わたしがかんがえたとてもこうりつのいいれべりんぐのほうほう
昨日は私用で疲れて寝てしまいましたが、まだまだ爆速で更新していきます。
酷い編集ミスしてた申し訳
動物は基本的に火を嫌う。
これはモンスターであっても変わりなく、燃え盛る倒木が量産されたこの地獄絵図において、私につっかかってくるような生物は……
「君くらいなっもんだよ!」
『フゴオォォォォッ!!!』
肉弾。
槍の刃先のようなデカイ牙を持つイノシシが炎のバリケードをぶち抜いて、愚直な猪突で猛進中、Hey!
闘牛ショーのように躱して鉈でカウンターを合わせれば、腕が持ってかれる程の衝撃が鈍い音と共にやってくる。おぉう肩が外れそう。
イメージでは速度と合わせて両断するつもりだったのに、さっきから反応も反動も殴った時のそれなんだが。最早鈍器では?
「使用感は片手剣なんだけどね」
重心が何か変ではあるけど。
スタン中のすっ転んでるブタの近縁に、鈍器らしく鉈を頭蓋に叩き付けてキル。
確か家畜化されたイノシシがブタなんだっけ? 通りで屠殺待ちの豚みたいに見えるわけだ。
「蛾はもうちょい奥に出るんだっけ? 流石の私でも序盤のマップまでは詳しくないんよね」
"松明"を作成して蹴り倒す。かれこれ何十個目になるんだろうか? 湧き潰しも兼ねてる光源が猪に機能しないのは参ったなー。戦わなくても入る収入があるのに向こうから突撃してくるのは邪魔でしかない。
一応レベリングには来てるけど、目的地が決まってるんだから不意のエンカはシンプルに時間の無駄だ。頼むから一人で死んでろよ、私の手を煩わせるな。
『フゴォッ!』
「ふん」
先程ドロップした『槍猪の牙』を実体化、火を恐れない欠陥生物の眉間をすれ違いざまに刺し貫く。
まるで釘でも打つかのよう。それともシールを掌底で叩き付けたようとでも表現するか?
つかこれ効率いいな、鉈やナイフより切れ味あるし。残弾は殺せば増えるし実質タダだ。
「いっそ槍にでもするか、『合成』」
良さげな細長い枝を切り、キャラクリで取ったスキルで牙と合成。
MPの消費は15%程。実数値のキリが良くないから固定値消費ね、レベル上げないと連発はキツイの把握。
『猪牙の槍
要求ステータス:無し
斬撃11/刺突15/切れ味10/強度7/耐久値100%
取り回しは悪いが攻撃力はある』
「ほむ。悪くない」
蛮族が使ってそうな石器時代の産物みてぇだ。
柄がゴミだからか耐久性に難アリだけど、長柄なだけでおつりが来るな。壊れても別に幾らでも量産可能だし。
「『合成』スキル様々だなぁ、品質低下しようが接着剤要らずなのは実に助かる」
『合成』
MPを消費し、素材と素材を合成するスキル。
完成品は材料の状態とイメージに依存し、時短と間の素材が必要無いのが強みで、手作業でやるより品質が下がるのが欠点。
「鉈の三倍は強いし」
今更ながらに鉈とナイフの能力を確認するが、耐久値が無限な以外はゴミみてぇなステータスだ。数値にしてオール5! 小学校の成績表なら花丸ですね、私図画工作以外で5とか取ったことねぇや。
「丁度工作してるし、もしかしてここは小学校だった!?」
芸術活動でワクワクしてるしあながち間違ってない可能性がある。どこまでタイムリープキメてんの?
