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第六章¦募る思い

「幸せな夢を見たな」


朝、目が覚めると夢のことを思い出していた。

友一の家に行き、勉強を教えて貰っている…という夢だ。


「リアルが良かったなあ…」


私はそう呟き、窓を開けると爽やかな風が吹いてきた。


「今日はいい日になりそう」


そう感じて、清々しい気持ちで学校に行く準備をした。

歯磨きをし、制服に着替え、朝食を食べる。


「今日の朝食は目玉焼きとベーコンだよ」


お母さんはそう言って、テーブルに朝食を置いてくれた。


「わあ、ありがとう!」


私は嬉しそうに黙々と朝食を食べた。

そして、支度を終えると、いつも亜美と待ち合わせをしている場所に行き彼女のことを待っていた。


「おはよう、雨涙今日早いね」


「おはよう亜美、早く着いちゃった」


「じゃあ行こうか」と亜美が言い、二人は学校に向かった。


学校に着き、教室へ向かうと、菜月が雨涙と亜美を見つけ、話しかけてきた。


「2人ともおはよう」と、菜月は笑顔で挨拶する。


「おはよう」と雨涙。


「おはよう〜」と亜美も続いた。


三人は挨拶を交わし、たわいもない会話を始める。


「そういえば、今日、教育実習生来るらしいよ」と、菜月が切り出した。


「え、そうなの?」と雨涙が聞き返す。


「そうらしいよ」


「どんな人来るんだろうね」亜美が期待を込めて言う。


「イケメン来ないかなあ」と菜月が笑うと、


「イケメン笑笑」と亜美が反応し、私も笑っていた。


そう三人で話しているうちに、チャイムが鳴る前の時間になったので、それぞれ自分の席に着くため、会話は一旦途切れた。


──キーンコーンカーンコーン──


始業のチャイムが鳴り響き、担任の先生がガラリと扉を開けて教室に入ってきた。


「皆さん、おはようございます。今日はですね、教育実習生の方が来てくれてますよ」


先生は教卓に立ちながら告げた。


「二時間目の体育の時間に合流するのでね、楽しみにしててくださいね」


先生のその一言に、教室中がざわつき始めた。


「え、がち?!」

「誰だろう?」

「楽しみ〜!」


生徒たちが口々に騒ぎ出す。


「はい、皆さん静かに!それでは1時間目を始めますよ!」

先生が手を叩いて注意を促す。


「日直の方、号令お願いします」


「起立、気をつけ、着席、お願いします……」


日直の号令で授業が始まった。


それから、一時間目の授業が終わり、休み時間になった。

「体育館行こう」と菜月が声をかけ、私たちはいつもの5人組(菜月、雨涙、亜美、羽音、帆夏)で連れ立って体育館へと向かった。


体育館へ移動しながら、五人組は今日の授業について話していた。


「今日の体育なんだろうね」と菜月が切り出す。


「選択授業とかかな?」と羽音が尋ねる。


「あー、それっぽいよね」と雨涙が言った。


そんな会話の中、亜美だけが急に黙り込み、何かを考え込んでいるようだった。


「………」


菜月が心配そうに「亜美?どうしたの、大丈夫?」と尋ねる。


亜美はハッとして顔を上げた。


「ん?あっ、いや考え事。ごめん、なんでもない」


しかし、その声色はいつもより元気がなく、少し浮かない表情をしていた。

その様子に、わずかに気まずい雰囲気が流れながらも、五人は体育館に到着した。


そして、体育の授業が始まり、体育教師と共に、新しい教育実習生が姿を見せた。

体育館に集合した生徒たちを前に、体育教師が元気よく声を張り上げた。


「はい!皆さん、今日は教育実習生が来てくれてまーす!南先生、自己紹介お願いします!」


体育教師に促され、隣に立っていた長身の女性が一歩前に出た。


「皆さん、初めまして。今日から1週間お世話になります、教育実習生の南です。気楽に南先生と呼んでください!」


南先生がはつらつと挨拶をすると、生徒たちは一斉にどよめき、体育館が沸き立った。


「うおー!綺麗な方だ!」

「え、可愛い先生だね!」

「後で恋バナ誘おっと」


生徒たちは皆、想像していたよりもずっと若く、魅力的な実習生の登場に興奮を隠せない様子だった。


南先生は生徒たちから大好評だった。


「はいっ!ということでね、南先生の自己紹介も終わったことですので、早速授業を始めていきましょう!」体育教師がパン、と手を叩く。

「今日は、選択授業でバスケか、バドミントンにわかれてもらいます!それぞれ……」


先生の説明が終わり、雨涙たちは相談する。5人ともバスケは得意ではないので、バドミントンを選択することにした。


移動中、私はなんだかそわそわしていた。

──そう、友一の姿を探しているのだ。

「雨涙、どうしたの?」菜月が不思議そうに尋ねる。

私は慌てた様子で「な、なんでもないよ!!」と誤魔化した。


(そういえば、朝も友一来てなかったよね……、休みかな……?)


