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第十六章¦言わなきゃ良かった

私は今日、体調が悪かった。


「お母さん、具合悪い」


そう母に伝えると、「どうしたの、大丈夫? 薬を飲んで学校に行きなさい」という返事。具合が悪いにもかかわらず、休ませたくない母は、無理にでも学校に行かせようとしたのだ。


「え、うん……」


(具合、悪いのにな……)と思いながら、雨涙はテーブルの目玉焼きとご飯を見つめ、食べようとしたが、喉を通らなかった。それでも、薬を飲むために何か食べなければと思い、冷蔵庫にあったフルーツゼリーを一口食べた。


それから薬を飲み、支度を終えて「行ってきます……」と言い、家を出た。


学校に着き、教室に入ると、妙な噂が広がっていた。


「あ、雨瀬さん来たよw」

「ほんとだ、よく来れるよね」

「恥ずかしくないのかなw」


雨涙は具合の悪さを押さえつけ、頑張って学校に来たのにもかかわらず、周囲から心ない嫌がらせを受けた。


(え、どういうこと……)


私はこの状況がよく分からず、ドアの前で立ち尽くしていた。


すると、後ろに立っていた一人の男子生徒が言った。


「お前、昨日友一にチョコ渡してただろ」


「え……」


(なんでそれを……?)と困惑しながら私は考えた。


「俺、昨日その光景を見たんだよ。んで、面白そうだったからクラスLINEで広めておいた」


(いや、は……??? 広めておいた? 何それ。そんなの知らないし、てか、クラスLINEなんて招待されてないし……、てかなんで広めるん? その必要なくない???てか見られてたんだ……)


その事実に何も反抗できず、私は、ただその場で黙っていた。


一時間目が終わり、次は体育だ。休み時間になると私は先生に「具合が悪いので保健室に行ってきます」と伝え、急いで保健室に向かった。


コンコン、とドアを二回ノックし、「失礼します……、具合が悪くて来ました」


雨涙が保健室の先生にそう伝えると、「あら、雨涙さん、大丈夫? まずは体温を測りましょう」と優しく接してくれた。


その暖かさによって、雨涙はさっきまでの苦しさからほんの少しだけ開放されたような感じがした。


「それで、いつから具合悪かったの?」先生が心配そうに尋ねてきた。


「今日、朝起きてからずっとです……」


「あら、そんなに具合悪いなら休めばよかったのに……」


「母に言ったんですけど、どうしても休ませてくれなくて……」私は顔色を悪くしたままそう答えた。


「あら、大変ね……。どうする? 帰る? それともここで一時間休んで、次の時間から教室に戻る?」


私は今すぐにでも帰りたかった。しかし、受験も控えており、ここで帰ると内申点に響く。そのため、一旦休んで次の時間から参加することにした。


「えと……、休んでから戻ります……」少しためらいがちに、私はそう答えた。


「そう。一応顔色を見たいから、四時間目の休み時間にまた来てちょうだい」


「分かりました……」


それから先生に促されるように、私は保健室のベッドで休んでいた。


──キーンコーンカーンコーン──


授業終わりのチャイムが鳴り、雨涙は保健室の先生に「ありがとうございました」と一言お礼を言って、保健室を出た。


重たい足取りで教室に着くと、何人かが雨涙の方を見てこそこそ話をしていた。


「ねえ、ずる休みしてる」

「ほんとだ、ずるーい!」


雨涙はその様子に、その場からいなくなりたい気持ちになった。


それから三時間目が始まった。

家庭科の授業で、いつもは家庭科室で受けているのだが、今日は教室で受けることになった。


生徒たちは事前に先生から「班になっておくように」と言われていたため、皆、机を合わせた。


雨涙は(また友一と話せるかな)と淡い期待をこめていたが、その願いはもう叶わなかった。


授業が始まり、皆それぞれに雑談をしながら作業を進めている。

雨涙は向かいの席に座る友一を見た。

いつも目を合わせてくれるのに、昨日のことがあってから、もう雨涙と目を合わせてくれなくなった。

会話もあまりすることもなくなり、友一は、一緒の班の莉玖とだけ話し、もう前みたいに、みんなで会話することは無くなったのだ。


昨日の今日ということもあり、次の日になったらまた前のように話せるかなと思っていたけど、その期待も彼には届かず、もう二度と話すことが無くなった。

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