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第七章¦伝えたい思い

今日は参観日。生徒たちの親御さんが、彼らの授業の様子を見に来る日だ。

5時間目の参観日が始まる前の休み時間、生徒たちは廊下や教室の中で賑やかに過ごしていた。


「今日、お前の母さん来る?」

「今日来ないらしいよ」

「お母さん居た?」

「居た!あそこ!」

そんな声が、あちこちから聞こえてくる。


私たちも、自分の親を探している。

「あ! お母さん居たよ!」

菜月が嬉しそうに声を上げると、亜美がすぐに続いた。

「ほんとだ、私達のお母さん一緒に居るね」

「ね! 見つけやすい!」

私はそう言って、二人に相槌を打った。


「私、おばあちゃん来る予定なんだけど、全然見当たらない」

羽音はそう言いながら、きょろきょろと周りを見渡した。

「あ、お母さんみっけ」

対照的に、帆夏は柔らかい表情で視線を一点に留めている。

そんな中、私はすでにお母さんを見つけているはずなのに、まだ誰かを探し続けていた。


そう、私が探していたのは友一と、そのお母さんだった。

(友一のお母さんってどんな方なんだろ……)

興味があって二人を探しているうちに、授業開始のチャイムが鳴った。生徒たちは各々自分の席に座る。

(今日は参観日だから、あまり友一君のこと見ないでおこ)

私は周りの人に好意がバレるのが嫌で、常に慎重に行動していた。


チャイムが鳴り響いたが、先生はまだ教室に現れない。生徒たちは各自席に着き、思い思いに談笑して時間を潰していた。


そんな状況の中、莉玖が友一に声をかける。


「友一、お前の母さん、居る?」


「あー、居るよ?」友一は莉玖の目を見つめ、少し間の抜けたような調子で答えた。


「え、どこ?」莉玖はきょろきょろと周囲を見回すが、それらしい人物は見当たらない。


友一は面白そうに笑い、ある一点を指差した。「ほら、あそこ」


雨涙は、友一の隣の席なので、静かに本を読んで先生が来るのを待ちながらも、二人の会話をこっそりと盗み聞きしていた。


そうこうしているうちに、先生が教室に入ってきた。生徒たちは慌てて私語をやめ、姿勢を正す。


「よし、全員座ってるな。えー、ということで今日のこの時間は、道徳をします。教科書68ページをひらいてください」


先生が指示を出すと、生徒たちは一斉に行動に移り、机の上に置いてある教科書を手に取り、ページをめくり始めた。


「まずは、順番に教科書を読んでいってもらいます。その後に発表があるので、隣近所で班行動をしてもらいます………」


先生の説明が続き、授業は着々と進んでいった。


そして、道徳の授業が終わりのチャイムと共に区切りを迎え、参観日は無事に終了した。教室の外からは、保護者たちが立ち上がる気配が伝わってきた。


──その日の帰り道──


昇降口を出て、それぞれの帰路につくため、菜月が二人に向かって明るく声をかけた。


「雨涙、亜美、また明日ね」


菜月が手を振ると、雨涙と亜美もそれに応えて手を振り返す。


「またね」と雨涙。

「また明日」と亜美。


菜月が角を曲がり見えなくなってから、残った雨涙と亜美は、それぞれの母親を含めた四人で連れ立って帰宅した。


──家でのこと──


その日の夜は、特に変わった出来事もなく静かに過ぎていった。しかし、自室のベッドに横になった私の頭の中は、友一でいっぱいだった。


天井を見つめながら、ぼんやりと友一のことを考えていた。


(……友一のこと、ちゃんと好きってなったら、彼に告白しよ)


まだ「好き」という感情がはっきりしているわけではないが、その可能性に胸を躍らせながら、私は静かに眠りについた。

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