲がり角の辺りを見ると骨が3体固まって居た。


 ゆっくりと動く骨だ。3体いてもどうにかなると思い先手を打つ。

 すぐさま1体を倒し、俺の接近に気が付いた骨の攻撃を盾で受け流す。

 もう1体の攻撃は体を捻る事でかわし、盾で受け流した2体目を攻撃しようとした矢先に背中が熱くなった。


「――ッ!!」


 背中を斬られた。その事実を確認するのが怖く痛みに耐えながら、別のスケルトンを斬り、体当たりを仕掛ける。

 押された2体目の骨は体勢を崩したので、そのまま少し離れて横に蹴り飛ばす。

 そのまま体を反転させて後ろを見る。そこには更に3体の骨が居た。合計5体である。

 曲がり角の奥に居たのだろうか。


 調子に乗って突っ込んで確認を怠ったせいだ。

 1階とは言えここは迷宮だ。一瞬の油断が命取りになる。

 だが、相手は骨だ。動きが遅い。5体とはいえ囲まれなければ倒せない事は無い。

 俺は自分にそう言い聞かせると先程蹴った骨に向かって強襲をかける。

 その骨の消滅を見届けるとそのすぐ近くに居る骨に攻撃を仕掛ける。

 防御の事は考えない。とにかく一刻も早く数を減らす事が重要なのだ。

 これ以上もたもたして数が増えても困る。

 走りながら立ち止まらずに確実に一撃一撃を撃ち込む。

 そうしている内に周囲には敵が1体も居なくなっていた。


「ハァハァ……終わったのか……?」


 息が切れる。全力で走りながらの戦闘だ。

 今までの1対1での戦闘より遥かに体力を消耗する。

 息を整え、近くに出ていた宝箱を開ける。罠が無くて良かった。


「ふぅ……さすがに疲れたし帰るか」


 マップをメニューから開いて確認をすると、どうやらかなり遠くまで進んでいたようだ。

 マップの半分近くが埋まっていた。

 2階が近いかもしれないが、マップを見る限りショートカットと思える場所がある訳でもない。

 無理して次の階を探しても最初からやり直しだろう。

 俺は急ぎ足で敵をしっかりと確認しながら拠点へと帰って行った。




「やっと着いた……疲れたぁぁぁぁぁ」


 思わず叫ぶ。初めての探索が終了し、無事帰還できた。

 背中に傷は負ったもののそこまで酷い傷では無さそうだ。

 多少ジンジン痛みがある程度である。

 剣で斬られたというよりは殴られた感覚に近いのだろう。

 切れ味が良い装備でなくて良かった。

 俺は勢い良くベッドへダイブする。


「げふっ」


 簡易ベッド(木製の箱の上に布が1枚かけられている程度)である事を忘れていた。

 さすがは初期のベッドである。トイレ代わりの壷並の悪意しか感じない。

 だが、背中の傷や、最後に無理をした時に出来た小さな傷を治すためには、この硬いベッドで寝なければならない。

 ある意味それも苦痛だが、どうしようもない。

 うつ伏せの上に硬いベッドだったので、寝苦しかったが慣れない事をした為かすぐに睡魔はやってきた。


「ふぁぁぁぁぁぁ、良く寝た。そして体が痛い」


 目が覚め欠伸をする。硬いベッドで寝たせいか体の節々が痛む。

 石床よりはマシかという程度のベッドである。

 背中を触ってみると昨日の傷は消えていた。

 服だけ破けた感じなので、どうにも格好は付かない。


「さてと、飯でも食うか」


 無限箱からパンと肉を出す。硬い方のパンは放置だ。

 肉に塩で下味を付けると窯へ入れる。

 箱の肉は何故か皿まで付いているという謎の仕様だ。

 肉を焼いている間はパンを食べる。

 ジャムやマーガリンなどといった付けるものがある訳ではない。

 なので塩を軽く振る程度だ。

 しばらくすると肉の焼ける匂いが漂い始める。

 少し熱い思いをしながらも肉を取り出し食べる。


「本当に最低限の食事だな……」


 現代の日本人からしてみたらかなり辛い食事だろう。


「でも、最初にDPを使い果たした人はこれすら食えないんだよな……」