私は胸のざわつきを抑えきれず、どこか元気が無い様子でバドミントンに励んでいた。

やがて体育の授業が終わり、3時間目が始まる1分前になった。


(友一……)


私はずっと、友一のことばかり考えていた。

先生が来て授業が始まろうとしたその時、教室の後ろ側の扉が開く音がした。

「ガラガラ……」

生徒たちの何人かが音に釣られて振り返る。

「すみません、遅れました!」

息を切らしながら教室に入ってきたのは、雨涙がずっと考えていた友一だった。


(良かった……、友一!)


雨涙は心の中でそう嬉しそうに呟き、先程までの不安げな様子はどこへやら、目を輝かせて元気を取り戻していた。


「お前、おせーよ笑笑」と友人にからかわれながら、友一は自分の席に着いた。


先生が友一に声をかける。「おっ、やっと来たかー、友一遅いぞー!『遅れます』の連絡から、もう1時間も経ってるじゃないか!」

友一は少しバツが悪そうに答える。

「すみません、道で困っているおばあちゃんを助けていたら遅くなりました!」


「たくっ、お前ってやつは……」


先生と友一のやり取りを聞いて、生徒たちはくすくすと笑っていた。先生は少し困りながらも、授業を始めた。

私は(なんて優しいの……、かっこいい!)と思いながらも気持ちを切り替え、国語の授業に取り組む。


「今日は1人ずつ、『奥の細道』という題材を使って発表をしてもらいます。内容は、筆者がどんな思いでこの物語を書いたのか想像をしながら答えてもらいます。なので、まずは制限時間10分与えますね」

そう言ってタイマーを設定した。


─10分後─


「はい、時間になったので廊下側の人から順番に発表してください」


先生がそう告げると、発表は着々と進み、とうとう私の番になった。

発表しようとした、その瞬間、教室の周りが急にざわつき始めた。


「ねね、これってやばいよね笑」

「それな、まじウケる笑」

「これって合ってる?」

「わからんって笑」


(えー、嘘でしょ……)


私は動揺して、分かりやすく困惑していた。発表するタイミングを見計らっていると……


「お前ら静かにしろよ!!」


隣の席から、怒鳴り声が聞こえてきた。友一が、騒がしい周りに注意してくれたのだ。

その瞬間、教室中が静まり返り、私は無事、発表を終えることができた。


(また助けてもらっちゃった……)


休み時間になると、私はさっきあった出来事を思い出していた。(嬉しかったなあ……)とぼんやりしていると、からかうような笑顔で菜月に話しかけられた。


「ねね、もしかして雨涙って友一のこと好きでしょ?w」


いきなりそんなことを言われたので私はびっくりして、「え?!、なんでわかったの!!!」と思わず少し大きな声を出してしまい、恥ずかしくなった。

菜月は楽しそうに笑う。「いや、わかるでしょ。てか分かりやすすぎ!いつも顔に出てるよ笑」


「え、いつから気づいてたの?」私は動揺しながら尋ねる。


「さあ?いつからでしょうね〜!」


菜月は雨涙をからかうのが楽しいようだ。


「てか、いつから?」菜月がもう一度聞く。

「それは……、言えないけどさ…」私は頬を赤らめてごにょごにょと答える。


「ふーん…wまあいいけどっ!」


そう二人が楽しそうに話していると、次の授業を告げるチャイムが鳴り響いた。


午後の授業が始まり、教室内は再び静けさに包まれる。私はノートにペンを走らせながらも、視線は時折、隣の席の友一へと向かっていた。友一は真剣な表情で先生の話を聞いている。その横顔を見るだけで、胸がきゅっとなるのを感じた。(本当に、いつから好きになったんだろう……)


休み時間に菜月と話した内容を思い出し、自分の気持ちがクラスメイトにバレバレだったことに改めて恥ずかしくなる。


授業が終わるチャイムが鳴り、帰りのHRが始まった。


「はい、今日の連絡事項は以上です。日直」


「起立、気をつけ、礼」


「ありがとうございましたー」


生徒たちが一斉に立ち上がり、鞄を持って帰り支度を始める。雨涙たち五人組も、玄関へ向かって歩き出した。


玄関に着き、各自が靴を履き替え、それぞれの家に帰っていった。

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