第十五章¦バレンタイン
――2月――
雨涙は、バレンタインデーに友一へ告白しようと決意した。手作りのチョコレートは「重いかな」と考え、市販のチョコレートを選んだ。それに手紙を添えて渡そうと、準備を進めた。
「告白するなら、やっぱり直接、自分の言葉で伝えたいな……」
そう心に決めて、私はバレンタイン当日を待った。
――バレンタイン当日――
朝から、男子生徒たちは皆、年に一度の大イベントに浮足立っていた。
「なあ、俺、誰かからチョコ貰えるかな?」
「貰えるとしても、義理チョコじゃね?」
何人かで集まって、淡い期待を胸に、口々に話している。
一方、雨涙は、放課後に友一へ渡そうと、その時間になるのをひたすら待っていた。
そして放課後になり、私はソワソワしながら、友一が一人になるタイミングを見計らっていた。
「ねね、友一」
一人教室に残っていた友一に、意を決して声をかけると、彼は私の方を見つめ、驚きながらこう言った。
「雨涙?どうした?帰らないの?」
私は深呼吸して、市販のチョコレートと、手紙が入っている袋を渡した。心臓が早鐘を打っている。
「あのさ、これ……渡したくて…」
友一は少し驚いた様子で「あ、ありがとう」と言って、私の手からそれを受け取ってくれた。
「ば、ばいばい!」
私は気恥ずかしくなって自分の気持ちを結局伝えられないまま、その場から早足で逃げ出した。
(結局、言えなかったな……)
その場で伝えたかったのに、自分の口から直接言えないまま、私は一人で玄関に向かい、下駄箱で靴を履き替えた。
(緊張した…)
それから、誰も居ない道を、呆然としながら進んで行く。
(次の日になったら彼の気持ち聞けるかな?)
そう淡い気持ちを胸に、家に着いた。
「お母さん、ただいま」
「あら、雨涙今日遅くない?どうしたの」
お母さんが心配しながら聞いてきたので、本当のことを言えず、私は誤魔化した。
「ちょっと道で迷ってる女の子見つけて、その子のこと助けてた」
「はあ?」お母さんは呆れながらも、「いいから早く宿題してご飯食べなさい」
とだけ伝え、リビングから去っていった。
それから雨涙は、今日の1日を終え、眠りについた。




