第二章¦気になるあの子
新しいクラスで過ごし、だいぶ慣れてきてから三ヶ月ほど経ったある日のこと。
私は、クラスに気になる男の子ができた。いつから意識し始めたのかは定かではないが、気づけば目で追うようになっていた。
英語の授業が始まり、各自が『英語で自己紹介をしましょう』という課題が出された。
順番に生徒たちが前に出て、自己紹介していく中で、ある一人の男の子を見た時、私の胸の奥には「何だこの子は」(気になる)という言葉では言い表せない感情が湧き上がった。
その子の名前は寺島 友一という。彼はクラスのいじられキャラで、よくダジャレを言っては教室を明るくしていた。
とはいえ、実際は滑っていることの方が多かったのだが、先生の的確なツッコミが入ることで、それが逆に「面白い」と私の中では受けていた。
私は、そんな彼の親しみやすさだったり、前向きで明るくて話しやすそうな雰囲気にだんだん惹かれていき、気づいたら、「彼の隣の席になってみたいな」と深く考えるようになっていた。
ぼんやりと休み時間を過ごしていると、偶然にも友一の笑い声が耳に入ってきた。いつものように友達に囲まれて楽しそうに話す様子を見て、私は「話してみたいな」という気持ちを募らせる。
「どうすれば彼と話せるんだろう……」
そんなことを考えているうちに休み時間が終わり、次の時間は体育館での開会式だ。明日は部活動の大会が控えており、そのための式典らしい。
運動部に所属し大会に出場する生徒たちは、それぞれの指定された場所でユニフォームや部活着に着替えるよう指示が出た。剣道部の友一もまた、着替えのために教室から出ていった。
ところが、友一は忘れ物をしたのか、袴に着替えた姿で教室に戻ってきた。私は、彼の凛々しい袴姿を見た瞬間、心を撃ち抜かれたような感覚に陥る。
近くにいた女子生徒が、気安く話しかけるのが聞こえた。
「友一、袴似合ってるね」
(なんで、あんなに普通に話しかけれるんだろう……)
そう疑問に思っていると、友一はその子に優しい声で「ありがとう」とだけ伝え、再び教室を去っていった。結局、私は話しかけるタイミングが見つからず、ただ見送ることしかできなかった。
それから1ヶ月が経っても未だに話せないでいた。




