22話 決戦の号砲
開戦から数日が経った。
ユリシアは反乱を画策する為に
数日間留守となっていた。
ユリシアの策
奴隷の反乱が成功するまでは
なんとか王都を守り切らなければならない。
魔王軍の猛攻は続き
前線は押しに押されていた。
オレは
空挺による機動防御を
するものの魔王軍の数と質には
戦線を押し返す程の効果はなかった。
メイビスの時の様に
本陣を奇襲しようにも
森を使い隠蔽されている本陣の
位置がそもそも分からなかった。
「ザムザ様の為に!!!!」
「王国万歳!!!!」
王国の兵達が
老いも若きも関係なく
その命を散らしていた。
事前に配置した土嚢や塹壕は
ある程度効力を発揮しているが
魔族の数の前では決定打ではない。
魔王軍はすでに
王都の寸前まで迫っていた。
ーーーーまだか、まだかセシリア!!!!!
ヒメジマは心の中で絶叫していた。
▼
魔王軍本陣医療部屋。
王国軍との戦いで傷ついた魔族たちに
対して魔王は慰問も行っていた。
魔族たちはケガをしているにも関らず
どこか誇らしい顔で満たされていた。
魔王の部下の1人が戦場の近況を
報告をしていた。
地下では魔王が報告を聞いて
静かにほほ笑んだ。
「よく、やってくれた!!
皆にあと一息だ!!!
頑張って欲しいと伝えてくれ。」
「はッ!!!!」
病室は一気に明るい雰囲気となる。
魔王はバレない様
小さくため息をついた。
この大軍を起こし王都に
攻め込んだこと自体
魔王にとってはかなりの
賭けであったからだ。
王国が残っていた場合は
いずれ魔族は人間の人口を前に
淘汰されることになるだろう。
その為の策であった反乱は阻止され
どうしたものかと思っていたが
その不安もあと少し終わる。
魔王軍は昼夜交代で攻め続けている上で
予備部隊をまだ残していた。
王都を攻め落とせば
捕虜になっている
マクシミリアも取り戻せるだろう。
よし!!!と魔王は内心で小さく
ガッツポーズをした。
だが、次の瞬間その喜びは崩れ去る事になる。
魔王の前に新しい伝令が現れる。
伝令は動揺し、息を切らしていた。
「どうした?おちつ……」
魔王が声をかけようとした時
伝令が声を張り上げる。
「急報!!!!!!
魔王領後方にて人間の奴隷が反乱!!!」
「それに呼応するように
魔王領自治区にてレムリア公爵が
蜂起!!!」
「何……?」
それは魔王が全く予期していない事であり
王国が初めて魔王の隙を突いた瞬間だった。
それまで穏やかに揺れていたランタンの光が
まるで鼓動を持つかのように震える。
「奴隷反乱……? バカな、そんな――」
エルナンデスは立ち上がり、椅子が石床を擦る甲高い音が響いた。
報告を持ち帰った魔族兵の肩が、見る間に強張った。
「詳報を申せ!」
「は、はいっ……! 後方補給地に潜伏していた人間奴隷が一斉蜂起、
監督官多数が殺害され……」
「さらにレムリア公爵領の一部貴族が呼応、軍勢を挙げて蜂起中とのこと!
いずれも鎮圧部隊が壊滅し、制圧の目途が――」
伝令は言葉を濁した。
その沈黙こそが、絶望を物語っていた。
魔王の眉間に刻まれる深い皺。
しかし、その瞳は燃えるように静かだ。
「……裏をかかれたか」
低く呟き、指先で顎をなぞる。
思考が一気に巡る。
奴隷蜂起と貴族の反乱が同時――偶然ではない。
王国に密偵を潜らせていたはず。
それでも兆候を掴めなかった。
(ユリシアか……)
あの冷徹な王妃の顔が脳裏を過ぎる。
自らの領土深奥にまで刃を差し込むほどの周到さ。
戦場の外で、確かに策が動いていた。
周囲の将たちは息を潜め、ただ魔王の言葉を待った。
一刻の猶予もない。
前線の勝利か、後方の崩壊か――。
エルナンデスはゆっくりと息を吸い込み、全軍に響く声で命じた。
「予備部隊を前線に投入する!!
全力をもって王国を叩き潰したのち
軍勢を反転させて反乱軍を撃つ。」
「はっ!」
「ジグムントに伝えろ!!!
補給線守護の任を解く!!
最前線に赴き王国への道を切り開けと!!!」
「フェリル!!!いるか!!!!」
「はっ!!」
魔王の陰から荘厳な漆黒の翼を持ち、
艶のある青白い肌。
妖艶な女性の吸血鬼が現れる。
魔王軍4天王の1人であるフェリルである。
「魔王領後方に赴き反乱を鎮圧せよ!!!
悪いが兵は貸してやれん!!!
現地にて招集し指揮をとれ!!!
出来るか!?」
「お任せください!!!」
「余にもしもの事があれば
次の魔王はお前だフェリル!!!
この場をもって正式に宣言しておく!!!」
フェリルは頭を下げ、僅かに口角を上げた。
「余も前線に出る!!!!
兵士達よ!!!!
余を死なせたくなくば奮起せよ!!!」
オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
歓声が煌めいた。
命令が飛ぶや、将兵たちは一斉に動き出した。
たとえ後手に回ろうとも
自分達の主は即座に道を指し示す。
それが魔族達の王なのだ。
その存在は神にも近いものだった。
(余が背負うもの、魔族の未来をこの一戦で決する)
(国王ザムザよ、お前が凌ぎ切ればお前の勝ち
攻め切れば余の勝ちだ!!!)
(決着をつけよう!!!!!)
それは魔王と国王の戦いが
最終局面に入った事を意味していた。
魔王の後方で一人
漆黒の翼を持つ
ヴァルキリーが
戦の炎を予感させるように妖しく笑った。
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