005
帰宅した。そう、雨天に苛まれながらである。
その後の話をしよう。簡潔に、簡単に。まぁ、本当に簡潔に述べれば一言で済むだろうが、敢えてそれを放棄し、ほんの僅かに文字数を盛ろうかと思う。何、そこまでの変化はない。たった数行で終了する。
俺は5時間目を終了した後、そのまま6時間目、特別授業である7時間目を完遂した。そして、下校時間となったのである。
下校時間時、その時はそんなに空から降りしだく雨量はそこまでなく、いわば小雨、小さな雨である。その中を走って、まぁ大半は電車通学というかモノレール通学なので走る時間はそこまで多くはないのだが、それを取り敢えず行使した。
おっと、数行なんて宣言しときながらのこの文字量。まぁ、この程度の事なのでそれからは勿論、割愛させてもらう。
俺の部屋、つまりは家。そこは、当たり前なのだが閑散としていた。まぁ、どうということもない、俺は一人でここに住んでいるのだから。勿論の一言で片付くだろう、この程度ならば。
『国立風霜学園』、そこはその広大な土地を保持しているところから『風霜学園市』、つまりは都市学園という括りを、分類を付与されている。
都市学園、と聞いてまず何が思い浮かぶだろうか。想像力、イマジネーションが豊かな方々ならば自ずと想像することが出来るだろう。
だが、ここで敢えて説明を挿入したいと思う。
『国立風霜学園』、前にも説明を披露したかと思うがここは『アブノーマル』、『アナザーアブノーマル』といった、普通ではない、異常な、異端な者達が通うことの出来る学園である。まず、国の機関でなければどの学校も上記二種類の異端者達を教育、成長させることすら無理難題、というかそれ以前に拒否するだろう。まぁ、俺達の社会的地位というか社会的立場というか、取り敢えず社会的にはそんな区分なのである。しょうがないのはしょうがないのだけども。
本来、『アナザーアブノーマル』に限りなのだが、様々な国の管理という名目での制限を付けられるのだが、それにより『アナザーアブノーマル』は行動範囲を僅かに制限される。
その『アナザーアブノーマル』の異能力にもよるのだが、とある『アナザーアブノーマル』はスケートリンク等の気温を低く保たなくてはならない場所はお控えさせられたり、またある『アナザーアブノーマル』は逆に気温を高く保たなくならないサウナ等の所はこれまたお控えさせられる。実際のところ、そのような行動範囲の制限は行わずとも異能力さえ行使しなければ周囲に対する影響は全くもって皆無なのだが、どうも一般の方々は『アナザーアブノーマル』という存在じたい危険視しているようで、未だにこんな稚拙な制限を強要されている。
さて、説明をするための説明により僅かに本筋がずれたのだが、今から修正する。これくらいの前置きが必要だったのだ、そう自己完結させる。
結論を言えば、上記のような、つまりは行動範囲の制限というものはこの『風霜学園市』では一切執り行われていない。何処へ出没しようとも自由なのだ、と、これが本来のあるべき事なのだろうなのだが。
そして、これも『アナザーアブノーマル』に限りなのだが、衣食住に対しての心配が不必要という生命活動を行う上では嬉しくて堪らないことがある。
まぁ、それにはちょっとした制限というか対価というかそんなものが付くのだが。それはどうでもいいだろう、そこまで関係はない。
上記のような『アナザーアブノーマル』に対する特別的扱いはここ『風霜学園市』のおいてフルに発動する。そのため、殆どの若年層の『アナザーアブノーマル』はこの『風霜学園市』に在住し、学園生として日々の勉学に励んでいる、ということだ。
俺も、相良も、華御も、そしてその他のクラスメイト達も、全員がそうである。例外は、この『国立風霜学園』に属さないアダルト層か、『アナザーアブノーマル』の中でも”例外”に属する者達ぐらいである。説明は以上だ。
暗く、仄かに外からの明かりが差し込む程度の明暗度を、電気を点けることにより格段に上昇させる。少し明暗差のためか眼前が眩んだ。双眸が微かに痛い。
「…?」
ディスプレイラインの、着信。それは相良からのコーリング、つまりは電話だった。
「…なんだ」
『─あぁ、相良だけど! 忍だよね?』
「それ以外、誰が俺のディスプレイラインで電話をする?」
『まぁ、ごもっともだけどね』
「、で用事はなんだ」
『あぁ、そう用事! まぁ、ちょっとした噂話を聞いて、そして忍の見解を訊きたくてね』
「…あぁ、それでその噂話、とは?」
『うん、えっとね──』
この時に、何故俺が相良の噂話を聞いたのか。それは、これから悔やんで、後悔して。そんな体験をしたときにふと、浮かんだ疑問だ。
だけども、後悔は先に立たない。勿論、この時の俺はそんな言葉すら脳裏に過ぎってはいなかった。