******
「おっ、あったあった」
アホなこと考えてたらとうとう目的地に到達。
この地帯の存在こそが、私が森に来た理由だった。
──餌場、と呼ばれる地帯がある。
大体どのフィールドにも存在するそれは、そのエリアに棲むモンスター達にとって共通の憩いの場だ。
普段は敵対してるモンスター同士であっても一時休戦するような、生態系において特異点となる場所。一度プレイヤーがそこで戦闘をおっぱじめようものなら、あらゆるモンスターから袋叩きにされる──正真正銘の危険地帯。
例えば今、私の目の前にある果実の成った樹木の群生地とかが、それだ。
「てなわけで放火」
『緊急クエスト『猿山の怒り』発生!』
『クリア条件:シレネの森からの撤退、若しくは一時間の生存』
『失敗条件:プレイヤーの死亡』
『分岐条件:一定数以上のモンスターの討伐』
『概要:餌場を荒らされたこの地の最大勢力が怒りに燃えています、彼らは命をかなぐり捨てて貴方に報復を行うでしょう。
無謀にもその怒りを受け止めるか、後悔と共に逃げ帰るかは貴方次第です』
「うわ、クエストとかいう文字列久々に聞いたわ」
頭の中に流れたシステムメッセージで若干テンションが上がりながら、手は止めずに放火を続行。
さながら昔馴染みに再会したかのような面持ちで、ふんふんふーんと鼻歌をかけながら、踊るように餌場をライターで火の海に変えていく。
樹木の燃える音がする。
焼かれていく果実の匂いがする。
それらは海に鳴っている。火の海に成っている。
命の螺旋が焦げ落ちて、炭として消費されている。
生命が、暴力によって浪費されていく。
『ウキキャアァァァッ!!!』
「あぁお出まし?」
怒り心頭と言った具合で横から突っ込んできた猿の腕を撥ねる。
返す刀で隻腕を腕無しに進化させてあげ、続けざまに両足を切断。達磨と化した鳴き袋の首根っこを後ろから掴んで持ち上げれば、不様な姿で何事かを叫び出す。
「ほーらほらほら、お仲間さんが必死に助けを求めてるよー? 死んじゃってもいいのかなー?」
餌が叫ぶ方へと向き直れば……そこは既に一面茶色の山だ。
地面を這う赤に怯えながらも、徒党を組んで私を睨み付けている猿、猿、猿、猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿猿──
「つかうるせぇ」
ぐしゃりと細い肉を感情のままに、潰す。ワオ短気。一応増援目的に作ったんだけど、これなら要らなかったかな? 鳴き袋。
ポリゴンとして刹那に消えていく盾に経験値にしてから気付いて、まぁいいかとそそくさとインベントリから槍を出すと同時──
「じゃ、戦争を始めよう」
──飛びかかってきた先鋒の首に、一突き。
煽り耐性低過ぎん? ポプテピピックの一場面並のGOの早さじゃんお前らさぁ。
横合いはライター毎握っている鉈で切り伏せ、そのままカチリと火を着ける。
火に炙られる刀身に燃える気配は無く、伝染した炎がチラチラと指を掠るが……それだけで。
斬り様に炎上した死にゆく命を、全力で後方へと蹴り飛ばす!
「もうちょい襲ってくるのに時間くれてもいいんじゃない? 戦闘開始までがシームレス過ぎて空気感に付いてけないよ、私」
わぁ、連鎖して後ろが燃えてるや。
悲鳴が上がる。
怒号が上がる。
暗闇に照らされた色彩は真っ茶色。360°全域が猿まみれで、所々にはライトがちらり。
まるでドームの中心にいるみたいだった。
さしずめ私の存在がスポットライトで、ペンライトは炎上する大木、長槍がスタンドマイクだろうか。
アイドルにでもなった気分だ。
観客は全て敵で、それが更に増え続けてるんだけど。
「いやぁ、大人気で困っちゃうなぁ?」
空白を埋めるように敵は来る。この場所に空白なんて存在しない。
握手会がしたいのかい? じゃあ君たちには死をプレゼントだ。気安く私に触れると思うなよ畜生風情。
斬り、突き、殴り、払い、燃やし、蹴る。
足を止めない。数という名の壁を前に止まりそうになる足を、モンスターの肉を蹴り潰して地面に到達させる。
ほら、止めなくていいんだよ。足場は無さそうに見えるだけだ。いつも通り踏み込めば抵抗があるだけでちゃんと地面に着くんだから。
掴みかかってくる悪知恵野郎は無視し、そのまま攻撃時の肉体可動だけで振り飛ばす。
躍動。
力任せにやりたいように、私を世界に振る舞え。
槍で突き、払い、薙ぎ、叩き、ぶん回し……
鉈で薙ぎ、弾き、殴り、刎ねる!
全方位から群がってくる拘束を、無慈悲にタックルでぶち抜いて。
肌に積み重なる生き物の感触を、手から離れない肉の手応えの残留を、知ったことかとゴリ押して。
手当り次第に斬り裂いて、最高効率で刺し殺して、経験値を量産する。
絶叫の坩堝にて、私は殺戮を振り撒いている!
「──狭いなァ」
戦況は劣勢。処理速が足りてない。
"物量に何れ押し潰されそうだな"と冷静に判断出来ている思考とは別に、ふと目に入った光景曰く──どうやら感情の方はそうでは無いらしい。
鈍い刃を炙る小さな揺らぎが光を生んで、刀身に反射した私の顔は……獰猛に笑っていた。
ああ、自慢のタレ目がつり上がってるじゃん。
可動域が狭いと言われた口角が三日月みたいに引き裂かれちゃってるじゃん。
「相も変わらず私は可愛い」
さ、レベリングだ。
こいつら皆殺しにしてレベルを上げよう。
サイコちゃん備考その1:恐怖心が壊れてる
その上で大抵自分ならどうにかなるやろで突貫するため、関わると非常に危険。
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