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第五章¦私のヒーロー

期末テストが終わった翌日。今日は班ごとに、クラスの中で発表会をすることになっていた。パソコンを使って発表するのだが、始まる前から少し厄介な予感がしていた。

担任の先生が教卓の前に立ち、抑揚のない声で話し始める。


「はい、ということで今日は以前からお話していた『地球はどうして自転するのか』という題材をテーマに、班ごとで発表会をしてもらいます」


生徒たちが一斉に反応する。


「うわー、緊張感半端ねー!」

「これで合ってるのかなあ」

「マジ、発表無理〜!」


教室内がざわつき始めたところで、先生が手を軽く叩いて注意を促す。


「はい、静かにー!今から皆さんにはパソコンを使ってもらいます」


先生は今日の発表方法について説明を続けた。


「パソコンの中にある機能を使ってもらうんですけど、その中に『付箋』という機能がありますよね?あれを貼って動かせるので、使ってください」


「でもひとつ、注意点があって、他の人が書いた付箋を勝手に動かさないようにしてくださいね。前にも一度トラブルがありましたから、そこは気をつけて」


そう釘を刺されて、生徒たちは皆、真剣な顔になる。


「では、発表の前の作業時間を20分程度設けますので、頑張ってください」


先生の合図で、クラスメイトたちは一斉に自分の班のパソコンへと向き直り、カチカチとキーボードを叩き始めた。これから始まる発表に向けて、教室は一気に緊張感と熱気に包まれた。


――20分経過。


「はい、ということで時間になったので1班から順番に発表してもらいます。1班どうぞ!」


先生の声で発表会が始まった。


1班の生徒がその場に立ち、緊張しながら話し始める。


「これから僕たちの発表を始めます。まずは、どうして地球は自転するのか……」


発表は順調に進んでいき、いよいよ私の班の番になった。


私は発表用のパソコン画面を見た瞬間、血の気が引いた。


なんと、先生が注意していた通り、私が担当して作成した付箋がめちゃくちゃに動かされていて、スライドは発表できる状態ではなかった。


(どうしよう……皆に笑われてる)


冷や汗が流れる。教室内からの笑い声が聞こえて、嫌な気持ちになり、恥ずかしさでその場から逃げ去りたくなった。


その時、隣の席の友一が、私にだけ聞こえるようにアシストしてくれた。


「雨涙、大丈夫?あとは俺に任せろ」


「ありがとう……」


私たちは周りに聞こえないくらいの小さな声でやりとりした。友一はすぐに状況を把握し、発表を進めながら手際よく付箋を修正してくれたおかげで、何とか発表を終えることができた。


発表が終わった後、席に座った友一が私の方を向かずに、真剣な眼差しでポツリと呟いた。


「なんでこんなことするんだよ……」


その言葉に、私は思わず胸がきゅんとした。(私のために怒ってくれたのかな?)そう考えたからだ。


友一のアシストのおかげで、私たちは何とか発表を終え、無事に授業が終わった。待ちかねた休み時間となり、教室内は騒がしくなったが、私の頭の中は静かだった。


さっきの授業であったことを、繰り返し思い出していた。


(……そういえば、発表が終わったあと、友一君が「なんでこんなことするんだよ……」って真剣な眼差しで呟いてたっけ)


あの時の彼の声と表情が、脳裏に焼き付いている。


(あれは、私のために怒ってくれたのかな?)そう考えたら、胸の奥が再びきゅんとした。


友一、かっこよかったなあ。すごく、嬉しかった。


私は頬杖をつきながら、ぼんやりと窓の外を眺めた。それからというもの、雨涙はこの日一日ずっと、友一のことばかり考えていた。


帰りの時間になり、生徒たちは下校していく。


「雨涙ー、帰ろー」


家が近い亜美と私は、いつも一緒に帰っている。今日も亜美に誘われ、一緒に下校することにした。生憎の雨模様だったので、今日は亜美のお母さんの車に乗せてもらい、一緒に帰宅することになった。


車がゆっくりと道を進む帰り道、ふと窓の外に友一の姿が目に入った。私は思わず彼に見とれていた。


(友一だ…)


友一は、誰かの忘れ物を届けに行こうとしているのか、雨の中を走っていた。


(雨なのに、友一走ってる。かっこいいなあ……)


そう見とれているうちに、あっという間に家に着いた。私は亜美のお母さんにお礼を言って車を降り、亜美と別れた。


家に着いてからも、私の頭の中は友一のことでいっぱいだった。


ベッドに横になり、私はそっと呟いた。


「また明日も、話せますように」


淡い期待を胸に、私は眠りについた。

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