 さらに悪い食事の人たちを思い浮かべ、これでもマシな方だと自分を納得させる。

 食事を終えると次は戦利品の確認だ。

 思っていたよりも多くの敵を倒したので数だけはそこそこ多い。

 アイテムボックスには容量とかないのだろうか。

 アイテムボックスと念じてそこから戦利品を全て取り出した。

 その品物はこんな感じだった。


・銅のロングソードX12

・鉄のロングソードX3

・銅のスピアX3

・銅のロッドX2


・皮の鎧X3

・皮の靴X3


・回復薬X5


「毒薬がなくて良かったわ……」


 回復薬の仕様がどんなものなのかは解からない。

 少なくとも飲めば傷だか病気だかが治るのだろう。

 毒薬では使い道が無い上に間違えて飲んだら大惨事である。

 いらない装備は鑑定台の上に置いたままにして売買からDPに変換できるようだ。

 この迷宮では装備の劣化がないため、鉄のロングソードと予備の銅のロングソード、そして皮の鎧と靴を1つずつ、回復薬は全て売らずに残して他は全て売却する。


「DPは全部で500ちょっとか……」


 思ったより貯まらないのか、1日でこれだけ貯まって良かったのかは解からない。

 だが、これだけポイントがあれば何かを増やせそうだ。

 とりあえずそれらは後回しにし、装備を着用する。

 銅のロングソードはアイテムボックスへと仕舞い、皮の鎧は布の服の上に着用する。

 全身鎧という訳ではないので、服の上に着用しなければ露出狂である。

 さすがに俺はそこまで至っては居ない。

 念の為、自分のステータスがどの程度上がったか確認をしてみる。


名前:スズキ ケイゴ

性別:男

種族:人間LV5

職業:プレイヤー

種族適正

なし


職スキル

経験値全体化、テイム、マッピング


スキル

剣術LV3、盾術LV3、軽業LV3


装備

武器:鉄のロングソード

盾 :木のバックラー

頭 :なし

胴 :皮の鎧

足 :皮の靴

装飾:なし


 思ったよりレベルが上がっていた。

 スキルはレベルよりも上がりにくいのか少し低い。

 最初と最後の動きが大分変わっていたのはこのレベルやスキルのお陰だったのだろうか。


「現状の把握は出来たとして、500ポイントかー何に使うかな」


 ベッドをもう少しマシな物に変えたいし、食事も充実させたい。

 だが、また複数の相手との戦闘になった時に、あの調子ではきつい。

 次にアレをやって勝てるという保証はどこにもない。

 戦利品を見る限り、1体ずつ倒している時よりも複数を相手にした時の方が良い物が手に入った気がする。

 少なくとも回復薬は最後の戦いでのドロップである。薬品自体そこでしか手に入っていない。何か対応策とかあるかも知れない。

 そう思い、スレッド一覧を見るとテイムの仕方というスレがあった。


「ん? テイムって使い魔を作れるんだっけか? 仲間が増えればそれだけ多くの敵と戦えるって事なのかね」


 俺は独り言を呟くとテイムスレを開いてみた。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



【ハーレム】テイムの仕方【逆ハーレム】


1 名前:名無しさん

このスレはテイムを覚えてハーレムを作ろうという目的を持ったスレです。

テイムの仕方


1.牢屋を作る

2.拘束アイテムを買う

3.目的の敵に会って弱らせる

4.拘束アイテムを投げつける

5.成功したら牢屋まで戻って牢屋に放り込む

6.牢屋に手足が縛られた被害者が現れる

7.心を折るか説得して使い魔にする


以上だ

使い魔にすると何でも言う事を聞いてくれる。

説得したのと心を折るのではその後の対応は変わるがな


2 名前:名無しさん

方法を書いたのはGJだが、ハーレムは別に作らんでも・・・


3 名前:名無しさん

え?


4 名前:名無しさん

え?


5 名前:名無しさん

え?


