1話 倒錯した戦乙女とろくでもない宰相
(とにかく情報を集めないと
何が何やらわからないな。)
オレはそう思いながら
さっきのメイドさんが
おいていった服に着替える。
ちょうどでかい部屋に
鏡があったので
自分の姿を見てみる事にする。
短く整った金の短髪、碧眼、
うん、問題なくイケメンだ。
まあ少し背は低いが
それは成長期だし何とかなるだろ。
オレはご機嫌だった。
『もしもし、もしも~し』
何だ、何やら幻聴が聞こえる。
『幻聴じゃないよ~』
な、なんだ心を読まれたのか!
見ると鏡の中に鎧姿の美女が現れる。
『ど~も、ヴァルキリーのピノちゃんでぇ~す!
あなたの願いは叶えたよ!気に入ってくれたかな?』
まあ、確かに願ったけど。
「ヴァルキリーって、北欧神話の
勇敢に戦い死んだ戦士の魂を選び取るって、あの?」
『そうそう、姫島士長、22歳にしてはあの死に様、
良かったんじゃない?
ピノちゃん胸キュンしちゃいました!』
『わたし好きなんだぁ、戦いのなかで
必死にもがいて苦しんで精一杯生きても
報われない魂って、なんとかしてあげたいって
思っちゃう!』
そう言ってピノを名乗るヴァルキリーは
頬に手をあてて顔を赤らめているが
目は完全に虚空を向いている。
どうやらオレは知らない間に
やばい女をやばい形で魅了したらしい。
「つってもこれ、元の身体の持ち主がいるんだろう?
オレはいいから返してやれよ。」
「16歳くらいだろ?まだ子供だ。
どんな奴かは知らないが、可哀想だろうが。」
『やっさしい~♡
けどね、そういう理由なら
別に構わないと思うよ?』
「はぁ?」
『だって、この体の持ち主は
今の自分に絶望してたんだから』
「なんで?」
めちゃくちゃいいご身分だろうに。
『それはわかんない?
ピノちゃんは弱い男のことなんて興味ないし。』
『自分が消えてなくなりたいとは思っていた
みたいだけどね』
『だから、好きに使っていいよ?その体。
そんなクソ雑魚ナメクジのよわよわ男より
ピノちゃんは君の戦う姿が見たいのです♡』
この自称戦乙女とやらはかなりねじ曲がった
S気質のようだ。
『まあまあ、と言っても来たばかりなので
この世界の事は全く分からないだろうから
ピノちゃんが周りから見えない形でサポートするね!』
『とりあえず、玉座の間に行こうか!』
頭の中で現在地とマップが映し出される。
便利だ。
自室から玉座の間まで20分ほど
やたらでかい廊下をオレは移動している。
その間にピノを名乗る戦乙女からこの世界の事に
ついてレクチャーを受けている。
この国の名はマンネルハイム王国。
現在人口2500万を誇る
人類の最後の砦。
そして敵対しているのは
魔王軍だ。
魔王軍はマンネルハイム王国以外の
地域をほぼ全土掌握している。
オレの立場はこの国の国王らしいが
それは前国王が戦死したからで
権力中枢は宰相のワルイが握ってるんだとさ。
これからオレは玉座の間で
定例会議を開くって形らしい。
▼
「国王ザムザ・マンネルハイムおなり~」
仰々しくラッパが鳴り儀仗部隊が動作をする。
「ザムザ・国王陛下!!」
前に出てくる女性の騎士がいる。
精悍な顔つきでなかなかなメロンを
持っている。
赤毛の髪をなびかせながら
美しくまた威厳のある姿で歩いてくる。
よく見れば、その鎧は多くの傷がついており
くたびれ具合から使い込んでいる事が分かる。
やや年を食っているがいけるな。
『アンナ元帥は既婚者だよ。
この国の軍事のトップ』
そうか、既婚者か、残念だ。
「ザムザ国王陛下!
私から進言があります!」
「聞きましょう」
「我々、兵士を15万まで
増やして頂きたい!
