第十四章¦気まづい運命
体育祭が終わり、季節が移ろうとする中、今度は合唱コンクールの時期がやってきた。
練習初日の今日。課題曲の確認と、立ち位置、そして歌うパートを決めることになった。教室では、先生と学級委員長を中心に、生徒たちがその場で、話し合っている。
「どうする?」
「んー、とりあえず背の順にならんでください!」
委員長の声に、クラスメイトは素早く移動を始めた。雨涙も皆に倣って移動したが、すぐに気まずい空気に包まれる。
なんと、雨涙の隣は偶然にも亜美だったのだ。
その隣は菜月で、さらに気まずさは増した。神様のいたずらにも程がある。私はこの状況がどうしても信じられなかった。
いや、信じたくなかった。
――こうして、いよいよ気まずい合唱コンクールの練習が始まる。
生徒たちは先生の指示に従い、個人練習やパート練習へと移っていった。
私は複雑な思いを抱えながら周囲を見渡す。皆はもう、目の前のパート決めに意識を集中させていた。
「えーと、背の順で並んだついでに、このままソプラノ、アルト、テノールって分けていこうか」
「ソプラノやりたい人!」
先生が生徒たちに問いかけ、淡々と役割分担を進めていく。
私は高い音程を出す方が得意だったため、ソプラノパートを選んだ。同じパートには菜月と帆夏がいる。一方、亜美と羽音はアルトパートに着いた。
「よし、パートが決まったので、それぞれの場所で音取りを始めてください」
先生の指示に従い、生徒たちはパートごとに集まった。ソプラノパートのメンバーは、教室の隅に固まる。
──三十分後。
「ということで、これにて今日の練習は終わります」
先生の指示で練習が終わり、生徒たちはそれぞれの教室へと戻っていった。
(気まづかったなあ……)
教室に戻り席につくと、雨涙は、一点を見つめながら、ぼーっと思考を巡らせていた。これからこの気まずい状況とどう向き合っていけばいいのか、全然わからなかった。それでも、日々の合唱コンクールの練習には、真剣に取り組んでいた。
練習は、苦痛なことばかりではなかった。
雨涙のソプラノパートの立ち位置からは、アルトパートにいる友一の姿がよく見えたのだ。自然と彼の姿を探すようになり、練習中はいつも彼のことを見つめていた。
不思議なことに、友一と目が合うことが多かった。普通なら、目が合った瞬間に気まずくて視線を逸らすはずなのに、ある時、二人で見つめ合ったまま、長い時間が流れたことがあった。その瞬間、雨涙は心の内側で、抑えきれないほどのドキドキを感じていた。
ずっと、この時間が続けばいいのにな…。
雨涙は、このようなささやかな幸せを、心の片隅で願っていた。友一と視線を交わす、甘く、穏やかな時間。そして、班行動の時は笑って話せるような、幸せな時間。この両片思いのような、甘酸っぱく切ない展開は、ある日突然、永遠に消え去ったのだ。




