第三章¦運命の席替え
なんだか今日は教室中がざわついている。
そう、席替えの日だからだ。
「はーい、席についてください。今日はですね、みなさんお待ちかねの席替えをしたいと思います」
「やったー!」
「隣の席なりたいね」
「あいつの隣にはなりたくねえ」
生徒たちがざわついていたので先生は軽く注意をした。
「はーい、静かに!いいですか?これから席替えをするんですけど、先生が皆さんの席を真剣に考えてきたので文句はなしですよ?」
先生がそう忠告すると、生徒たちはまた、ざわめき出した。
「えー、やだなあ」
「まじかー、こえー!」
「楽しみ」
「はい!ということでね、まずは皆さん目を瞑って机に顔を伏せてください」
緊張感が教室中に伝わっている…。
──5分後──
「はい、いいですよ皆さん、顔を上げてください」
「うわ…最悪」
「っしゃ!後ろの席ー!」
「ねー、席離れたー!」
生徒達の様々な声が飛び交う中で、私は密かに驚きながらも喜んでいた。
なぜなら、以前から隣の席になりたいと思っていた友一の隣になれたからだ。
(え、待って、友一だ。嬉しい…)
そう密かに喜んでいると、菜月が私の後ろの席に座って言った。
「あ、雨涙!一緒の班だね、嬉しい!」
「ん、ほんとだ!やったー!」
私と菜月は互いに喜びあっている一方、亜美と羽音も前後の席で、一緒の班になり喜んでいた。雨涙達と亜美達は班が違うものの、同じ列だったので、近い席だった。
帆夏だけが仲良し5人グループの中で唯一、席が離れていた。
ざわつきが止まらない、まるで動物園のような教室の中で先生が言った。
「はい、ということでね、新しい席も決まったことなので、これから皆さんには班ごとで係決めをしてもらいます」
「黒板に書かれている係の中からそれぞれの班でどの係をやりたいかを話し合って決めてください」
先生がそう話終わると、生徒たちはまたざわめき出した。
「はーい」
「えー、やだー」
「この班無理…」
「最高、この班」
机と机を向かい合わせた時、私はふと、どきっとした。なぜなら友一と向かい合っているからだ。
かっこいいなあと見つめていたら、目があった。
「あっ…」私は恥ずかしくなって、急いで目を逸らした。
私と菜月は5班になった。
6人ずつの各班で話し合っている。
「で、どうするー?」と友一が5班の皆に話しかける。
「んー、黒板係、1番楽そうじゃね?」
と同じ班の子が言うと
「だよなー、でも皆狙いそうだよな〜」
ともう一人の子が言った。
私と他の2人は、男子三人の会話に相槌を打っていた。
私たちの班は黒板係を狙っている。
─10分後─
それぞれの班で話し合いを終え、皆で話し合った結果、無事係決めが終わった。
全ての授業が終わり、帰りのホームルームの時間になった。
私は今だに心を浮き立たせていた。
(ほんとに隣に友一がいる…)
密かにときめいている間にホームルームが終わり、下校の時間になっていた。
「雨涙、帰ろう」
ぼんやりしていたら、突然右隣からとっくに準備が終わっていた亜美に話しかけられたので、私は急いで帰る準備をした。
「あ、うん!今行く!」
私は慌てて机の上に広げていた教科書やノートをバッグに詰め込み、立ち上がった。
「係決め、結局どうなったんだっけ?」と玄関まで歩く道のりの中、亜美が尋ねた。
「えーっと、私の班は希望通り黒板係になれたよ!」
「男子が、じゃんけんで他の班に勝ってくれたんだ」
「まじか!超ラッキーじゃん!うちらの班は結局、誰もやりたがらない連絡係になったよ最悪」と亜美は肩をすくめた。
二人でそんな会話をしながら靴箱で上履きを外履きに履き替え、玄関を出た。
校舎の裏手にある駐輪場へ向かう。夕日が校舎の窓ガラスをオレンジ色に染め、校庭にはまだ部活に励む生徒たちの声が響いていた。
駐輪場に着くと、私は自分の自転車の鍵を開けた。亜美も隣で手際よく準備を終える。二人は自転車を押して駐輪場を出た。
「それじゃ、行こっか」
「うん!」
二人とも同じ方向なので、並んで自転車を漕ぎ出した。帰り道も、私の心は浮き立っていた。友一の隣の席になれて物理的に距離が近くなったこと、それがきっかけで話せるようになる気がしたこと。明日から始まる新しい学校生活が、鮮やかに色づき始めていた。この席替えは、きっと私にとって忘れられない始まりになるだろう。
「これから楽しみだなあ」