それでしたら、領土奪還作戦を
決行できます。」
どうなの?ピノ?
『この国の人口、経済状況や
物資状況を考えても
問題のない数だよ、けど』
「お待ちを」
陰湿そうなデブの男が出てくる。
表面上はにこやかにしているが
底知れない意地の悪さの腐臭が
する男だ。
アイツは?
『ワルイ宰相。
人身売買や既得権益で金を稼ぎまくって
私腹を肥やしてるよ。
魔王軍とも通じてる』
分かりやすいねぇ…
オレは苦笑いをする。
「今だけの兵力でもギリギリの財政状況なのに
それだけ兵力を増やして
どうするおつもりですか?」
「国土の奪還は大切ですが
その為に国民を苦しめてはいけません」
もっともらしい事をいう。
嫌いなタイプだ。
人の為という言葉ほど
あてにならないものはない。
「財務大臣の意見は?」
「ワルイ宰相の言う通りです。
国民を苦しめてはいけません」
ああ、コイツもグルね。
「それに、アンナ元帥
なんだその恰好は
お付きの兵に関しても
「そうだが少しは気を使ったらどうだ」
「これは私達が前線帰りで
着替えの暇もなかったのだ」
よく見れば兵達の中には泥の付いたものもいる。
急ぎで間に合わなかったのだろう。
「「なんだ?同情でも誘いたいのか?」
「くっ……」
アンナは悔しそうに唇を噛みしめた。
『実際は会議の時間を設定したのは
ワルイだから、わかっててやってるんだよね。
軍事に権力持たれるとワルイは困るからね』
「くっだらねぇなあ」
オレは立ち上がり腰元に差してある
剣を手に取る。
こういった剣を使うのは初めてだが
まあ、何とかなるだろう。
オレ剣道有段者だし。
「えっ?はっあああ?」
近づいてくるオレに対して
異様な雰囲気にワルイが後ずさる。
「ワルイ、おめぇ、国の為に
泥だらけになって戦う人間の気持ちが
わかんねぇのか?」
「わかんねぇんだよなぁ!!!!!!」
怒りが沸々と湧いてくる。
前世で無能な政治家共の見栄や体裁で
どれだけの仲間が死んだのか
自分の既得権益を守りたいがために
どれだけの機会が失われたのか
それで戦っている人間がどれだけ
悔しい思いをするのか
「物じゃねぇえんだよ!!!!!
戦って死んでいく人間達は!!!!!」
「みんな家族があって
守りたい思いがあんだよ!!!!!」
いつの間にか涙が溢れていた。
伝播して、玉座の間には涙ぐむ兵士達もいた。
「なんの影響もない所で高見の見物しやがって!
分かったような顔で
滅茶苦茶いってんじゃねぇぞ!!!!!!!!」
「ひぃいいいい、ひい」
オレが絶対に逆らう事が無いと思っていたようで
ワルイはこの豹変ぶりに腰を抜かしているようだ。
「お前みたいなのが権力を握っていると
国を亡ぼす、死ねぇえええコラァァアァァァ!!!!!!」
オレは容赦なく剣でワルイの首を吹き飛ばす。
『ふふふふふ♡
流石、サイコー♥』
「で……殿下」
アンナもあまりの事に驚いているようだ。
「アンナ元帥」
「は、はい」
「兵力の増強、オレが必ず成し遂げる
少し待っていて欲しい」
「あ、ありがとうございます!」
アンナ元帥から笑みが零れる。
「それから、アンナ元帥、
他兵士の諸君」
「あなた方が命懸けで守っているから
この国が維持されているのだ。
オレはその事を誇りに思っている」
「あなた方もその事を誇りに思ってほしい」
「これからも期待している!!」
「国をよくするぞ!」
そういうとオレはニカッと笑う。
その言葉を聞いて
玉座の間が歓声で溢れ返る。
この出来事がオレの国王としての
第一歩だった。
読んでいただいてありがとうございます!
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