6 名前:名無しさん

あー何でもないです


7 名前:名無しさん

ハーレムはロマンだよな


8 名前:名無しさん

まだ1階層の突破者はいないみたいだし、現在使い魔に出来るリスト

スケルトン:動きは遅いけど簡単に服従する。食事をしなくてもいい

コボルト:骨よりマシだけど服従させるのが骨より面倒

ウィスプ:本能しかないから服従は簡単。魔法タイプ

妖精フェアリー:弱らせて無理やりの方が楽。ただし無口になる。魔法タイプ


9 名前:名無しさん

妖精たんを弱らせて服従させるとかwwwwww

・・・ゴクリ


10 名前:名無しさん

・・・おい


探してくるわ


11 名前:名無しさん

へんたいどもめー


12 名前:名無しさん

基本的に弱らせて無理やりだと感情が消えるな

説得だと良く喋るぞ


13 名前:名無しさん

ふーむ、悩むな

元気な妖精も捨てがたい


14 名前:名無しさん

テイムに上限はないんだっけか


15 名前:名無しさん

上限はないけど、食事もさせないと駄目だし

回復の為にベッドも用意しないと駄目だから

最初は骨とかお勧めかな


16 名前:名無しさん

骨か・・・俺、骨萌えとかないんだよね


17 名前:名無しさん

何だよ、骨萌えって・・・

ある方が珍しいよ



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「仲間を増やすのも良さそうだな」


 いや、決してハーレムは関係ありませんよ? 本当ですよ?

 と誰も居ないのに言い訳をする。

 戦闘での補助もあるが、話し相手が欲しいというのもある。


「よし、テイムに向けて調整をするか」


 必要なのは牢屋と拘束アイテムだったはずだ。

 牢屋は1室200ポイントで拘束アイテムは50ポイントだ。

 牢屋と拘束アイテムを失敗した時の為に2つ買う。


*牢屋が設置されました。この変態め*


「ちょ……」


 変態でもいいじゃない。




「さてと、骨を捕まえに行くか」


 念の為、銅のロングソードも持っていく。

 もしかしたらダメージ調整などで必要になるかも知れない。

 今回はそこまで戦闘をするつもりはない。あくまで捕獲が優先だ。

 死に戻りをして折角捕獲したアイテムを失っても面倒だ。


 2回目となる探索になると少しは慣れたのか、俺は意気揚々と進んでいった。

 階段を降りきり、敵を探す。さすがに階段の周辺には居ないらしく、少し歩く事になった。

 そして骨が見つかる。まずは鉄製の剣での試し斬りだ。

 どの程度の威力があるか解からないと、相手の体力をどれだけ削れば良いのか解からない。

 周囲に他に敵が居ない事を確認すると骨に向かって走って距離を詰める。

 その勢いのまま横に薙ぐと骨が一瞬で粒子になった。


「即死かよ!!」


 思わず叫んでしまった。ままならないものである。

 一撃で倒してしまっては意味が無いので、装備を銅に替える。

 昨日の最後の時点では2撃だったので、一回斬って後は殴るなり蹴るなりで削れば良いだろう。

 そう考えながら探索を続ける。


「居た……」


 正面の奥の方に骨が居る。周囲に敵の影がない事を確認すると走って近寄る。

 先程と同様に走った勢いのまま剣で横薙ぎにする。だが、骨がその剣を盾で防いだ。


「えっ?」


 思わず声が出る。今までスケルトンに盾で攻撃を防がれるなんてされた事がない。

 それが大きな隙になってしまったのか、相手の剣がこちらに迫ってくる。

 俺はそれを辛うじて盾で受け流すと距離を取り離れた。


「何だ……こいつ」


 今までのスケルトンとは明らかに違う動きだ。

 今までのスケルトンは全て鈍重な動きだった。

 なのに、こいつは先程の盾で防いだ時も剣で攻撃してきた時もかなりの早さだった。

 スケルトンだと思って油断は出来ない。

 俺はそう思い剣の柄を強く握る。


 一気に距離を詰めて攻撃を仕掛ける。

 盾で防いでくるが、こちらは皮の鎧があるお陰か胴の部分には相手の刃が通らないらしい。

 それを利用し、顔や足以外を守らずにぶつけていく。

 そうして攻撃をしている内にスケルトンの動きが弱くなってくる。

 どうやらダメージの蓄積がかなり行っているようだ。

 俺はチャンスとばかりにアイテムボックスから拘束アイテムを取り出す。


「って、丸いボールとか!!」


 思わず叫んでしまった。良いのかね。

 いつまでも形状に文句を言っても仕方ない。

 骨に向かって投げると、ボールは勝手に開き骨をその中に閉じ込めた。

 あっさり捕獲が完了して拍子抜けだが、楽な方が良いに決まっている。

 俺はそれをアイテムボックスの中に仕舞う。


「失っても面倒だし、早いけど帰るか」


 あの強さのスケルトンはそういないと思うが、また遭遇したらかなり面倒だ。

 俺は武器を鉄に戻し、抜刀したまま拠点へと帰還した。


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