11話 背伸びのキス
オレの前には
ユリシアの手が差し出されている。
今は強みである軍隊からの支持ですら
危いかもしれない。
アンナ元帥の事もある。
政治基盤はとても危い状況だと
言えるだろう。
だったら、オレの選択は一つ。
オレはユリシアの手を取った。
「素晴らしい決断だ。
ワタシは貴様を誇りに思う。
決して後悔はさせん」
お互いに利害の一致で……か
甘い青春のような恋は
オレには向いてないのかも
知れない。
「おい」
オレは下を向く。
ーーーーーーんっ
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唇と唇が触れ合う。
背の小さいユリシアが
精一杯背伸びをして
いた。
「既成事実だ
バカモノ……」
心なしか
ユリシアは
少しだけ頬を赤く
染めているように
見えた。
なんだよ
傲慢不遜だと思ってたのに
案外かわいい所あるじゃ
ないか…
「帰るぞ……王宮に」
ユリシアはオレの手を
ぎゅっと握る。
「共に幸せな家庭を
築こうではないか」
「あ……ああ……」
オレはユリシアに手をひかれて
王宮への家路を辿る。
幸せな家庭……か
そうだ、オレはそんな当たり前の事を
何年も忘れていた。
生きてるときも戦争
死んでからも戦争で……
日が沈み、各家庭がご飯を作り始める。
各家庭の匂いだ。
皆、家庭があり。
そういった他人の大事な場所を
守りたくて。
必死で
戦って
戦って
戦って
いつの間にかオレ自身は
当たり前のものから
遠ざかっていた。
思い出させてくれた
ユリシアには感謝だな。
各家庭の匂いが
やけに染みた。
ごめんよ、ザムザ君…
君の童貞とオレの童貞は
多分今日……なくなる……
▼
――朝
オレは起きる。
ベッドの自分の横に温もりを
感じる。
ユリシアだ。
そうだ、オレは結婚を約束したのだった。
朝食を取っていると
ユリシアはオレに語りかけてくる。
「結婚式は1週間後だ。
ワタシに全て任せておけばよい。
準備してやる」
「国民に向けて大々的に行う。
これで貴様は民衆からの支持も
得る事が出来るだろう。
正当性が上がる」
「とにかく貴様は政治基盤が脆弱だ。
貴様の親兄弟、王妃も含め皆ワタシの父が
謀殺したからな」
「貴族の反乱の鎮圧の方はどうするんだ?
ユリシアの方で何か情報は掴んでいるのだろう?」
「掴んではいる。
だが、恐らく正攻法で摘発したところで
全ては出てこまい」
「この王都に一般人に紛れ込んでいる
反乱者もいるからな、
すべては見つけられない」
なるほど、テロみたいなものか
それじゃ、摘発は難しいだろうな。
「だからこその結婚式だ」
「待て、どうしてそうなる?」
オレは手のひらをバッと前に出し
ユリシアを制止する。
「あの貴族共は反乱の言い分として
何の咎もないワルイ・ヒレツ宰相を切った
暴虐の国王を止める為というのが
筋書きだ。」
「あぁあああ?
何言ってんだそいつら?」
「人というのは物語を信じるのだ。
金という紙切れが価値を持つように
物語を信じる者が多ければ
それは絶大な力を発揮する。」
「だったらその物語を逆に利用すればよい。
ワタシと貴様との結婚式はなんとしても
止めたいはずだ。なりふり構わずに」
確かにオレとユリシアとの結婚式が行われれば
それは、民衆にむけ正式に発表された事になる。
そうすれば貴族達の言い分を通すのはかなり
無理があるように映る。
「結婚式で怪しい動きをしたものを一網打尽にする。
事前に反乱を誘発し、魔王軍の侵攻と同時に
反乱を起こすという最悪のシナリオは崩れる。」
オレは思わずゴクリと唾を飲む。
「国王ザムザよ。
敵の弱点を
掴み
絞り
潰すのだ。」
「それで、大体の敵には勝てる」
とんでもなくえげつないなユリシア。
だが、頼りになる。
オレには持っていない思考だ。
『ふふふふふふ♡
ヒメジマちゃんよりこの娘の方が
王に向いているかもね?』
うるせぇなあ
まあ、一理ある。
こうしてオレは血塗られた婚礼計画に
向けて進んでいくのであった。
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