いじめやんといて 31
失礼します。
ああ、章吾か?
まあ、どうぞ。
紹介しとくわな、こちら藤堂さん。
はあ‥どうも。
はじめまして。藤堂です。
あっ、章吾です。
坂崎 章吾です。
あの〜〜、今日はどういう?
単刀直入に言おう。
君は、私の息子だ。
はあ!?
すまんが、園長あれを。
はい。
これは?
お前が園の前に、その‥捨てられていた乳母車の中にあった物だ。
寝間着と………
封筒?
開けて見ろ。
半紙………
命名 坂崎 章吾‥‥
間違いなく、私が書いたものだ。
えっ?それって、どういう……
お前の母親、古山紀子と私は共に東京のある劇団の研究生だった。
お互いに関西出身と いう事もあって、仲良くなり愛しあった。
その結果、紀子はお前を身籠り未婚のまま出産した。
それが、どうして?
ちょうどその頃、私に養子の話しが舞い込んだ。
アルバイト先の小さな貿易会社の専務の娘に気に入られてな。
正直、私は迷った。
そろそろ、役者としての自分の才能にも限界を感じていたしな。
それで?
私は、君の母親を捨てたんだ。
卑怯な男なんだ、私は。
目先の幸せに目が眩んで、紀子から逃げた。
紀子は私の後を追うこともせず、姿を消した。
くっ………
結婚した後、私も妻もさんざん病院にもかかったが
どういう訳か、子宝には恵まれず、昨年妻は亡くなった。
きっと、紀子を棄てたバチがあたったんだろうな。
じゃあ、今日はどうしてまた……
一人になって、紀子の事、自分が棄てた子供の事が思い出されて。
ワガママで勝手な事とは思ったが、探させてもらった。
紀子は随分昔に、亡くなっていたよ。
君をここに預けた年の暮れに………
………………
結婚してから、私は全てを忘れたくて必死に仕事をした。
そして、独立して今の会社を立ち上げた。
藤堂貿易、聞いたことはあるかい?
ああ、あのテレビのコマーシャルでよく見る‥
紀子と子供の事を忘れるには、ただがむしゃらに働くしかなかったんだ。
あ、坂崎って?
私の旧姓だ、養子だからな‥‥
章吾くん、聞けば君も役者志望らしいな。
はあ。
紀子と私の子だものな。
だが悪いことは言わん、役者なんてやめておきなさい。
ほんの一握りの才能に溢れた者しか、成功できない世界だ。
そんな………
今更、君の父親だと名乗る資格などないことは良くわかっている。
だけどもし、もし許してくれるなら、どうだろう私の元へ来ないか。
(俺は自分でも不思議なくらい冷静だった。
正直あまりにも突然の出来事に茫然自失していたのかもしれないが。)
申し訳ありませんが、お断りします。
やはり、な……
突然の事で戸惑う君の気持ちはよくわかる。
どうだろう、少し時間をおいて考えてみないか?
いえ、結果は同じだと思います。
私のしたことを、簡単に許してもらえるとは思っておらんが……
いや、許すとか許さないとか、そういう事ではなくて。
今更、あなたに父親だと名乗られても、俺はあなたの元へ行く気持ちにはなれません。
返事は今でなくてかまわん。
また、君の気が変わったらいつでも来て欲しい。
私はいつまでも、待つつもりだ。
他に、要件がなければ俺はこれで。
園長、失礼します。
あ、ああ‥‥
会いたい……
会いたい………
翔子さんに会いたい‥
翔子さんに………………




