002
目前にそびえる俺が通う学校、『国立風霜学園』。かざしも、と読むのだが最初の頃はかぜしもと読んでいた。今思えば、恥ずかしい限りである。
さて、ここで少しばかり説明をしておこう。説明、といっても簡単なこの社会の説明だ、解説だ。
突飛な質問なのだが、もし自分が自己プロフィールが情報化され、管理され、ランク付けされた場合、やはり嫌悪感を抱くだろうか。俺は、もう慣れたためかそうでもない。それが、この世界の摂理なのだと自己完結している。
そう、この言い回しを聞けばわかるかと思うが、この世界はその様に構成されている。させられたのだ。
情報化社会、その言い方は良くいったもので、実際としてあまりにも不条理であり、残酷的だ。…まぁ、でも単に俺だけがそう感じているだけで、もしかしたらそこまでないのかもしれない。世間体としては、という事である。
さて、そんな情報化社会では、人というものは短絡的に分けて三種類となる。全て、その自己プロフィールに基づいて分別されたものだ。
まず、『ノーマル』。つまりは、凡人。平均的な思考回路に運動神経、そして酷く一般的な人々である。全てが規定値そのままという訳だ。
規定値、つまりは個人に付けられた自己プロフィールでの学力、運動力、その他諸々の数値を平均的に国によって定められた値。それと大差なければ基本的には『ノーマル』へと分類される。
次に、『アブノーマル』。まぁ、簡単に言えば先程説明した規定値を大幅に超えた者達の事である。
世界的に有名な科学者やスポーツ選手、一般的に天才と呼称される彼ら彼女らはこちらへと分類される。まぁ、ひねた見方をする者からすれば単なる異端者、変人という事になるだろう。事実、少し人格が破綻している者も多い。
最後に、そしてこれが一番この説明においては大切なのだが、『アナザーアブノーマル』と呼称される者達がいる。彼ら彼女らが一番の異端者だ。
先程の『アブノーマル』が規定値越えを成し得た者達なら、『アナザーアブノーマル』は規定値越えをした上で、異能的な能力に目覚めた者達の事になる。つまりは、生粋の異端者、異能力者なのだ。
例えば、とある『アナザーアブノーマル』は自らの感じた事をそのまま他者へと伝達したり、またとある『アナザーアブノーマル』は空気中の気圧を変化させたりと、本来の人々であれば出来ない、出来るはずもない事、能力を備えている。
何が転じて、この『アナザーアブノーマル』になるのかはわからないが、先天性のものらしい。突飛的に、この世に生を受けたときから覚醒する、異能力。そのため、最初の頃から何となく無意識下で活用しているそうだ。
そして、この『アナザーアブノーマル』に当てはまる者は全て自己プロフィールのとある欄、異能力者『アナザーアブノーマル』へのチェックが入る。それにより、国からの保護管理がされる。貴重人種として、だ。
俺は、このうちのどれに当てはまるか。それを開示すれば、まぁ『アナザーアブノーマル』となる。さらりと吐露しているのだが、実際はこんな感覚で他の『アナザーアブノーマル』は自らを紹介しない。何故ならば、そのせいで、自分が『アナザーアブノーマル』のせいで、色々と特別に扱われているからだ。俺もその扱い方にはほとほと呆れる。
さて、目前のというかもう教室なのだが、この『国立風霜学園』もそんな国の機関だったりする。というか、国立という時点でそれを否めない。
この学校は、『ノーマル』、『アブノーマル』、『アナザーアブノーマル』全てが同じ所で勉学に励んでいる。クラスは違うのだけれど。
そんな訳で、俺はその『アナザーアブノーマル』のクラスである『AA-01』へと入室していたのであった。AAは説明しなくとも理解できるかと思うが『アナザーアブノーマル』の略である。01というのはクラス番号なのだが、生憎ここには一クラスしかないため02なんて存在はしていない。
窓際の最後尾、そこが俺の席である。他の席は時間的に早かったのか、未だがら空きである。つまり、俺と隣の席のこいつしかいない。
そして、俺もこいつもお互いに開口しようとはしていない。こいつは本日の授業の宿題に勤しんでいる。そして、俺はディスプレイラインを開きなんとなく電子書籍を読み始める。
ちなみに、こいつが俺の夢へと現れた彼女、はなみ ことは、『華御 琴羽』本人だ。