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17話 終わりの国、始まりの戦

戒厳令下 ― 王都


王都に戒厳令が敷かれた。

人々は広場や路地で、不安を押し殺すように小声で語り合う。


それでも大きな混乱は起きなかった。

皆、国王ザムザを信じていたからだ。


魔王軍が北方から迫る。

到達まで、およそ五十日。

その間に――戦いのためのすべてを整えねばならない。


まずは兵力の確保。

アンナ元帥の進言どおり、戒厳令が出るや否や志願兵が雪崩のように集まった。


中には18くらいの年の若い男もたくさんいた。

正直彼らには死んでほしくはない、胸が痛む。



貴族から押収した武器をかき集め、倉庫を開き、鍛冶場は夜を徹して補充に追われる。

だが鍛冶の限界は見えていた。


ユリシアが言った通り、動員には限界がある。

それ以上集めても武器が足りない。



ユリシアは戦時における法を整備し

連日の様にビラを配り

演説を続けていた。

戦意高揚のためだ。


裏では魔王領に密偵を放ち

何か良からぬことを考えているようだ。


最近は顔で分かるようになった。



次に、空からの一撃。

「空を制する者が戦場を制す」

オレは空挺師団の創設を命じた。


国内から風魔法を得意とする者を募り、

かつて牢から救ったミリアが指揮を執る。

彼女は驚くほど有能だった。


僅か数日で五千名を編成、訓練計画を立て、

付け焼刃ながらも主力として動けるだけの戦力を整え始めた。


魔法による通信の簡略化にも成功する。

もとより貴族だけが扱っていた術式を

誰でも扱える“魔法無線”としてスクロールに落とし込んだのだ。



原理はぶっちゃけわからない。

だが離れた部隊同士が即座に連絡を取り合える――

それだけで戦場は変わる。


そこまで数は多くないが、魔法を使った

焼夷弾なども作ってくれた。


自分の権力をフル動員してくれたらしい。感謝。


防衛線の整備も進む。

王都の城壁には巨大バリスタが据えられ、

火薬の生産が乏しい国ながらも、ありったけの大砲が並べられていく。

もはや「火薬は使わぬ」という古い慣習に構っている暇はない。



後方に撤退した際の塹壕も、市民の協力を得て

掘り進めておく。


袋の中に掘った土を入れておき、

防塁として使用する。


どこまで効果はあるかわからないが、

無いよりはましだろう。


大軍である以上、地形の制約が多いのは

嫌がるはずだ。



また、戦えない者達のなかでは

医療に従事する者や

食事を作る者なども動員する事になった。



民兵も組織し、治安維持部隊も設立。

魔王軍に侵攻される際のマニュアルなども作り

避難訓練や地下施設など避難場所も用意した。



準備の日々は、張り詰めた空気のまま過ぎていった。

五十日――。


そして、ついにその時が訪れる。


北の地平線を黒く染める影。

地を覆い尽くすほどの軍旗。

轟く足音は、大地そのものを揺らしていた。


――その日、王都の空気は、初めて恐怖と誓いだけで満たされた。



軍勢。

軍勢。

軍勢。


魔王軍と王国軍――

互いに出せる限りの兵を集めた総力戦だ。

張り詰めた空気が、氷のように戦場を覆う。


角笛が鳴り響いた。

魔王軍が一斉に咆哮を上げ、黒い波となって前進を開始する。


だが――先に動いたのは、ザムザだった。


「目標! 敵魔法兵および投石機。

 破壊後は速やかに補給線を切断しろ!」


『ふふふふ♡ 今度は失敗しないといいね?』


脳裏に響くピノの声。

無視だ。今は戦場に集中する。


――この前とは違う。


メイビスの侵攻では、即席の部隊で迎え撃つしかなかった。


だが今回は、付け焼き刃とはいえ訓練を積んだ。

魔法無線も整備した。


やれることはすべてやった。

あとは結果を出すだけだ。


「空挺部隊、出撃!」


号令と同時に、風を切って舞い上がる。

焼夷弾が夜空を裂き、炎が魔王軍の陣へ降り注いだ。

巨躯のオークたちが、轟音とともに立ち止まった。


――よし、前衛が鈍った。


続いて後方を混乱させる。

投石機を破壊し、魔法兵を叩く。

連中の制圧射撃は厄介だ、ここで潰す。


『目標破壊完了!』


無線が次々と戦果を告げる。

王国側の砲撃魔法が、援護のように連なった。

前回では到底できなかった連携だ。


魔王軍は混乱している。

数が多すぎるせいか、反応が鈍る。

メイビス戦よりも、明らかに。


「深追いするな!

 前線に届く範囲の部隊と予備兵を叩いたら、ただちに撤収!」


『了解!』


王国軍の空挺は素早く離脱。

魔王軍の前衛は進撃の足を止められ、機能不全に陥っていた。


そして――本命。

輸送部隊を壊滅させるため、別働隊が影のように動き出す。


いける――!


胸の奥に確信が走った。

この前哨戦、完全にオレたちの勝利だ。




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