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18話 転生者の影

魔王軍の前衛を撃破した後、

オレは即座に部隊を撤収させ、補給線の分断を狙った。


物資集積場を破壊できれば、

本格的な衝突の前に戦を終わらせられる――

そう読んでいた。

補給線こそ、百万人を支える魔王軍の生命線だからだ。


―――しかし。


『ダメです! 痕跡がありません!』

『奴ら、足跡どころか残骸すら完全に消しています!』

『罠です! 待ち伏せが――ぐっ……!』


無線が悲鳴に変わった。

期待は、見事に裏切られる。


森を覆うほど緻密に張られた偽装。


空から見ても、何ひとつ手掛かりがない。

野営跡ですら、切り株に葉をかぶせ、

一夜にして自然へと溶け込ませている。


風の魔法を使い周囲を知覚するものの、

手掛かりすら掴めない。


――ここまで徹底するか。


しかも、要所ごとに待ち伏せ。

こちらの狙いを読んだ動きだ。


補給線を完全に隠すなんて真似、可能なのか?

それも大軍の?


訳がわからない!



胸の奥に、得体の知れない違和感が走る。


補給線への奇襲、

森林を利用した偽装工作、

制圧射撃――。


……これは。


額を伝う汗が冷たく感じる。

魔王軍、あるいはその参謀は――

現代戦術を熟知している。


しかも、どこか懐かしい、肌で知っている手並み。


「ピノ……魔王は、オレと同じ転生者か?」


『ふふふふ♡ さぁ、どうだろうねぇ』


軽くはぐらかす声。

――だが、それが答えだ。


ピノは、都合が悪ければ否定しない。


魔王は、オレと同じ知識を持つ“転生者”だ。


その時、無線が悲鳴に変わる。


『緊急! 緊急! 王都上空に大規模飛行魔族――接近中!』


背筋が凍る。

まさか――こちらの空挺戦術を逆手に取るつもりか。


「……わかった。全隊、即時帰還。王都防衛線へ!」



唇を噛む。

敵陣奥深くまで突っ込まなければ、王都は守れたかもしれない。



空挺部隊は本来、後方攪乱と空からの奇襲にこそ真価を発揮する。

それを熟知しているなら、魔王も同じ手を選ぶはずだ。


勝ったはずが、いつの間にか手のひらの上。

――メイビスの時と、何一つ変わらない。



オレは悔しさを押し殺し、風を切って南へ――

王都へと向かおうとした。


王都へ急ぎ戻ろうとしたその時、

森を包む空気が、唐突に――凍った。


耳鳴り。


湿った腐葉土の匂いが急に濃くなる。

さっき風で索敵したときは何もなかったはずだ。


ざり、と落葉がわずかに鳴った。


次の瞬間、そこに――角を頂く老人が立っていた。


荘厳な角を頭に生やし、黒地に金糸を散らした執事風の衣を纏う。

その所作は貴族のように優雅で、

ただ立つだけで森が後ずさりような威圧感を放つ。


いつの間にか、周囲を漆黒の影が取り囲んでいた。

先ほどまで何の気配もなかったはずなのに。


老人は微動だにせず、深い井戸の底から響くような声で言った。


「お初にお目にかかる。国王ザムザ殿――で、よろしいな」


「ワシの名はジグムント。

エルナンデス殿より、そなたを葬れと仰せつかっておる」


「魔族の希望に悲しみを抱かせた罪、万死をもって償えい!」



魔王四天王、筆頭。

皆殺しのジグムント――。


魔王の敵を葬り続けた魔王軍の最高戦力。

ユリシアが「出会ったら逃げろ」と告げた名だ。


対峙した瞬間、全身の直感が悲鳴を上げる。


逃げろ。

――――と


オレは即座に風を纏い、上空へ退避しようとする。

だが――。


す、と視界が揺れ、ジグムントが一歩踏み出しただけで距離が消える。

空間そのものを跳ぶかのように。


「逃がすわけなかろう!」


仲間が援護に魔法を放つ。

だが斬撃が閃くより早く、全ての光弾が霧散した。

刃は残像すら残さず、仲間たちが次々と鮮血を散らす。


濃厚な鉄の匂いが肺を刺す。

怒りがこみ上げる――が、恐怖がそれを圧倒する。


ジグムントは目前。

もはや間合いは一瞬。


オレは奥歯を噛み締め、魔力を一気に解き放った。


「これならどうだ!」


大気が唸り、竜巻が地を抉る。

自分ごとジグムントを巻き込み、天へと吹き上げた――。


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